1. TMAT ― 母体の医療グループと連携して、海外、国内の災害時に緊急医療支援を実施 ― ~後編~

社会貢献ジャーナル

TMAT ― 母体の医療グループと連携して、
海外、国内の災害時に緊急医療支援を実施 ― ~後編~

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東日本大震災では長期にわたる支援活動を継続

避難所に出向き、巡回診療を行うTMATの隊員(東日本大震災)避難所に出向き、巡回診療を行うTMATの隊員(東日本大震災)
東日本大震災では、徳洲会グループとの連携により、全国から救急車を集結させ、活動にあたった東日本大震災では、徳洲会グループとの連携により、全国から救急車を集結させ、活動にあたった

TMATの活動の中で、もっとも長期にわたる活動となったのが2011年の東日本大震災である。3.11から約2か月間におよぶ活動となった。

阪神・淡路大震災のときと同様、まずは宮城県にあり、被災した仙台徳洲会病院の支援を行い、拠点化を図った。地震発生から2時間後には千葉県四街道から先遣隊が出動。その後各地から続々と救援チームが集結。仙台徳洲会病院は、翌日にはある程度の診療機能を回復する。
その後、津波被害の大きかった沿岸部の調査を4チームに分かれて実施。その調査を受け、宮城県の気仙沼市、石巻市、仙台市(若林区)・名取市、福島の相馬市の4か所を拠点に医療支援活動を開始した。

これまでに類を見ない広範囲かつ大規模な被害のため、何もかもが不足する事態だった。TMATでは、3月22日から被災地へ人材を送り込むために、マイクロバスによるシャトル便を運行させた。人員を一括管理し、効率的な配置を行うために、すべての支援者を東京に集め、そこから前線基地となった仙台との間に毎晩行きと帰りの2台のマイクロバスを走らせたのだ。

また、短期的な支援ではチームが入れ替わるごとに現状の説明や引き継ぎが必要となるため、かえって現地の行政や医療関係者に負担となってしまう。TMATでは、それを避けつつ、隊員の負担を軽減するために現地4日間の活動と移動を含めた6日間のローテーションを組み、日程が少しずつ重なるようにして順次同じ拠点に人を送り込むことで、継続的に支援をおこなう工夫をした。
これによって延べ5,781名の人員を送り込み、民間では最大規模の医療支援活動を展開したのだ。

「東日本大震災では、もっとできたのではという反省もあります。一番悔いが残るのは、福島の原発周辺地域です。放射線被害というのは、それまで想定していなかったですし、正直われわれもどうしたらいいかわからない部分がありました」(福島理事長)。災害医療は、場所もケースもさまざまで、地域によっては支援内容が異なる。そのたびに勉強しながらやってきた部分が多いという。

日本社会の縮図が現れた熊本地震

熊本地震でも、全国から多くのTMATメンバーが参加してくれた熊本地震でも、全国から多くのTMATメンバーが参加してくれた
早期に仮設診療所を開設するなどして、熊本地震では合計1,721名の診療をおこなった早期に仮設診療所を開設するなどして、熊本地震では合計1,721名の診療をおこなった

東日本大震災から5年が経過した2016年4月14日21時26分、熊本県地方で震度7の地震が発生。同日23時15分ごろには、福岡徳洲会病院からTMATの先遣隊6名が出発した。その後いったん撤収したものの、4月16日には、本震となった震度7の地震が発生する。

今回の熊本地震では、TMATは4月26日までの13日間で、125名(医師19名、看護師53名、薬剤師9名、事務職員やコメディカル44名)のメンバーを派遣。南阿蘇、御船町、熊本市南区の3つのエリアを活動地域とした。

災害の特徴としては、前震と本震の2回、震度7の地震が続けて起きたことで、一度ダメージを受けた家屋が本震で倒壊するなど被害が大きくなったことが挙げられる。また度重なる余震の恐怖から、車中泊する避難者も多数発生した。

TMATは避難所に仮設の診療所を立ち上げ、周辺の避難所での巡回診療を実施。また、2004年の中越地震を教訓に、車中泊の方のエコノミークラス症候群(DVT)予防のために、毎朝体操を呼びかけたり、エコー診断による血栓のチェックを実施したりした。DVTの兆候があれば、弾性ストッキングの配布もおこなったという。

これまでの国内災害ではTMAT独自で情報収集をして、活動場所・活動内容を決めていたが、今回は4月20日ごろから、県による救護団体の登録を行ったうえで活動する体制となった。TMATは2番目に登録を済ませ、以降は県の流れに沿って活動していった。たとえば被害の大きかった上益城郡では、そこで活動している各チームの代表者が夕方集まり、各自が状況報告をして、追加派遣などの調整がおこなわれた。

体育館へ避難した人々への巡回診療の様子(熊本地震)体育館へ避難した人々への巡回診療の様子(熊本地震)
衛生管理や環境整備も医療チームの大切な仕事ととらえ、積極的に取り組む(熊本地震)衛生管理や環境整備も医療チームの大切な仕事ととらえ、積極的に取り組む(熊本地震)

「私も2回現地入りをしたのですが、日本社会が高齢化したことを如実に感じました。在宅で介護を受けている高齢の被災者を老人福祉施設に受け入れていただいても、介護する人材がいないのです。これからは、災害時も医療だけでなく介護の援助もしないといけないと実感しました」と、福島理事長は指摘する。

また、高齢者ばかりではなく、妊婦や乳幼児を抱える家庭など、弱い立場にある人には、災害時にしわよせがくるため、避難所でも配慮が必要だと野口さんは強調する。避難所の開設時は、ノロウイルスなどに感染した人を隔離するための小部屋を確保したり、乳児のいる人や高齢者の人を優先的に入れるスペースを設けたりすることが重要だという。早くからよい場所を確保した避難者は、次の生活場所を担保されるかわからないなか、場所の移動を受け入れるのは難しい。そうした避難者の説得はたいへんだったというが、TMATでは2か所の避難所で配置換えや、衛生面を考慮したゾーニングを実施した。

「そういった説得も、地元の行政担当者がやるとぎくしゃくしてしまいます。われわれ外部の人間が間に入って悪者になればいいんです。しばらくしたらいなくなるわけですから。地元の行政に負担をかけないようにすることも支援チームの重要な役割です」と野口さんが言うように、TMATでは包括的に被災者の健康を維持していくことを心がけている。

活動を支える多様なスタッフの存在

TMATの強みとなるのは、やはり徳洲会グループとの連携だろう。人材面だけでなく、車両や物資の調達などもスムーズにおこなわれている。特に医療関係の物資は使用期限があるものばかりで、予算の厳しい民間のNPOが数多く備蓄するのは困難だ。国内の大規模災害で、大量に人材、物資を投入して急性期医療を一気におこなわなければならないケースでは、そのメリットは顕著に現れる。

「われわれのチームの特色としては、医師・看護師だけでなくコメディカルや事務職員など、あらゆる職種のスタッフが非常に多く携わっていることです。災害医療は、ロジスティックスにかかわる部分が重要ですから、事務職員が救急車両を運転するなど、医療行為以外の仕事をおこなうメンバーが多くいることが活動を成功させている秘訣です」と野口さんは胸を張る。

今後は、災害医療支援では、もっと早期に被災地に入ることや、活動の質も上げていきたいという野口さん。一方で、平常時の国際医療協力も視野に入れていきたいとも抱負を語る。忙しいさなかでも、ウェブサイトで被災地での活動をリアルタイムで更新することも、支援者の理解を得て、さらなる活動の輪を広げるために欠かせない活動だという。
今後のTMATの活躍に期待したい。

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