1. ファイトフォービジョン ― 白内障患者を失明から救う!アジアの途上国で眼科国際医療協力に尽力 ― ~後編~

社会貢献ジャーナル

ファイトフォービジョン ― 白内障患者を失明から救う!
アジアの途上国で眼科国際医療協力に尽力 ― ~後編~

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新たなカウンターパートナーの出現

藤島理事長は「こうした国際医療援助活動は、現地に受け入れてくれるカウンターパートナーがいないとうまくいかないし、こちらの意向だけで乗り込むことはできないんです」と話す。
スリランカでの活動を中止せざるを得なくなったとき、藤島理事長らは今後の活動をどうしていくか苦慮していた。しかしそうした状況のとき、タイミングよく、ベトナムとカンボジアから医療協力の要請があったという。

ファイトフォービジョンの会員数は、正会員と賛助会員合わせて70名程度。このうち3分の1ほどが正会員だ。そのほか、法人会員として7~8社の企業が協賛しているというのが、組織の全体像である。医療援助で海外を訪問するのは、年に1~2回程度。正会員に呼びかけ、手を挙げてくれた会員の中から5~6名で要請のあった国へ赴き、カウンターパートナーである現地の医療関係者とチームを組み、1週間程度の医療活動をおこなうのが基本的なスタイルとなっている。

ベトナムの首都ハノイから車で4時間北へ行った町の病院での白内障手術ベトナムの首都ハノイから車で4時間北へ行った町の病院での白内障手術

10名程度のチームで、1日に100名程度の患者さんの治療をおこなう。日本では「白内障で視力が0.7に落ちたから」と手術するケースもあるが、途上国で同程度の患者さんを集めてしまうととても手術しきれない数になってしまう。
実際、ベトナムのカンボジア国境に近い村で、白内障患者を「視力0.1以下」という条件でスクリーニングしたら270人も残ってしまったことがあった。そこで、視力0.06以下にしたところ約半分までに減り、やっと処置が始められたという。

ベトナムとカンボジアからは、ファイトフォービジョンの活動ぶりが評価され、今も継続的に要請がある。ベトナムは、近年急速に発展を遂げ、インフラの整備が進んでおり、首都ハノイなどでは医療援助などは必要がない状態だというが、地方ではまだまだ援助の手が必要とされているのだ。

「ベトナムは社会主義国なので、地方に行っても国立病院があります。ただ手術室はあっても、眼科の手術ができる医師が不足しているため、われわれが白内障手術に必要な機器や薬品、人工レンズなどの医療物資を持ち込んで、手術をしています」

患者と握手を交わす藤島理事長患者と握手を交わす藤島理事長

巡回診療が終わると、現地の人びとからは持参した手術機器などを「置いていってほしい」と懇願されることも多いというが、「置いていってもメンテナンスができないので錆びたり、光学機器などはレンズにカビが生えたりして、すぐに使えなくなってしまうんです。ハノイの国立病院などにも、日本から寄贈された立派なレントゲン車があるが、パンクはしているし、診療放射線技師がいないため、利用されていないのが現状」と、ハード面だけを援助しても、使いこなせる人や環境がそろわないと、実際には機能しないと指摘する。

そこで、ファイトフォービジョンでは、海外に出向く活動だけでなく、途上国の医師や看護師といった医療従事者をスキルアップのために受け入れる活動も毎年おこなっている。この受け入れは、ファイトフォービジョンを含め9つの団体が加盟する日本眼科国際医療協力会議(JICO)との連携によって実施しているものだ。

最初の受け入れは2011年で、ベトナムから眼科医、麻酔科医師、麻酔科助手の3名を招いた。このときは、主に未熟児網膜症疾患についての手術技術の習得を目指したもので、約1か月間日本に滞在し、数カ所の医療機関の協力を得て研修をおこなった。宿泊や交通、食事などの費用もすべて日本側で負担したという。

インドネシア、マカッサルからさらに車で7時間ほど離れた町の病院の手術室スタッフとインドネシア、マカッサルからさらに車で7時間ほど離れた町の病院の手術室スタッフと

さらに、2014年には、インドネシアのスラウェシ島マカッサルにあるハサヌディン大学で、現地の眼科医師らを対象に、最新の治療法を紹介したほか、白内障治療の実技などの講習会を開催。中米のコロンビアには白内障乳化吸引装置をはじめとした8台の機器を寄贈するなど、さまざまな方面に海外援助活動の輪が広がっている。

目が見えることが奇跡と感謝に変わる瞬間

藤島理事長は途上国での活動について、「でこぼこの道を何時間も揺られながら車に乗って、現地に着いても、清潔なトイレもないし、慣れない食事がほとんど。そのような環境に耐えられないと、医療援助ができないのが現状です。やはり、人助けの志がないと、やっていけないですね」と語る。

現地に飛ぶための飛行機代もすべて自腹で、海外で活動する期間に国内の病院でアルバイトすれば、その差はものすごく大きな金額になる。考え方によってはばかばかしく思う医師もいるかもしれない。では、なぜそこまでして人道援助をおこなうのかと聞くと、「失明状態で家族に手を引かれてやってきた患者さんが、白内障の手術をした翌日に眼帯を取ると、久しぶりに家族の顔を見ることができて、喜ぶわけです。そのあと、まるで神様を見るかのような面持ちで、われわれの手を握って感謝してくれるんです。そういう感謝の気持ちが肌をとおして伝わってくると、苦労や少々の環境の悪さなどは吹き飛んでしまいますね」と、藤島理事長は満足げに語る。

勤務する鶴見大学の教授室の隣には、眼科の医療資材や寄付された中古の医療機器がメンテナンスされた状態でストックされている勤務する鶴見大学の教授室の隣には、眼科の医療資材や寄付された中古の医療機器がメンテナンスされた状態でストックされている

失明状態では仕事もできないし、患者の家族もたいへんな状況にあることは想像に難くない。だから、視力が回復すると、奇跡だと思われてもおかしくないのだ。目が見えるようになれば働くこともできるし、経済的にも救われることから、患者本人だけでなく家族にとっての喜びも大きいのだという。

また、医療が届いていないような地域は、大自然が非常に豊かなところがほとんど。朝日が昇るときの景色など、壮大な自然景観に出会えることも魅力の一つだと藤島理事長。「スリランカで見たドラマチックな景観は忘れられない思い出です。霧がだんだんと晴れていって、緑の山々が姿を現すシーンなんて、とてつもなくきれいでした」

ファイトフォービジョンでは、今後も海外からの要請がある限りはこたえていきたいという。「テロや内戦など、生命の危険があるような地域を除けば、これからも医療協力や医療機器援助、それに海外からの受け入れによる教育研修など、協力できることはできるかぎり続けていきたい」と藤島理事長は締めくくる。

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