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社会貢献ジャーナル

特定非営利活動法人・歯科医学教育国際支援機構
― 途上国におけるサステナブルな医療貢献をめざして、歯学教育を支援 ― ~前編~

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荒廃したカンボジアの歯学教育の現場

宮田歯科医院(東京・中野区沼袋)の院長も務める宮田隆理事長宮田歯科医院(東京・中野区沼袋)の院長も務める宮田隆理事長
1991年、内戦状態にあったカンボジアに入り、荒廃したヘルス・サイエンス大学の再建に尽力1991年、内戦状態にあったカンボジアに入り、荒廃したヘルス・サイエンス大学の再建に尽力
ヘルス・サイエンス大学での講義風景ヘルス・サイエンス大学での講義風景
カンボジアでのオープンエア・クリニックカンボジアでのオープンエア・クリニック
ヘルス・サイエンス大学歯学部の最終学年の僻地医療体験ツアー(通称SETRA)。すべてOISDEの支援でおこなわれているヘルス・サイエンス大学歯学部の最終学年の僻地医療体験ツアー(通称SETRA)。すべてOISDEの支援でおこなわれている

特定非営利活動法人・歯科医学教育国際支援機構(OISDE)は、カンボジア、ラオス、東ティモールなど、歯科医学教育の立ち遅れた途上国で教育・医療をおこなうNPO法人である。

同機構を立ち上げた宮田隆理事長は、「一言で途上国と言いますが、途上国は“そこそこの途上国”と“窮状にあえぐ途上国”に分けられると思っています。私たちがこれまで支援してきたのは、窮状にあえでいる国のほうです。このような途上国は、ガバナンスはもちろん、治安、衛生環境が悪く、人材不足という共通点があるのです」と指摘する。

宮田理事長が窮状にあえぐ途上国の一つであるカンボジアを訪れたのは1991年のことだった。ポル・ポト政権による独裁やその後の内戦を経たカンボジアでは、知識階級が軒並み殺害されており、医師、教師にあたる人材が枯渇。カンボジアで唯一歯科医師の養成をおこなっていたヘルス・サイエンス大学歯学部でも、ほとんどの教員を失い荒廃していたという。

「一説によると、内戦前のカンボジアには歯学部の教員を含めて歯科医師が360人いたそうです。それが内戦が終わったとき、わずか6人しか生存していなかったというのです。そうした惨状を目のあたりにしてショックを受け、これはなんとかしないとと思ったのが、活動を始めたきっかけでした」と、宮田理事長は当時を振り返る。

諸説あるが、カンボジアの内戦が終わったのは、カンボジア国民議会選挙がおこなわれた1993年のこととされる。宮田理事長がカンボジアを訪問したのは、その2年前であり、まだ内戦状態にあった時代である。

「当時プノンペンは戒厳令下で、午後8時を過ぎるとすべての店が閉じました。まだ郊外では戦闘が続いており、たいへん危険な状態でした。そのようななかで、仲間を募って活動を続けました」

宮田理事長の経歴をひもとくと、日本大学歯学部卒業後、同大助手を経て、1996年から明海大学歯学部教授、98年からは明海大学病院病院長を務めている。このような要職にありながら、2002年にOISDEを設立している。

「人間というのは五十の齢が近づくと、いろいろと自分の人生について考えるようになってくるものです。大学教授や病院長のポストにも就いていましたが、このまま終わっていっていいものかと……。カンボジアの歯科医療を復興しようと、満を持して活動を始めたのが40代のときでした。それまで10年かけて、英語で講義をするのに必要な英語力を身につけていました。ただ、いつまで元気に活動できるだろうか、人を育てるのに10年はかかるのではないかという思いが強くなり、人生を逆算して考えたのです」

そして、2002年、定年まで13年を残して大学を退職したのが宮田理事長52歳のときだった。同時にOISDEを立ち上げ、本格的にボランティア活動に専念していったのだ。

人づくりこそが、持続的、継続的な支援になりうる

修士課程クラスでの歯周外科の実習(カンボジア)修士課程クラスでの歯周外科の実習(カンボジア)
東ティモールにて、現地の歯科医師と歯科医学教育の打ち合わせ東ティモールにて、現地の歯科医師と歯科医学教育の打ち合わせ
東ティモールでは歯科看護師の再教育も実施東ティモールでは歯科看護師の再教育も実施

宮田理事長は、当初は大学の休暇を利用するなどして、年5~6回現地に出かけ、専門の歯周病学をはじめとする歯科医学の講義をおこなってきた。最初はカンボジアと東ティモールを拠点としたのち、カンボジアでの活動が軌道に乗ってからは、ラオスを中心に活動してきた。

また、2004~2005年にかけては、JICA(国際協力機構)との連携で1年半ほど現地に滞在して活動することもあった。

「外務省のNGO連携無償資金協力というスキームには6回採択されていますし、東京都やトヨタ財団からも助成金をいただいたこともあります。また、JICAの草の根技術協力には2種類ありますが、これまで事業費が少ない支援型に2回、事業費が多いものの難易度が高いパートナー型にも1回採択されています」と、さまざまな公的支援もあったおかげで10年以上事業を続けてこられたという。

それでも、「最初のころは、現地で歯学教育をおこなうといっても、何もない状態からのスタートでした。教育のための機材やテキストすらない状態だったのです。現地の学生は、英語によるコミュニケーションもおぼつかない状態でしたので、クメール語に翻訳した教材を作ったほか、基礎医学教育に不可欠な顕微鏡を20台ほど寄付していただき、それを自腹でプノンペンまで運びました。ただ、税関で賄賂を要求されるなど嫌な目にあったこともあります」と、多くの苦労があったことを打ち明ける。

宮田理事長が教育にこだわるのは次のような理由からだ。
「途上国への医療支援というと、短期間、現地を訪問して医療ボランティアをおこなうような事業が一般的です。しかし、そのような支援では、一時的には感謝されることはあっても、その国の医療水準を持続的、継続的に改善していくことにはつながりません。私たちが教育にこだわってきたのは、現地の人びとを医療従事者として育成することで、そうした課題を解消しよう思ったのです」と、“教育は国家百年の計”というように、人づくりの重要性を説く。

後編では、海外における人材育成の工夫や成し遂げられた功績をご紹介する。

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