1. 聖路加国際大学 ― 大学院生がタンザニアで母子保健を支援!JICAとの連携によるボランティア事業 ― ~前編~

社会貢献ジャーナル

聖路加国際大学 ― 大学院生がタンザニアで母子保健を支援!
JICAとの連携によるボランティア事業 ― ~前編~

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ボランティア活動をしながら修士号を取得可能

お話を伺った聖路加国際大学大学院ウィメンズヘルス助産学教授の堀内成子先生(左)と助教の新福洋子先生(右)お話を伺った聖路加国際大学大学院ウィメンズヘルス助産学教授の堀内成子先生(左)と助教の新福洋子先生(右)

日本における看護教育のパイオニアとして知られる聖路加国際大学では、2015年4月から「タンザニア連合共和国母子保健支援ボランティア連携事業」を開始した。これは、アフリカ・タンザニアでJICAの青年海外協力隊(JOCV)の一員として、看護・助産に関わる健康教育のボランティア活動をおこないながら、同大大学院看護研究科の修士号を取得できるプログラムである。

本事業が始まった背景には、タンザニアから一人の助産師を留学生として受け入れたことが挙げられる。2009年から2011年にかけて、立教大学ウィリアムズ司教記念教育基金によって来日したFrida Madeniさんが、聖路加国際大学大学院看護学研究科ウィメンズヘルス・助産学専攻で学び、修士号を取得したのだ。

同時期に、同大ではタンザニアのムヒンビリ健康科学大学と教育・研究交流を図るため、学術交流協定を締結するなど、タンザニアとの深いつながりが生まれ始めていた。

その後、看護系では初めて日本学術振興会のアジア・アフリカ学術基盤形成事業の採択を受け、研究の拠点としてアジア・アフリカ助産研究センターを設置。2011年~2013年度の3年間にわたり、「共同研究」「セミナー」「研究者交流」を効果的に組み合わせた国際交流を実施し、若手研究者育成のため、ムヒンビリ健康科学大学での大学院修士課程助産学専攻開設に向けたカリキュラムの開発や、タンザニアにおける思春期の性教育の研究を実施した。2015年度からは、研究拠点形成事業に採択され、現在もタンザニアでの妊婦健診、助産ケアの質改善、新生児ケアの研修などに尽力している。

タンザニアでの臨床演習風景タンザニアでの臨床演習風景

ムヒンビリ健康科学大学と聖路加国際大学では、相互に教員を派遣するなど交流が続いていたが、「タンザニアの母子保健の改善のための人材を育成していくには、より確実な人材育成プログラムの必要性を感じたのです」と、同大大学院でウィメンズヘルス助産学教授を務める堀内成子先生は振り返る。

同大では、すでに「国際協働論演習」というタンザニアへの2週間の短期派遣プログラムを実施していたことや、他大学でもJICAのボランティア活動を組み入れたプログラムが実施されていたことを参考に、JICAとの交渉の末、JOCVのボランティア活動と、大学院教育とを組み合わせた連携事業を10年契約で実施するに至ったのだ。

「本学は、ルドルフ・B・トイスラー博士という米国の宣教医がキリスト教精神にもとづいて作った病院が始まりです。かつてトイスラー博士が日本の医療に貢献してきたように、今度はわれわれが途上国の保健や医療に貢献したいという思いがあるのです」と堀内先生は、建学の精神に沿った事業であると強調する。

応募条件として3年以上の臨床経験が必要

聖路加国際大学の「タンザニア連合共和国母子保健支援ボランティア連携事業」は、大学院看護学研究科の博士前期課程(修士課程)ウィメンズヘルス・助産学専攻に設けられた上級実践コースにあたる。

通常の大学院への応募条件に加え、看護師、助産師、保健師免許のいずれかにもとづく実務経験が3年以上を持つ者とされており、JOCVの一員として、現地の母子保健の指標の改善に貢献できる実践的な力が求められている。

募集ポストは看護師と助産師の2つ。看護師ポストは、小児科でマラリア、栄養失調、下痢症などの乳幼児を持つ母親への指導をおこなう。一方、助産師ポストは妊婦検診における危険な兆候や妊娠期の健康増進のための指導をおこなうのが主な役割となっている。

「入学に関する問い合わせなどは多いのですが、実際の受験者は数人程度です。大学院に合格するだけでなく、そのあとJOCVの選考にも受かる必要があるので、難易度は少々高いですが、チャレンジ可能なポストです」(堀内先生)

そうした厳しい選考基準をクリアし、2015年入学の1期生として看護師経験者1名、2016年入学の2期生として助産師経験者1名が合格を果たしている。

「タンザニア連合共和国母子保健支援ボランティア連携事業」コース概要

コースは、入学前年の秋に大学院の入試があり、合格すればJOCVの1次試験(書類審査)、それをパスすると翌年の1月に2次試験を受験、合格発表が2月半ばとなる(図)。修士課程の修了要件として、32単位が必要なため、1年目の前期にはできるだけ多くの単位を取得する。看護学研究法や応用統計学、助産学演習など、16単位程度を履修し、研究に関する基礎を整えることが望ましいという。

その後、10月からは約70日間にわたって、JOCVの派遣前訓練に参加する。この訓練では、ほかの隊員と共同生活を送りながら、派遣先に応じた言語の習得や、体力づくり、健康・安全管理などについて学ぶ。

翌年1月から現地へ赴き、派遣がスタートする。最初の3か月はオリエンテーションを中心に現地の生活に慣れ、2年目の4月から本格的なボランティア活動が始まる。派遣期間中は、ボランティア活動をメインに、研究計画を練り、研究のためのフィールドワークやデータ収集などをおこなう。3年目の9月に帰国し、残りの期間で、取り組んできた課題研究の論文を書き上げる。

上級実践(JICA連携)コースの担当である助教の新福洋子先生は、「派遣期間には、助産学演習Ⅱの2単位と実習の6単位、計8単位を取得することになります。その評価をする必要があるため、その間も遠隔指導をおこなっています」と話す。

ダルエスサラームのNGO団体で、栄養や衛生等の指導を行った後にダルエスサラームのNGO団体で、栄養や衛生等の指導を行った後に

インターネットを活用したクラウド型の学習支援システムを使い、現地にいる学生は2週間に一度の頻度で、ボランティア活動や研究内容についてのレポートを提出。それに対して新福先生からコメントやアドバイスを返すスタイルで学生の様子を把握するほか、生活上で困ったことがあったら、メールやインターネットテレビ電話などを駆使して、さまざまな相談にも乗っているという。

さらに、新福先生は、タンザニア短期派遣プログラムでも引率指導をはじめ、自身の研究のために、年4回ほど現地を訪れている。「直近で訪れたときは、ちょうど1期生の研究計画書を練る時期でしたので、そのときはマンツーマンで指導しました」と、密な指導を心がけている。

後編では、タンザニアの病院でボランティア活動に励む1期生の活躍ぶりをご紹介する。

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