1. 特定非営利活動法人 国際緊急医療・衛生支援機構 ― 自衛隊中央病院で培った経験を生かし、国際災害医療に貢献! ― ~前編~

社会貢献ジャーナル

特定非営利活動法人 国際緊急医療・衛生支援機構
― 自衛隊中央病院で培った経験を生かし、国際災害医療に貢献! ― ~前編~

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自衛隊中央病院退職を機にNPO設立


特定非営利活動法人 国際緊急医療・衛生支援機構の白濱龍興理事長

世田谷公園での患者搬送訓練

自衛隊中央病院屋上におけるヘリ患者輸送訓練

長年自衛隊中央病院の病院長を勤めた白濱龍興氏が、退職を機にそれまでの経験を生かし、社会に貢献したいという思いで、2006年に有志の人々と立ち上げたのが「特定非営利活動法人 国際緊急医療・衛生支援機構」(International Emergency Medical and Health Support Japan:IEMS Japan=イームスジャパン)だ。

イームスジャパンは、災害医療の実践と普及を理念に、災害時の医療・衛生支援・メンタルヘルスケア、災害の調査・分析・研究、災害に関するセミナーや講演会の開催を活動の3本柱としている。

「近年、地震や津波などの大規模な自然災害やさまざまな人為災害が続発しており、国際的な対応が求められています。いったん災害が発生すると、発災後72時間が目安といわれる急性期医療のニーズが大半を占めますが、次第に防疫や衛生支援を必要とする感染症への対策が求められるようになります。さらに避難所生活が始まれば長期にわたるPTSD(心的外傷後ストレス障害)に対処するメンタルヘルスケアが重要となってきますが、まだ十分な体制ができているとはいえません」と、白濱氏はイームスジャパン設立の背景について語る。

このような課題を克服するためには、災害時の医療や衛生に関する情報収集・分析を常時行い、セミナーや講演会といった啓蒙・普及活動を通じて、災害時の国際医療支援に関する研究成果やNPOの活動を社会に発信し、医療従事者をはじめとしたネットワークの強化と人材育成に寄与することも重要だという。

「パシフィック・パートナーシップ」が活動の軸に


2012年の「パシフィック・パートナーシップ」での診療の様子

現在、イームスジャパンの活動の中心になっているのが、「パシフィック・パートナーシップ」への医療従事者派遣である。「パシフィック・パートナーシップ」とは米国海軍を中心に、日本の自衛隊や各国の軍隊が共同でアジア太平洋地域において人道的支援を行う活動である。医療活動や文化交流などを通じて、各国政府、軍、国際機関、NGO・NPOの協力のもと、参加国の連携強化や災害救援活動の円滑化を目的としている。

この「パシフィック・パートナーシップ」は2007年から始まったものだが、イームスジャパンがスタッフを派遣するようになったのは2012年から。この年以降、毎年会員を派遣している。

これまでの活動を振り返ってみよう。
「パシフィック・パートナーシップ2012」では、日本の医療チームはフィリピンとベトナムの活動に参加。イームスジャパンからはフィリピンに医師1名、歯科医1名、看護師3名、ベトナムに医師4名と看護師5名を派遣した。米軍が持つ世界最大の病院船「マーシー」での医療活動など、貴重な経験ができたという。


朝早くから並んだ患者さんは、診療科目ごとに色分けされたリストバンドをつけて診察を受ける

フィリピンへの医療チームの一員として参加した看護師の門脇淳子氏は「イームスジャパン・ニュースレター第7号」で、「自衛隊とNGOの日本チームは9日間で679名(歯科含む)の患者さんを診療した。~中略~参加各国の方々や現地フィリピンの行政関係や軍の方々とも親交を深めることができた」と感想を綴っている。

一方、ベトナムでの活動に参加した医師の畑倫明氏は、「病院船Mercyは、1000床の入院ベッド、12部屋の手術室、80床のICU、64列のCT、その他に感染症用の陰圧室、アンギオ室、内視鏡室などを備えている巨大な病院船です。~中略~われわれNGOの持つ機動性や柔軟性といった能力と病院船Mercyの巨大な収容能力・高度な医療技術が上手く協力し機能すれば、災害時に大きな力となることは間違いありません」と記している。

「パシフィック・パートナーシップ2013」では、赤道直下のパプアニューギニアでの活動に医師4名、歯科医師1名、看護師4名を派遣。フィラリアやマラリア、結核、皮膚感染症などの多発地域ということで、加來浩器教授(防衛医大、イームス・ジャパン理事)の事前の衛生地誌の教育が役立ったという。

現地の医療事情に戸惑いながらも、積極参加


カンボジアでの歯科治療風景

翌年の「パシフィック・パートナーシップ2014」ではカンボジアとフィリピンでの活動に参加し、医師6名、歯科医師1名、看護師5名を派遣した。歯科医師の伊藤弘人氏はその活動報告の中で「治療は電気もなく、レントゲンも撮れないといった環境、抜歯のみです」と当時の状況を語っている。「抜歯の患者を400人程度に限定し、本数にして1000本は抜いたことになります。~中略~カンボジアでは歯科に通院するお金がないので、少しでも穴があいていたら抜歯になるのです」と、現地の歯科の現状について述べ、抜歯を嫌う日本との違いを指摘する。(「イームスジャパン・ニュースレター第9号」より引用)

さらに「パシフィック・パートナーシップ2015」では、パプアニューギニアでの活動に看護師2名、フィリピンチームに医師5名、看護師2名の計9名を派遣。そして「パシフィック・パートナーシップ2016」ではパラオ共和に医師5名と看護師2名を派遣している。

直近の「パシフィック・パートナーシップ2017」では、ベトナムでの活動に医師4名、歯科医師1名を派遣。参加した医師の田中佑也氏は「イームスジャパン・ニュースレター第12号」で「初めての活動であり、1日1日がとても勉強になりました。英語を通してのコミュニケーション能力が未熟であったためとても歯がゆい思いをしました。また、このような機会がございましたらぜひ英語を鍛えて行きたい」と有意義な経験だったことを報告している。

この「パシフィック・パートナーシップ」への参加は今後も予定されており、2018年はスリランカでの活動に7名の会員を派遣する予定だという。

後編では、セミナー・講演会を通じた国際災害医療についての普及・啓蒙活動や自衛隊の果たす役割についてご紹介する。

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