1. JA長野厚生連 佐久総合病院 ― 長野から世界へ! 先駆的な地域医療をモデルに国際保健医療に貢献 ― ~前編~

社会貢献ジャーナル

JA長野厚生連 佐久総合病院 ― 長野から世界へ!
先駆的な地域医療をモデルに国際保健医療に貢献 ― ~前編~

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プライマリ・ヘルスケアの先駆者


お話を伺った北澤彰浩医師(右)と坂本昌彦医師

1969年に佐久総合病院で開催された第4回国際農村医学会議(現:国際農村医学会)の様子

長野県佐久市、千曲川河畔に建ち、浅間山と八ヶ岳連峰を望む佐久総合病院。長年院長を務めた故・若月俊一氏のもと、「農民とともに」のスローガンを掲げ、地域医療の先駆的な取り組みをおこなってきた病院である。地域住民の中に積極的に入り込み、「予防は治療に勝る」との信念から無医村への出張診療などの取り組みをおこなってきた。

「佐久総合病院は、長年この地域に密着してプライマリ・ヘルスケアに取り組んできた一方で、病院理念に『国際保健医療への貢献を目ざします』の文言が入っていることからもわかるように、昭和の時代から国際保健医療に力を入れてきました」と、同院の診療部長の北澤彰浩医師は話す。

プライマリ・ヘルスケアとは、『2000年までにすべての人に健康を』という目標を掲げた1978年のアルマ・アタ宣言で初めて定義づけられたもので、すべての人にとって健康を基本的な人権として認め、住民の主体的な参加や自己決定権を保障する理念やアプローチである。

佐久総合病院では、JICAをはじめ世界各地の国際機関から多数の外国人研修生を受け入れるなど、このアルマ・アタ宣言に先駆けて医療の民主化に取り組んできた。それは日本の農村における同院の取り組みが、アジアをはじめとした発展途上国や被災地の保健医療のモデルになることを示すものだともいえる。

正式な組織が整備され、本格的な活動がスタート


コンゴ民主共和国からの海外研修生とともに

台湾宜蘭県衛生局からの視察団を前に、佐久総合病院の取り組みについて説明する北澤医師

ただ、かつては国際保健医療に関わる専門部署は存在していなかったことから、1994年に地域医療部が設立された際に、地域診療所科、研修医教育科、地域ケア科ともに、国際保健医療科が立ち上げられた。そこから同院の国際保健医療活動が本格的に始動していった。

「国立フィリピン大学マニラ校レイテ分校School of Health Sciensesとの人材交流や、ラオスにおける学校保健の教科書を作成する信州大学のプロジェクトに当院の小児科の医師が協力しました。また、ミャンマーのカヤ州で病院および地域保健システム整備をおこなうJICAのプロジェクトでは、農村部の病院運営について当院のノウハウを学んでもらうために研修生を受け入れたり、当院からスタッフを派遣したりしました」と、これまで多くの成果があったと北澤医師は振り返る。


病院祭には地域の人も大勢おとずれ、とても賑やかだ

その後ミャンマーの病院では、佐久総合病院の特徴的な取り組みである「病院祭」にならい、周辺住民を巻き込んだ形での保健医療の啓蒙イベントが開催されるまでになったという。

ちなみに同院の病院祭は、戦後間もない1947年に始まり、2017年には71回を数える歴史あるもの。二十四節気の一つ「小満」の時期に開かれる佐久地方に伝わるお蚕の祭り「小満祭」(こまんさい)に合わせておこなわれ、近年では2日間の開催期間で1万人を超える人出で賑わう大規模なイベントとなっている。

セミナーやグローカルカフェなど、さまざまな活動を展開

現在、国際保健医療科は北澤医師、坂本医師ら、計4名の医師が兼任するほか、秘書課と兼任の事務スタッフ1名で構成され、日々の診療の傍ら、海外からの視察団への対応などにあたっている。

このほか、国際保健委員会という組織があり、医師、看護師、臨床検査技師、事務職員など約40名が職域を越えてさまざまな活動を展開している。


2015年に開催された第3回佐久国際保健セミナー

その一つが2013年に始まった「佐久国際保健セミナー」だ。これまでのテーマを列挙すると、第1回「いま世界に伝えたい、日本の地域医療の経験」、第2回「日本と世界で地域の健康を守るひとを育てる」、第3回「豊かな老いをつくる―アジアの高齢化にどう向き合うか―」、第4回「医療アクセス困難という問題の解決方法を考える」など、情勢を踏まえた内容を取り上げている。

いずれも佐久総合病院が取り組んできた地域医療を核として、世界の保健医療問題に密接に関わるテーマであり、例年、地域医療や国際保健を志す多くの医療従事者が参加している。


飲み物やお菓子をいただきながら国際保健医療について考えるグローカルカフェ

さらに、世界(グローバル)と地域(ローカル)を結び、地域の人々に気軽な雰囲気で国際保健医療について考えてもらおうと、海外で活動経験のある人物を講師に招いての講演会と交流会からなる「グローカルカフェ」をおよそ月1回のペースで院内で開催している。

直近のテーマは、第21回「カンボジア活動報告」、第22回「タイ・ミャンマー国境で地域医療を支える」、第23回「プライマリ・ヘルス・ケアを再考してみよう」など。すでに20回以上を数える好評の企画となっている。

後編では、海外渡航者外来や国際医療支援フレーズ集の作成など、後方支援的な活動についてご紹介する。

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