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社会貢献ジャーナル

アジアパシフィックアライアンス―NGO、企業、政府の垣根を越えたプラットフォームを
構築し現地の被災者に寄り添った継続的な支援の実現へ― ~前編~

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日本で築いた仕組みをアジア太平洋地域に広げる

A-PAD 統括責任者の大西健丞氏A-PAD 統括責任者の大西健丞氏
捜索救難(SAR)チームと災害救助犬捜索救難(SAR)チームと災害救助犬

アジア太平洋地域は世界で最も自然災害が多い。
自然災害の被災者のうち9割はアジア地域で発生し、命を失う方は年間7万人を上回る。地球温暖化などを背景に、台風などの災害発生数も年々増加しているが、それにもかかわらず、大規模災害が発生した際の対応や支援は必ずしも効率的とはいえないところも多いという。

2012年に設立されたアジアパシフィックアライアンス(以下、A-PAD)は、アジア太平洋地域で頻発する災害に備え、各国のNGO、企業、政府が組織の壁を越えて連携し、迅速かつ効率的な支援をめざす組織である。

その発端は1996年、A-PAD統括責任者の大西健丞氏が海外の紛争・災害地域の人道支援のために立ち上げたNGO「ピースウィンズ・ジャパン」だ。サダムフセイン政権下で迫害されていたクルド人自治区の支援などを行っていたが、当時の活動を通して痛感させられたのは、日本のNGOが資金的な制約から現地で緊急的な活動を十分に担えないということだった。

日本のNGO活動のために新しいシステムが必要であると考えた大西氏は、NGOグループと政府、民間企業が連携し、海外の大規模災害の支援をあたる組織づくりに尽力、2000年の「ジャパン・プラットフォーム」の設立に漕ぎつける。これにより、政府や民間企業の資金を利用して、NGOが現地ですぐに活動できる道筋を開いた。なお、ジャパン・プラットフォームは当時、海外での災害対応が中心であったため、2009年1月、国内災害に対応する団体としてシビックフォースを新たに立ち上げ、その直後に起きた東日本大震災の被災者支援活動にもあたっている。

ジャパン・プラットフォームとシビックフォースで共通するのは、NGO、企業、政府などのマルチセクターがパートナーを組んでのプラットフォームづくりだ。通常時は、各災害を想定した支援プログラムの策定、スタッフの訓練、防災活動、災害時には支援のための情報収集、ヘリ手配、備蓄物資を活用した支援など多彩な活動をおこなう。

災害大国日本で培ったこのシステムやノウハウを、同じく自然災害の多発地帯であるアジア太平洋地域に広げていくことができないか──という着想から生まれたのがA-PADである。

民間主導で迅速かつ効率的な支援めざす

2009年から大西氏らが主だった国々を回り、災害対応のプラットフォームづくりの必要性を説明。インドネシア、韓国、フィリピン、スリランカからの賛同を得ることができた。この4カ国に日本を含めた5カ国で2012年にA-PADを発足。その後、バングラデシュが加わり、現在、メンバー国は6カ国となっている。

本部はインドネシアのジャカルタで、理事長は同国の防災プラットフォーム組織であるプラナスの元理事であるファイザル・ジャラル氏が就任した。ほかの国の代表者もNGOや商工会議所など民間団体の出身者で固められ、「1人でも多くの人たちを災害から救う」という共通の思いのもと、民間主導の国際機関として迅速かつ効率的な災害支援をめざしている。

A-PADシンポジウムに登壇した齋藤雅治氏A-PADシンポジウムに登壇した齋藤雅治氏

ただ、2012年の設立当時の活動資金はわずかで、本格的に活動が開始されたのは外務省から1億円弱の拠出金を獲得できるようになった2014年からだ。「『数々の災害を経験している日本が、民間主導で国際的な防災の枠組みづくりを進めていきたい』という思いを、政府も応援してくれていることの現れだと思います」。こう話すのは、A-PAD事業部長の齋藤雅治氏だ。ピースウィンズ・ジャパンからの出向という形で2014年4月からA-PADの運営に携わっている。

この拠出金に加えて、同じく外務省の日本NGO連携無償資金協力という制度も活用している。通称「N連資金」と呼ばれ、海外で活動するNGOがプロジェクト単位で申請し、承認されたプロジェクトが助成を受けるというもの。A-PADでは、インドネシア、フィリピン、スリランカのプラットフォーム構築をめざす事業の承認を受け、新たに2億円弱の予算を得た。当面の資金を確保できたことで活動に弾みをつけている。

災害発生時は「まず自国で」対応できる仕組みを構築

フィリピンでのA-PADメンバー会議フィリピンでのA-PADメンバー会議

A-PADの活動を一言で説明すると、市民社会、経済界、政府などマルチセクターによる防災や災害対応のプラットフォームをメンバー国に構築し、機能させていくことである。「2013年にフィリピンを襲った超大型台風ハイエンのような甚大な災害の場合は異なりますが、ある程度の規模の災害はその国のプラットフォームが自国のリソースを使って対応できるようにするのがねらいです」と齋藤氏は説明する。

現在、プラットフォームが形づくられているのはインドネシア、フィリピン、スリランカの3カ国。その国の既存のプラットフォームを支援しているものもあれば、新たにつくられたものもある。

スリランカは現在のところ、A-PADが手掛けたプラットフォームのなかでは一番進んでいる国だ。2014年、NGOグループや商工会議所などを束ねる形で「A-PADスリランカ」を組織し、政府が主催する災害対応のための調整委員会にA-PADスリランカとして常に参加するなど、官との連携も深めている。

  インドネシアでは、前述のプラナスのネットワークをより強化し、州ごとの防災の枠組みづくりなどを支援している。また、年間平均20回もの台風に襲われるフィリピンにおいては、NGOのネットワークと国内の主要企業が立ち上げた防災組織とが中心になって2016年3月にA-PADフィリピンを発足させた。しかし、今は両団体が協働して有機的に対応するところまでには至っておらず、機能させるまでにさらなる支援が必要だという。

このようにA-PADでは、メンバー国のプラットフォームづくりを支援し、自国内でリソースを賄えるよう、その国の災害対応レベルの向上を図っている。

これまでは、たとえばフィリピンに台風が直撃して大きな被害が出ると、日本のNGOが支援チームを現地に送り、ニーズを調べてプランを立て、事業承認を得たのちに物資を送っていた。「しかし、それでは時間がかかり、必ずしも効率的ではない場合もあります。現地のニーズはその国で何回も災害を経験してきた地元の人たちが一番よく知っているわけですから、自分たちで災害対応できれば、より被害を受けた方たちに寄り添った支援を提供できると思います」(齋藤氏)

A-PADの場合、現地のパートナー団体があらかじめ特定され、企業や政府からの協力も期待できる。ある程度の備蓄も確保しており、現地NGOが動員できるボランティアの活用も可能だ。だが、それでも自国で集められるリソースでは対応し切れないほど災害の規模が大きい、あるいはもう少し予算があれば効果的な支援活動ができるといった場合は、拠出金の中の初動対応資金を活用して日本からの支援もおこなう。「まず自国で対応し、それで十分ではないときは現地側の求めに応える形で他のメンバー国から支援を差し伸べる。これがA-PADの基本的な動き方です」と齋藤氏は話す。

  後編では、関連団体との協働による災害救助や医療支援などA-PADの多彩な活動を紹介する。

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