1. 特定非営利活動法人 Future Code ― 一人の医師の思いからすべては始まった。世界中に医療の未来を開く「鍵」を届けたい! ― ~後編~

社会貢献ジャーナル

特定非営利活動法人 Future Code ― 一人の医師の思いからすべては始まった。
世界中に医療の未来を開く「鍵」を届けたい! ― ~後編~

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医師としての無力感が奮い立たせた


ハイチの孤児院で検診を行う大類氏

ハイチでの歯科検診の様子

そもそも大類氏は「Future Code」を立ち上げる前から、AMDA(アムダ)という団体で災害医療に関わっていた。
そこでの経験から、社会開発に近い人材育成や保健衛生のシステムづくりをめざして、まずは任意団体としてハイチでの活動をスタートさせたという。

「ハイチのような被災地や貧困国でどうやったら医療が展開できるか考えたときに、語弊があるかもしれませんが医師としては無力感を抱いたのです。病院という環境や医療資材があれば医師として役に立てますが、それがなければただの人に過ぎないことを痛感させられました」

そうした悩みを抱えた大類氏は、海外医療支援のノウハウを学ぼうと英国のリーズ大学院に留学。途上国向けの公衆衛生マネージメントのコースに入って1年間学び、マスターの学位を取得した。その後、認定NPO法人となり、ブルキナファソでの活動を開始したのだ。

「Future Code」の日本における活動の拠点は神戸にある。兵庫医科大学出身の大類氏にとって、神戸がホームタウンだったということもあるが、それ以上に地域色を出したいという思いが胸中にあったという。

「NPOやNGOは市民活動から発展していくもの。地域の皆さんから支持されていくことを大切にしたかったのです。東京には多くの団体がありますが、神戸には『Future Code』という団体があり、神戸市民から応援してもらえるような存在でありたいと、あえて神戸に拠点を置いたのです。また、神戸は阪神淡路大震災で被災した地域であり、当時多くの支援を受けました。今もその恩返しをしたい、潜在的に何か支援をしたいという人は多いのです。そのような市民の力を集結して海外に発信し、国際色豊かな港町という地域色を生かして、神戸という街から国境を越えた支援をリードしていければと考えたのです」

常に持続可能な支援のあり方を追求


ブルキナファソにてトイレの建設中

「Future Code」の活動における特色は、持続可能性の追求にある。現地における医療人材の育成も、その地に医療が根付き、将来にわたって続いていく持続的なアプローチである。また、ブルキナファソでは現地の農業資源であるシアバターを購入し、企業とのタイアップで製造・販売を行う事業も展開している。現地の女性たちの収入向上や雇用の創出につながるほか、そこから得られる利益を活動資金として医療や支援に再投入するという持続可能な支援となっているのだ。

「もちろん寄付は大変ありがたいものですし、これからも大切にしていきたい。ただそれだけに頼っていては活動が継続できなくなることもあり得ます。そこでNPO設立当初から持続可能性については意識していました」と大類氏は強調する。

不可能を可能に変えた成功体験が活動の源泉


ハイチの孤児院の子どもたちとともに

こうした大類氏の活動のモチベーションはどこから来ているのだろうか。

「一言で言えば『楽しいから』に集約される。これまでに、国境や宗教を超えて、現地とともに共通の目標を実現できたことを楽しいと感じています。ハイチで無料の結核診療のプログラムを展開するときも、周りからは絶対に不可能と言われていたのですが、神戸市保健所や兵庫医科大学、自衛隊(PKO)の協力を受けながら実現できました。不可能なことを可能にするためにはどうすればいいかをロジカルに考え、遂行していったのです。このような成功体験が何物にも代え難いうれしさ、喜びとなり、それが活動の源泉になっています」

その一方で、医療従事者として人の命を救いたいという思いも当然ある。

「ただ、僕らの活動の根底には公衆衛生があります。1000万円かけて一人の命を助けるのではなく、1000万円あるのだったら、例えば下痢疾患で亡くなる子どもの死亡率をどう減らすかというアプローチをしています。活動の中では、この子を助けたいけど無理だと諦める決断をしないといけないときもあります。それでも活動を通じて病気で亡くなる子どもたちがいなくなる社会の実現の一助になれればよいですし、極論すれば僕らの活動が不要になる社会が訪れればと願っています」

さまざまな取り組みを通じて世界を変えていきたい


バングラデシュでは孤児院の巡回検診も行っている

「安全な飲料水を確保することは衛生面において非常に重要であることから、日本の技術力を生かして現地での水質改善にもっと取り組んでいきたい。そうなれば僕らの医療活動で100人を助けるというレベルではなく、何万人、何十万人の健康に寄与できる可能性もあります。あとはやはり人材育成。あと10年経てば、駐在員や現地スタッフが今の状態を維持できるかわからない。遠隔医療についても企業と連携して取り組んでいますが、それも最終的には現地に医療者がいてこそ成り立つもので、あくまで補助でしかありません」と、大類氏は今後の展望を述べる。

その一方で、「国連サミットで採択されたSDGs(持続可能な開発目標)も2030年までの目標であることから、個人としても2030年までというのをかなり意識しています。途上国では、マラリア、HIV、結核をはじめとした感染症の問題があります。その後、途上国でも慢性疾患が増加することになるでしょう。事実バングラデシュではすでにそうした状況が始まっており、途上国は二重のリスクを抱えることになります。そこで今のうちに感染症をなくしておくことが国際保健にとって重要なのです。僕らとしても感染症にフォーカスし続けていきます」と、力強く語ってくれた。

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