1. 特定非営利活動法人 Future Code ― 一人の医師の思いからすべては始まった。世界中に医療の未来を開く「鍵」を届けたい! ― ~前編~

社会貢献ジャーナル

特定非営利活動法人 Future Code ― 一人の医師の思いからすべては始まった。
世界中に医療の未来を開く「鍵」を届けたい! ― ~前編~

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現地の医療人材の育成や医療システムの構築をめざして


Future Codeの代表理事を務める医師の大類隼人氏

世界には、いまだ医療が届かず、衛生状態が劣悪な災害地域や貧困地域が多く存在する。「Future Code」は、そのような地域で現地の人々とともに、医療人材の育成や医療システムの構築をめざしている団体である。このNPOを設立した医師の大類隼人氏は、「『Future Code』という団体名は、“世界中の医療に未来への鍵を”という思いをこめて名付けたネーミング」だと語る。

また、団体ロゴにある地図は、現在の大陸が形成される前にあったとされた世界大陸「パンゲア」を示したもの。医療支援において国境はなく、世界は一つであるという活動のコンセプトを表している。 また、その下の鍵にとまる蝶は多くの国で復活の象徴とされており、その国の医療がサナギから蝶へと成長する手助けをするという団体の理念が込められているという。

ハイチで活動するシスターとの出会いが契機に


Future Codeロゴ

ハイチでは結核検診を中心に活動

現在、「Future Code」の海外における活動は、3つの国が拠点となっている。

その1つが、日本から遠くカリブ海に浮かぶハイチ共和国だ。2010年1月に起きたM7.0という大規模なハイチ地震が発生したことで死者30万人以上に及ぶ大惨事となり、破壊的な被害を受けた。もともとの貧困に加え、復興の遅れなどから衛生状態が悪く感染症のリスクがより高まった国である。

そのハイチで長年結核重症患者への支援を行っていたシスター須藤昭子医師(その後、Future Codeの顧問に就任)と出会った大類氏は、須藤医師の活動に共感。日本の自衛隊(PKO)の撤退に伴い、日本政府から寄贈されたレントゲン装置を使い、無料の結核検診プログラムをスタートさせたのだ。

「現在も年に1~2度、スクリーニングを行ったうえでハイリスクの患者に絞って検診を行い、病院と連携して治療に結びつけています」と大類氏。

同国では、このほか孤児院への食料支援や歯科検診を行っているという。これらの活動は、現地で日本人スタッフが中心となって実施されているが、結核検診の研修のために日本に招聘されトレーニングを受けたハイチの医師2名もプロジェクトに協力している。

バングラデシュでは看護師育成プログラムを実施

2つめの拠点は、2012年から活動を開始したバングラデシュである。「ここでは、UHC(Universal Health Coverage)の概念に近い活動を展開しています」と、大類氏は話す。UHCとは「すべての人が、適切な健康増進、予防、治療、機能回復に関するサービスを、支払い可能な費用で受けられる」ことを意味する。

具体的な活動内容は、看護師を養成するプロジェクトが中心だ。近年、首都ダッカの病院では、高度な医療器材が導入されてはいるものの、そこで働く看護師の技術と知識が追いついていない現状があるという。そこで「Future Code」では、現地のニーズに合った教育プログラムを作成。わかりやすい写真や動画を盛り込んだオリジナルの教材を用意し、座学だけにとどまらず、講義のあとには実習を行うという実践的なプログラムで成果を上げている。


バングラデシュでの看護師育成は、実技を指導する実践的な内容となっている

「現地の看護師のモチベーションは高く、参加者たちからは『参加してよかった』『こんな医療があるとは知らなかった』という声をよく聞きます。僕たちはコアメンバーに対してトレーニングをするのですが、そのトレーニングを受けた人たちが、今度は残りのメンバーを指導する立場に回るのです。そうやって現地の医療レベルのボトムアップをめざしているのです」

トレーニングを受けた看護師たちが中心となり、「フリーフライデークリニック」といった無料診療の日を設けて、妊婦さんなどを対象に無料診療を提供するといった活動も広がっている。また、孤児院での無料検診や診療、衛生教育なども提供しているという。

ブルキナファソにおける実効性のあるマラリア対策


ブルキナファソにて蚊帳の適切な設置の仕方をレクチャー

2016年からは西アフリカのブルキナファソでも活動をスタートさせた。この国は蚊が媒介するマラリアの流行地である。殺虫剤入りの蚊帳の普及によって発症数や死亡者数は減少傾向にあるものの、今なお、マラリアは5歳以下の乳児死亡原因の大部分を占めているという。

大類氏らは、首都から離れたサポネ市で活動を展開。マラリア対策のほか、安全な水と衛生改善に取り組んでいる。

「人口450人くらいの村に行ったのですが、8割以上の世帯がマラリア予防の蚊帳を所有していました。しかし実際に使用しているのは5割程度。なぜかというと、家の形は1戸1戸異なるため、蚊帳がうまく張れない家庭もあることがわかりました。そこで各家庭を訪問して蚊帳の張り方を指導していったのです。するとほとんどの家庭で使用されるようになりました」と、成果を話す。


ブルキナファソでは現地の人とともにマラリアの啓発活動も

このように、課題がどこにあるのか、どうすれば解決できるのかは、現場を訪れてみないことにはわからないことも多いという。

「文化が日本とは違うし、現地の文化と医療がぶつかることもあります。そこをうまく折り合いをつけて有効性のあるものにしていくかが問われるのです。たとえばバングラデシュで看護師さんのモチベーションを高めようと、新しい看護服を導入するとします。イスラム世界では頭を覆うヒジャブが必要だし、衛生面や動きやすさを考えて、どういうものが最適なのかを考える必要性がある。機能的だからということで日本の看護服を押しつけるわけにはいかないのです」と大類氏は指摘する。

月の半分程度はバングラデシュに滞在し、残りはブルキナファソやハイチを飛び回る大類氏。日本にいるのはほんのわずかだというぐらい、精力的に活動に取り組んでいる。

後編では、大類氏がNPO設立に至った経緯や持続可能性のための工夫、今後の展開についてご紹介する。

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