1. 特定非営利活動法人 国際緊急医療・衛生支援機構 ― 自衛隊中央病院で培った経験を生かし、国際災害医療に貢献! ― ~後編~

社会貢献ジャーナル

特定非営利活動法人 国際緊急医療・衛生支援機構
― 自衛隊中央病院で培った経験を生かし、国際災害医療に貢献! ― ~後編~

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最先端の研究成果を講演会で発信

啓蒙・普及活動の面では、例年5月に理事会・総会の開催に併せて講演会を開催するほか、1月もしくは2月に新春講演会を開催し、広く災害医療の研究成果、実践結果を発信している。


2018年の総会の様子

熱心に聞き入る参加者

過去の講演テーマを振り返ると、前編で紹介した「パシフィック・パートナーシップ」の活動報告のほか、「国際的に脅威となる感染症への備え」「ジカウイルス感染症について」など、渡航先でのリスクとなる感染症や海外における衛生知識といったテーマや、「東京オリンピックを踏まえたテロ対策」「最近の東アジア情勢と日本の危機管理」など、国内外における危機管理についてのテーマが中心となっている。
「それぞれの第一線で活躍されている講演者を招いて、最先端の研究内容についてお話しいただいています」と白濱氏は胸を張る。「災害医療や国際協力の現場では、微妙な問題を多く含んだテーマが多く存在します。メディアなどでは知りえない話題も多々あり、毎回とても有意義な会になります」

2018年1月に行われた新春講演会では、加來浩器氏による「国際的に脅威となる感染症の備え」、森良之氏(自治医科大学口腔外科教授)による「パシフィック・パートナーシップ2017(PP17ベトナム・ダナン)に参加して」、そして番匠幸一郎氏(元西部方面総監・陸将)による「最近の東アジア情勢と日本の危機管理」といったラインナップで講演を実施。さまざまな知見を持つ医師などからの質疑応答も活発に行われ、盛況となった。

常日頃から準備と訓練を怠らず防災を意識する

現在、白濱氏は認知症専門病院である蓮田よつば病院の病院長や和光病院顧問の役職のほか、千葉科学大学看護学部の非常勤講師という肩書きを持つ。防災についての最も大切なポイントについて、災害医療について指導する立場から「学生たちにも必ず言っていることですが、日本列島は4つのプレートに挟まれた地震国であるということ。活火山も多く、自然災害が常に発生するリスクがあります。そのような“火薬庫”のような国土に人間が後から家を建て、道を作って住むようになったのですから、地震災害は起きて当たり前という意識を持ち、常に訓練や準備を怠らないことが重要です」と話す。


実際のシチュエーションを想定して、本番さながらの避難訓練を行っている

「一番弱い立場である認知症の患者さんを助けることができたら、一般の人も助けられますよね」と白濱氏。実際、認知症専門病院である和光病院では防災訓練を年2回必ず実施しており、しかも毎回同じ内容にはしない。前回は夜間を想定した訓練を行った。「夜間は常駐するスタッフが3人しかいないなかで、どうやったら機能するのかを確認した訓練でした」と話す。病院でも防災マニュアルを整備し、他人事ではなく、常に準備と心構えをしておくことが重要だと白濱氏は指摘する。

災害医療における自衛隊の役割

自衛隊法には、国内の大規模災害時の派遣や国際緊急援助活動といった海外における国際貢献が明記されている。大規模災害時には、大量傷病者を受け入れ、災害医療の拠点となる自衛隊中央病院では、災害が発生したらすぐにヘリコプターで飛び立てるように、医師1名、看護師2名、管理要員1名のチームが常時待機しているという。

「これは災害が起きたら数時間内に駆けつけるための先発隊です。そのほかにも、医師1名、看護師2名、管理要員2名の計5名×5チームが、阪神・淡路大震災以降常に待機しているのです」と白濱氏。「また、防衛省には自衛隊中央病院や防衛医大(所沢)以外にも、北海道から沖縄まで15の病院(札幌、大湊、三沢、仙台、富士、横須賀、岐阜、阪神、舞鶴、呉、福岡、佐世保、別府、熊本、那覇)があります」とも話す。各病院とも、それぞれの規模に従い災害初期対処チームを待機させているという。

「災害医療に関しては、自衛隊医官は徹底して訓練を受けています。一刻を争う災害現場では、指揮命令系統が整っていないと混乱をきたし、助かる命も救うことができなくなってしまいます。また医官ばかりではなく、看護師や救急救命士といったコメディカルのスタッフでヘリコプターからの降下訓練などを受けたものも多数おり、チームとして災害現場に派遣されるのです。そういう意味では、自衛隊には災害医療に精通したスタッフが揃っていると言っていいでしょう」と白濱氏。そうした経験こそが、今日の白濱氏の活動にもつながっている。

大規模災害に備えて国家的な組織・体制の整備を提言

日本でも、海外での災害が起きたときにはJMTDR(国際緊急援助隊医療チーム)や自衛隊のPKO派遣が行われ、国内災害時にもDMAT(災害派遣医療チーム)や自衛隊による医療支援が行われているが、「大規模災害に備えるには日本はまだ十分な体制であるとはいえません。今後は米国におけるFEMA(アメリカ合衆国連邦緊急事態管理庁)のような、国家的な組織・体制を構築したほうがいいのではないか」と、白濱氏は長年の経験を踏まえ提言する。

また、今後は災害医療においてもメンタルヘルスケアが重要になってくると指摘。
「これまでは災害発生から72時間の急性期だけに焦点が当たっていたが、実際は規模が大きければ大きいほどその後のケアが大事になる。DMATにならい、被災地において精神科医療を専門的に行う医療チームとしてDPAT(災害派遣精神医療チーム) も整備されてきており、医師だけでなく、精神的ケアを行う人材の育成も必要です」と白濱氏は語り、今後の災害医療の課題と抱負を教えてくれた。

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