開業までの流れ

STEP01/経営理念・診療方針の策定

このステップですべきこと

このステップですべきことのイメージ
  • 「開業してやりたいこと」「やらないこと」を明確にし、経営理念に落とし込む
  • 地域医療のなかで自院がめざすポジションを見据えて診療方針を見える化・経営理念と診療方針を開業の指針として開業準備に望む

「経営理念」「診療方針」は医院開業の羅針盤

開業を決意した医師が、まず取り組まねばならないことはなんでしょうか。
開業時期の決定?開業地探し?資金調達?
どれも非常に重要ですが、それらを決めるうえでも欠かせない大切な開業準備があります。
それは、「経営理念」と「診療方針」の策定です。

経営理念と診療方針は、いわば医院開業の羅針盤です。開業の目的、めざすべき方向性を示す重要な指針といえるでしょう。

「経営理念」「診療方針」は医院開業の羅針盤のイメージ

経営理念とは、「開業を志すに至った想い(動機・目的)」を表すものです。「なぜ医師になったのか」に始まり、「開業してどのような医療を提供するのか」「何ができる(できない)のか」を文面にして落とし込みます。
また診療方針とは、「地域医療のなかで自院がめざすポジション」を示すものです。「地域が求める医療」「院長(開業する医師)の専門性」「地域包括ケアシステム内での自院の役割」などを踏まえて、自院の役割や提供する医療・サービスを明確にします。
これらは、医師自身が開業するうえでの拠り所になるだけでなく、開業後は来院する患者さんの安心感やスタッフにとっての共通の目標となります。

まず「なぜ開業するのか」を考える

まず「なぜ開業するのか」を考えるのイメージ

経営理念と診療方針の策定で大切なのは、まず「開業して何がしたいのか」です。
たとえば「育ってきた地域に恩返しがしたい」のであれば、開業地が絞られます。その地域に家族連れが多いとすれば、「子どもからお父さん、お母さん、おじいちゃん、おばあちゃんまで幅広く診られる『家族みんなのかかりつけ医』」というクリニックの姿が見えてきます。また、高齢者の多い立地であれば、在宅医療を視野に入れた高齢者に寄り添うクリニックが考えられます。

「よい場所で開業したい」と望む医師は多いものですが、その医師にとっての「よい場所」はそれぞれです。
駅に近くて人通りの多い立地、競合クリニックが少ない立地、高齢者や子どもが多い住宅地など、開業に適していると思われる場所はいくつもありますが、そのなかでどのような立地での開業がよいかは、経営理念と診療方針によって異なります。
同様に、どのような物件がよいのか、どのくらいの資金をいつ調達しなければならないのか、いつ開業すればメリットが多いのかなど、開業までのあらゆる項目を考えるうえで、最初に明確な指針を持っていることが成功のカギなのです。

ここに注意
経営理念と診療方針が定まっていないと、開業にあたってさまざまなリスクが考えられます。
たとえば、勤務医時代は呼吸器疾患の専門医として活躍してきた医師が、地域で開業する際に「呼吸器内科専門クリニックにするのか」「呼吸器も含めて幅広く診る内科クリニックにするのか」の方針を定められず、中途半端なまま開業準備を進めてしまったらどうでしょうか。
診療方針があいまいなので、クリニック名には「呼吸器」の文言を入れず、しかしホームページには呼吸器内科の実績を大きく取り上げたために患者さんが混乱し、どちらの患者さんも来にくくなってしまって集患に苦労する――などという失敗が考えられるのです。

「やりたいこと」だけでなく「やらないこと」も重視して支援

「やりたいこと」だけでなく「やらないこと」も重視して支援のイメージ

「やりたい医療はあるけれど、それをどのように経営理念にすればよいかわからない」
「診療方針とは、具体的にはどのようなことを決めればよいのだろう」
初めて開業する医師にとって、自分が思い描くクリニックの形を明確に表するのはなかなか難しいでしょう。

総合メディカルでは、これまで全国で培ってきた豊富な開業支援実績を活かし、これまでの医師の経験や強み、めざしている医療の形、地域での位置づけといったクリニックの理想像から、家族環境や暮らし方といったプライベートの要望まで、的確なヒアリングを行いながら、経営理念や診療方針を策定する支援を行っています。
最初に経営理念と診療方針を策定することで、その医師にとってどのような開業スタイルが最適かを個々に判断し、一貫した方針に基づいて支援していくことができます。

また、経営理念と診療方針の策定の際には「やりたいこと」と同じく「やらないこと」も重視し、経験豊富なコンサルタントがアドバイスを行っています。
「家族で夕食を一緒にとりたい」から、「夜間診療はやらない」。
「子どもが小さいうちは十分に遊んであげたい」から「土日の診療はやらない」。
「地域に根差した医療を提供する総合医になりたい」から、「複雑な検査や処置はやらず、病院と連携する」。
こうした要望が叶うのは開業ならではです。「やりたいこと」「やらないこと」が、一つでも多く整理されていれば、決定事項が多岐にわたる開業準備中に、あれこれ悩むことが少なくなります。

もちろん、ここで策定した経営理念と診療方針は、その後の開業準備の中で、地域のニーズや医師の考え方の遷移によって変更していくこともあります。
魅力的な開業地と物件が見つかり、開業を検討した際に夜間診療のニーズがあることがわかれば、夜間診療を一切やらないのではなく、曜日を絞って行うといった柔軟な考え方も必要になるかもしれません。
こうした変更の際にも、最初に「やりたいこと」「やらないこと」をじっくり考えておくことで、譲歩できること、譲れないことの線引きがしやすくなります。

開業には非常に多くの準備が必要となるため、気が急いてしまうことも少なくありません。しかし、最初をおろそかにすると、せっかくの開業が思っていない方向に進んでしまうことにもなりかねませんから、開業を決めたら一度じっくりと時間を割き、自らの想いや強みに向き合ってみてください。