このステップですべきこと
開業を考えるにあたり、医師が最も気になることの1つが「どこで開業するか」というポイントです。一度決めた立地は簡単には変更できないので、その地に根付いて理想の医療を提供していけるかどうかを慎重に吟味しなければなりません。
開業地には、大きく分ければ「都心」と「郊外」、「駅前」と「住宅街」といった選択肢があります。まずはそれぞれのメリット・デメリットを見ていきましょう。
都心や駅前付近での開業は、アクセスなどの利便性が高く、人も多く集まります。しかし、競合クリニックが多いため、より明確な強みを打ち出さなければなりません。また、クリニックの運営費や人件費がかさみますので、利益率が低くなる傾向にあります。
一方で、郊外や住宅街での開業は、電車で通勤する場合のアクセスが悪い可能性や、情報収集や調剤薬局との連携が困難な可能性があります。その代わり、駅前に比べて競合が少なかったり、運営コストが安く抑えられたり、十分な駐車場を用意できたりとメリットもあります。
診療圏調査とは、開業候補地やそのエリアの現在の市場を、客観的に調査するものです。診療圏の半径は、たとえば一般的な内科なら半径500m、耳鼻科や皮膚科なら1,000mなどと定めますが、患者さんがどのようにしてクリニックを訪れるのか(徒歩、電車、バス、自家用車など)といった環境によって変動します。また、その円の中に河川や幹線道路、線路など、生活圏を左右する要素があれば、補正を加えながら調査範囲を設定します。
そして、各種公表データなどを用い、設定した診療圏内の1院あたりの推計患者数を割り出します。この数字が、その地域にクリニックを開院した場合、どれほどの患者さんが来院するのかの目安となります。
しかし、これはあくまで理論上の数字であり、それぞれのクリニックの強みなどは考慮されていません。また、競合クリニックの調査は、単に件数だけでは測れません。また、近隣の病院で充足している診療科、不足している診療科の調査も役立つ場合があります。
実際には、診療圏調査のほか、その地域の実際のクリニックの評判や患者層のチェックはもちろん、昼間人口と夜間人口の差、将来的に競合クリニックが増えそうか、土地開発の計画があるか、数年後の人口がどうなっていそうかなど、プロの目線で詳しく調査してもらうことが必要です。なお、最初からクリニックの誘致が前提である計画物件(医療モールなど)の場合はすでに調査が行われており、開業の検討がしやすい場合もあります。
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ここに注意
開業地の調査は、複数回、複数人で行うなど、周辺環境をより詳しく把握する必要があります。
総合メディカルでは、協力会社を交えて現地の視察を含めた調査を行います。それにより、開業希望地の推計患者数、競合医療機関、医療連携先、将来的な状況の変化予測、生活環境など、診療圏を多角的に分析した調査を実施しています。
開業の計画当初から伴走しているため、経営理念や診療方針、医師が望んでいる生活スタイル等を把握したコンサルタントが、その医師にとって最適な開業地をご提案いたします。
「よい立地で開業したい」と思われている医師は多いことでしょう。しかし、どんな立地が「よい」のかは、開業する医師の想いによってさまざまなのです。
たとえば、「内科の経験を活かして、家族みんなの健康を支える家庭医になりたい」と考える医師にとっては、家族に寄り添うことのできる住宅街での開業が適しているかもしれません。一方で、「忙しく働く人々が安心して通えるクリニックにしたい」という方針であれば、オフィスの多い都心部の駅前で、早朝や昼休みの時間帯、夜間に診療する体制を整えるべきでしょう。
また、単純に開業地のことばかりでなく、医師本人のライフスタイルに合わせた検討も必要です。子どもの教育や暮らし方のスタイルなど、家族ともよく話し合って決める必要があります。