1. 認定特定非営利活動法人 放射線医療国際協力推進機構 ― 「どこで生まれても適切な放射線医療を」専門医や関連企業が結集して人材育成や機器提供を支援 ― ~後編~

社会貢献ジャーナル

認定特定非営利活動法人 放射線医療国際協力推進機構 ― 「どこで生まれても適切な
放射線医療を」専門医や関連企業が結集して人材育成や機器提供を支援 ― ~後編~

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アジアで放射線医療を担う医師を養成


アジア各国の医師を集めて毎年開催されるIAEAトレーニングコース

同機構の業務の中心となるIAEA・RCA活動は、外務省から要請されている国内対応委員会の開催、各種活動への専門家派遣の援助、医学系研究会の後援など広範に及ぶが、なかでも毎年、開催されるIAEA・RCAトレーニングコースは、放射線医療を担う医師を養成していくうえで不可欠な取り組みである。アジア各国から若手の医師が開催国に約2週間滞在し、最新機器の使い方など放射線医療の腕前を磨いてもらおうというものだ。

このプロジェクトはアジア各国の持ち回りで実施しているが、これまでは群馬大学など日本での開催が多かった。しかし開催を要望する国もあって、2017年には、一つのプロジェクトのうち、トレーニングコースを3月に日本で、最終評価会議を12月にネパールで行った。その際は日本からも講師を派遣しており、プロジェクトの担当者である理事長の中野氏も現地に赴いている。


2017年にはインドでFARO(アジア放射線腫瘍学会連合)を開催。同機構は事務局を務めた

また、2015年にはアジア全域を包括する放射線治療の学会、アジア放射線腫瘍学会連合(FARO:Federation of Asian Organizations for Radiation Oncology)が日本放射線腫瘍学会の主導で中国、韓国、バングラディッシュ、など計12カ国によって発足。同機構はFAROの事務局も兼任しており、第1回の同学会は京都、第2回はインドで開催し、その運営もサポートしている。アジアの人材育成や研究活動の屋台骨となっているわけだ。

中古機器を寄贈したイエメンで小線源治療がスタート

同機構を中心に多種多様のプロジェクトが実施されているが、特筆すべき活動の一つが中古放射線治療機器の発展途上国への供与である。その第1弾として2011年1月、イエメン共和国のサナア市の病院にブラキセラピー放射線治療機器を寄贈し、同国で初めて子宮頸がんの小線源治療が開始された。

「機器の使い方などを指導する医師も派遣しました。イエメンの人たちもかなり期待していたらしく、テレビでも放映されるなど、国を挙げて歓待されました」(藤原さん)


2011年にはイエメンに放射線治療機器を寄贈

日本の医療機関における医療機器の更新サイクルは短い。しかし、日本では用済みになっても他国で十分に使えるものも少なくない。そういう“もったいない精神”から、同プロジェクトが始まった。送り先としてイエメンが選定されたのは、たまたま群馬大学にイエメンの医師が留学していたという偶然の縁からだ。
その後にイエメンで激しい内戦が勃発したが、「少し前に連絡したところ、ちゃんと稼働しているという返事を聞き、胸をなでおろしました」と藤原さんは振り返る。

供与プロジェクトが評価されエクセレントNPO大賞にノミネート

中古放射線医療機器は同機構の理事や会員が所属する病院にストックされており、いつでも送れる状況にあるというが、問題は船で機器を輸送する際にかかる莫大な費用である。そのため、まだこの供与プロジェクトはイエメンのみにとどまっており、いろいろな国から機器を送ってほしいとの要望はあるものの、寄付金を集めるのが目下の最優先課題なのだという。

「ただ、このプロジェクトを実施することで当法人の活動が認知されるようになったのはうれしい」と藤原さんは喜ぶ。2013年12月、「エクセレントNPO」をめざそう市民会議が主催(毎日新聞社共催、共同通信社後援)する「第2回エクセレントNPO大賞」にノミネートされたのである。


イエメンへの機器供与の功績でエクセレントNPO大賞にノミネート

エクセレントNPO大賞には組織力賞、市民賞、課題解決力賞の3つの賞があり、同機構は課題解決力賞5団体のうちの1つに選ばれ、表彰を受けた(173団体が応募)。「自らが取り組む課題を明確に把握していることは無論のこと、課題の認識を進化させ、それに伴い活動や事業を進化させ、一定の成果を上げている」NPOであると評価されたのである。
惜しくも大賞は逃したものの、新たな活動に向けての糧になったのは確かであろう。

なお、医療機器の供与は大事業であるが、それ以外にも、放射線医療に関する技術書などを毎年各国へ送っている。小さなことでもできるところから進めて少しでもアジアの放射線医療のレベルアップに貢献したいという同機構の姿勢が垣間見える。

組織力を強化してさらなる貢献の拡大をめざす

同機構の事務局がある群馬大学医学部は日本でも数少ない重粒子線治療施設を併設しているが、この先端治療施設と技術をアジアへ拡散していこうと、タイのバンコクにおいて同施設の誘致活動等も進めている。

「ただし、こうした大掛かりな事業は金銭面などでなかなか大変。タイでの施設誘致も調印するところまでいったのですが、お金の関係で中断している状況です」(藤原さん)。
施設の建設費などの経済的問題だけでなく、現地でこうした最新鋭の放射線機器を扱う医師や技師が不足しており、日本側に指導医の長期滞在を求めているのも話し合いが進まない理由の一つだ。同機構としても限られたリソースで運営されているだけに、途上国からのすべての要求に応えられない現実もある。

そこで現在、同機構が力を入れているのが、会員増や資金を集めての組織強化だ。2012年に群馬県で2番目の認定NPO法人になったことで寄付金集めも容易になった。「最初は本当にお金がなかったが、5年が経過した今、少し余裕も生まれてきました」と藤原さんは説明する。昨年末はその5年間の実績が認められて、無事、更新も果たしている。

国内で人材を育成するにしろ海外へ指導者を派遣するにしろ、人手は多ければ多いほどよい。しかし現状は限られた会員とボランティア医師によって各プロジェクトを実施しており、会員を増やしてくことは同機構にとって大きな課題といえる。「協力していただける医師やスタッフを増やしていくことで現会員の負担も軽減できますし、これからの事業展開にも弾みがつきます」(藤原さん)

会員の間でも自分たちの活動を医療界、さらには社会全体へ認知させていくことの必要性が指摘されている。また外務省からも同機構によるシンポジウムの開催等が促されており、今後は広報活動に力を入れることによって、同機構における「アジアにおける放射線医療の発展」という理念の輪を拡大していく構えである。

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