1. TMAT ― 母体の医療グループと連携して、海外、国内の災害時に緊急医療支援を実施 ― ~前編~

社会貢献ジャーナル

TMAT ― 母体の医療グループと連携して、
海外、国内の災害時に緊急医療支援を実施 ― ~前編~

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阪神・淡路大震災を契機に創設者の理念がスタッフに浸透

阪神・淡路大震災の救援活動では、巡回診療に役立つなど、グループ病院所有の救急車が活躍した阪神・淡路大震災の救援活動では、巡回診療に役立つなど、グループ病院所有の救急車が活躍した

国内・海外を問わず、地震をはじめとした大規模災害時に、緊急医療援助活動を展開しているのが「特定非営利活動法人TMAT」だ。母体は、71の病院を擁し、日本最大級といわれる医療グループを展開する徳洲会グループである。
設立のきっかけは、1995年1月の阪神・淡路大震災で被災した神戸徳洲会病院で、徳洲会グループの医師らが中心となり、TMATの前身であるボランティアグループ「TDMAT(徳洲会災害医療協力隊)」として救援活動を開始したことだった。

もともと徳洲会グループは、創設者である徳田虎雄氏が「生命だけは平等だ」という理念を掲げて医療活動を始めたのが出発点。離島や僻地医療、緊急・災害医療に重点を置いた病院運営で知られる。「いつでも、どこでも、だれでも最善の医療を受けられる社会」を目指しており、創設者の理念のもとに集まったスタッフたちが多く、緊急医療支援に赴くのは当然のように捉えられていたのだ。

阪神・淡路大震災の際には、いっせいに各病院が所有する救急車をかき集めて、患者さんの搬送や巡回診療を続けた。現在TMATの理事長を務める福島安義さんは、「災害の発生直後は病院で待っていても患者さんは来られないんです。あのとき徳田虎雄前理事長は『外に行かなきゃダメだ』と言った。そこからわれわれの活動がスタートしたのです」と振り返る。

受け入れ拒否からスタートした海外活動

TMATの前身時代から活動を見守ってきた福島安義理事長(右)と2007年から管理栄養士としてTMATの活動に携わり、現在は事務局運営を担当する野口幸洋さんTMATの前身時代から活動を見守ってきた福島安義理事長(右)と2007年から管理栄養士としてTMATの活動に携わり、現在は事務局運営を担当する野口幸洋さん
子どものケアにあたる医師(ハイチ大地震)子どものケアにあたる医師(ハイチ大地震)

TMATの海外での最初の活動は、1999年9月の921台湾大地震までさかのぼる。
「最初は拒否されて、受け入れてもらえなかったんです。それで、避難所を見て回ったら、トイレの衛生状態がひどくて、まず掃除から始めたところ、『そんなことまでやってくれるのか』と感謝されて、なんとか受け入れてもらえました」と福島理事長。災害医療では災害発生後72時間以内の急性期医療に注目が集まりがちだが、感染症予防の観点から、公衆衛生の啓蒙など地道な活動も大切だと指摘する。

その後2005年7月に、より幅広い支援の輪を広げるためNPOの法人格を取得。これまでにさまざまな国や地域で活動をおこなっている。

なかでも、2010年のハイチ大地震は、TMATの国際的な災害支援としては「大きな流れになった」と事務局を運営する野口幸洋さんは語る。地球のほぼ裏側と言ってもいいハイチまで、32名(医師12名、看護師8名、薬剤師2名、管理栄養士2名、調理師1名、コーディネーター7名)を派遣。手術を含め551名の被災者に診療を行うという実績を残した。それまではアジア圏での活動が中心だったが、活動の範囲を広げる転機になったのだ。

なお、30万人を超える死者が出たハイチ大地震では、海外からいろいろな救援チームが乱立しており、混乱状態で活動していたという。これ以降、規模災害時における国際医療支援では、そうした課題を解決するために国連が現地に窓口を設け、救援チームを登録制にして統括するという流れになったという。

海外においては原則、生活必需品や食料も含め、自分たちの手で持っていけるだけの医療機材、物資を持参。治安や言葉の問題もあるため、現地での活動をコーディネートしてくれるパートナーを見つけて一緒に活動をするという。また、安全を確保するために、本部と時間を決めて定期的に連絡を取り合うルールを設けている。携帯電話がつながらないような場合でも、衛星電話を携行して通信を確保する。

TMATの主な活動実績

被災地調査のため先遣隊が速やかに出動

では、TMATではどのような災害が発生した場合に活動が始まるのだろうか。その派遣基準は、海外の場合は死者が500名を超える自然災害、国内は震度6強の地震が発生した場合に、先遣隊を出動させるというものだ。ただ状況の変化もあり、現在、国内・海外ともに基準の見直しをおこなっている最中で、海外ではより大規模な災害へシフト、国内では地震以外の自然災害も視野に入れているという。

TMATでは、まず経験豊富なメンバーが先遣隊として速やかに出動する。現地調査のうえ、本格的な活動が必要となった場合は、TMATに登録した会員に募集をかけ、応募者から本隊メンバーを選出するというのが海外派遣の一般的な流れだ。これに対して、国内の大規模地震では、短期間に非常に多くのリソースが必要になることも多く、募集だけで対応できないケースも発生する。このようなときは、母体である徳洲会グループの協力のもと、人材面ばかりではなく車両を含めた物資の応援を仰いでいる。

活動を支える人材育成プログラム

「災害救護・国際協力ベーシックコース」ではトリアージ訓練を含め、実践的な講習内容となっている「災害救護・国際協力ベーシックコース」ではトリアージ訓練を含め、実践的な講習内容となっている

TMATでは、災害医療や国際協力に携わる人材を育成するために、教育活動にも力を入れている。2007年に「災害救護・国際協力ベーシックコース」を創設。これまで42回開催し、1071名(医師153名、看護師571名、薬剤師51名、その他296名)の修了者がいる(2016年5月現在)。

2日間で開催されるこのプログラムでは、トリアージなどの災害医療にかかわる基礎知識の習得や、衛星電話の操作方法といった実践的な訓練、さらに海外派遣の出発から帰国までの一連の流れをグループワークを交えながらシミュレーションする訓練がおこなわれている。実際に数多くの災害現場を経験したスタッフが講師となり、後進の育成にあたっているのだ。

開催は不定期だが、熊本地震の影響もあり、受講希望者が増えていることから、今年度は例年より多くの開催を計画しているとのこと。また、国内災害、海外災害を分けて開催することも考えているという。

後編では、東日本大震災ならびに2016年4月に起こった熊本地震を例に国内災害時のTMATの活動をご紹介する。

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