1. エイズ孤児を支え、問題に立ち向かう人々を支援するPLAS ~後編~

社会貢献ジャーナル

アジアパシフィックアライアンス―NGO、企業、政府の垣根を越えたプラットフォームを
構築し現地の被災者に寄り添った継続的な支援の実現へ― ~後編~

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関連団体との協働でレスキューチームを組織

2015年ネパール地震SARチーム派遣2015年ネパール地震SARチーム派遣
2015年ネパール地震バングラ医師チーム派遣2015年ネパール地震バングラ医師チーム派遣

A-PADの活動は、アジア太平洋地域における災害対応の枠組みづくりとメンバー国間の相互支援がメインだが、大規模災害が発生した際は、現地での救助活動もおこなう。それを可能にしているのが、関連団体との連携である。災害救助犬を保有するピースウィンズ・ジャパン、ヘリコプターを手配するなどの対応を行うシビックフォースを加えた3団体混成のレスキューチームを組織し、捜索救難活動にあたっている。

最近では2015年のネパールの震災の際にもいち早くチームを現地へ送り込んだ。ネパールの震災では、日本だけでなく、スリランカやバングラデシュのパートナー団体からもスタッフが派遣された。日本は捜索救難チームの派遣、その後の緊急支援や復興支援をおこない、バングラデシュのパートナー団体であるダッカコミュニティ病院は、現地に医療チームを送り、モバイルクリニック(移動診療)を展開。A-PADのメンバー国間で、国を越えた支援が初めて大規模に行われた事例だ。

「個々の団体では資源に限りがあるため、各国のパートナー団体が主導するプラットフォームを通じた連携や個人的なつながりで、対応できることを増やしています」(齋藤氏)

そうしたネットワークやつながりとともに、3団体の混成レスキューチームが重視しているのは、民間ならではの迅速さや柔軟性であろう。昨年の熊本地震の際は、ヘリで益城町および南阿蘇の現場へ駆けつけ、災害救助犬を連れてがれきのなかの捜索を始めたという。

「東日本大震災のときもそうですが、国内の災害対応でも政府が対応しきれないところがあり、民間の団体が果たせる役割は少なくありませんでした。ましてアジア太平洋地域で同じ規模の災害があったとき、政府は十分に機能を果たせないでしょうから、その国の民間団体にしかできないことは必ずあるはず。それをA-PADとしてサポートしたいという思いが、私たちの活動の根底にあると思います」と齋藤氏は力を込める。

過疎の地域医療から海外の災害医療へ展開

A-PADの日本のスタッフ数は20名ほどだが、外部のさまざまな分野の専門家をアドバイザーとして迎えている。医療分野では、東京大学大学院医学系研究科国際保健政策学教室教授の渋谷健司氏、長崎大学大学院国際健康開発研究科の神谷保彦氏らだ。渋谷氏はピースウィンズ・ジャパンの理事を務め、神谷氏はイラク・クルド人自治区で現地の保健省と協力して医療活動を行う同団体の事業に参加してもらった縁で、A-PADの活動にも協力してもらっている。

こうしたアドバイザーの方々の力を借りて、A-PADが今後力を入れていきたい活動の1つが医療支援である。

これまで、医療支援はピースウィンズ・ジャパンでの実施実績はあるが、クリニックを建てたり、住環境回りの衛生環境を整えるなど、ハードの支援が中心だった。今後、A-PADグループがどのように医療支援にかかわっていくかは検討段階だが、いくつかの試行的な取り組みが始動している。現在、混成レスキューチームについては、台湾やスリランカのレスキューチームと常時連携を図っていくとともに、医師を加えて複合チームとして機能を充実させていくといったことも検討されている。

ピースウィンズ・ジャパンの本部移転とともに、地域医療に対する支援強化も同団体が取り組んでいる課題のひとつである。2013年に広島県神石高原町という山間地域を活動拠点に定めた背景には、モビリティをどう確保していくかという点では地域医療も災害医療も共通しているという認識から出発している。医師の高齢化や医療サービスへのアクセスが容易ではないなど、過疎地における地域医療の課題解決も視野に入れつつ、それを災害時の医療提供に生かせるのではないかという発想だ。

SARチーム派遣用のヘリコプターSARチーム派遣用のヘリコプター

具体的な構想は、海外の災害医療を志す若い医師を同地へ招聘し、普段は地域医療に従事してもらいながら、海外で大規模な災害が発生した際は現地へ飛んで医療支援に携わってもらうというもの。その布石として神石高原町にヘリコプターを配備。操縦士と救命救急士も常駐させ、近隣の医療機関と連携して医師・患者の搬送や現場での救命処置などをおこなえる体制の確立をめざしている。このように、災害時の医療支援のあり方についても、日本でシステムやノウハウを確立し、メンバー国の参画も得ながら医療分野のネットワークを広めていく考えだ。

感染症対策を通してメディカルセクターとの連携を強化

A-PADの医療分野における支援のため、2016年には海外での感染症対策を軸とした事業で、外務省から新たに1億円ほどの拠出金を受けた。アドバイザーの協力を得て取り組んでいくことが決まった主な事業は以下のとおりである。

①韓国における中東呼吸器症候群の調査研究
②災害後に発生する感染症への対策初動キットの備蓄
③緊急時におけるメディカルチームの派遣・搬送システムの検討
④シエラレオネにおけるエボラ出血熱感染拡大のフォローアップ活動のサポート
⑤ベトナムにおけるジカ熱ウイルスの診断技術向上のためのサポート

③は、アウトブレイクなどでメディカルチームをいち早く現地に送る必要があるときに、何らかの理由で民間機が利用できないような場合、チャーターなどによってA-PADで飛行機を確保して現地入りするというもの。

なお、A-PADが新たに設立したNPO法人である特定非営利活動法人アジアパシフィックアライアンス・ジャパンは、佐賀市に本部を置いている。佐賀県がNPOの誘致に積極的であるのに加え、国際空港である佐賀空港の有効活用を図れることが決め手となった。今回導入を計画している飛行機についても佐賀空港に配置し、将来的には同空港を拠点に近隣諸国へのチーム派遣、物資搬送などを検討している。これらの事業で実績を積むことにより、メディカルセクターとのネットワークを強化し、各国のプラットフォームでも医療支援の充実を図っていきたいという。

A-PADの災害対応モデルの拡充をめざす

2016年11月、A-PADシンポジウム ニューデリーでアジア防災閣僚級会合を開催2016年11月、A-PADシンポジウム
ニューデリーでアジア防災閣僚級会合を開催

A-PADの本格的な始動から2年あまり。成果も徐々に現れ始めている。「フィリピンやスリランカなどでは、これまで災害が起こるたびに日本への支援が要請されていましたが、最近はかなり少なくなっています。小規模災害なら国内で対応できるようになってきた。これは大きな進歩です」と齋藤氏は評価する。

メンバー国の政府からA-PADへの資金提供はまだないものの、政府のスタッフが物資配給の監督をしたり、物資輸送のトラックを提供するなど、人やモノに関するサポートは始まっている。民間主導でスタートした各国のプラットフォームに、国も積極的に関与するところまで到達したわけだ。

実は、活動の原資である外務省のN連資金は3年が目処とされており、2017年度はその最終年にあたる。この資金が継続できないために、メンバー国のプラットフォームが機能停止するようなことがあってはならない。
「資金が続いている間に、現地側の関係者がマルチセクター連携による協力に意義を見いだし、何らかの形でプラットフォームを通じた災害対応を継続できるようにしていきたい。そのためにはまだまだプラットフォームのレベルアップが必要です」と齋藤氏。海外の支援チームが被災地入りし、緊急支援を展開し、ある程度復興したら現地を離れるという、従来の政府間または国際協力NGOによる災害対応モデルが果たす役割は今後もあると指摘する。合わせて、現地のプラットフォームを基礎として、小回りが利き、コストを軽減できる民間主導のプラットフォーム型のモデルは、特に小規模な自然災害を繰り返すアジア太平洋地域にとってなくてはならないものと確信している。

メンバー国はまだ6カ国であるが、支援に入ったネパールなど協力関係ができている国にアプローチを続け、今後も同モデルの拡大を図っていく構えだ。

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