1. 日本医療開発機構(JMDO) ― 「施しではない現地に根付く医療の提供」カンボジアで医療教育を行い現地の自立を促す支援 ― ~後編~

社会貢献ジャーナル

日本医療開発機構(JMDO) ― 「施しではない現地に根付く医療の提供」
カンボジアで医療教育を行い現地の自立を促す支援 ― ~後編~

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北原理事長の夢に触発されて就職を決めた笠原さん

前編では日本医療開発機構(Japan Medical Development Organization、以下JMDO)の概要や活動内容、理学療法士としてカンボジアに赴いた亀田佳一さんの活動を紹介したが、後編では看護師・カントリーダイレクターとしてカンボジアで3年間の活動を行った笠原明日香さんの活躍を追ってみたい。

看護師である笠原さんはワーキングホリデーで海外に出た後に帰国した際、働きたい病院が見つからなかったと言う。
「亀田と同じように、どこも同じだと感じられて、また狭い視野の中で働くのか、と感じていました。私はもともと旅行が好きでカンボジアにも行ったことがあったのですが、派遣で他院にて働いていた時、北原国際病院で働いていた友人にカンボジアで事業をやるから来ないかと誘われたのが当院との出会いです」

その後調査目的でカンボジアに向かう友人に付いていくことになり、同院の北原茂実理事長に会う。理事長が思い描く夢や事業、活動を聞いて、面白そうだと思ったのが就職の決め手となった。
「正直、話が壮大すぎて、初めて聞いた時には半分も分からなかったのです(笑)。でもこんな夢を持つ大人に出会ったことがなくて、この人と一緒に働いていれば、きっといろんな経験ができるのではないかと考えて正式に就職を決めました」

施しではない医療提供を実現するための教育



NGOの事業として、2010年の調査段階からカンボジアに行き来していた笠原さんは、「施しではない現地に根付く医療の提供」という言葉の大切さを実感する。

翌年に日本で東日本大震災が起こった時、カンボジアの多くのNPO、NGO団体が日本からの寄付を打ち切られ、一気に立ち行かなくなった事態に遭遇する。そこに訪れていた患者の診療を断らざるを得なくなるところもあった。そして笠原さんはJMDO自体が事業性を持って、ある程度の活動を行えないといけないと考えるようになったと言う。

笠原さんは日本では看護師の経験しかなかったが、カンボジアでは初めてカントリーダイレクターとしての任を受ける。
「最初は難しいことだらけでした。日本でダイレクターとしての経験があったとしても、カンボジアという国がまだシステム的に整っていなかったので、日本感覚ではやれないことが多かったと思います」

NGO管理の仕事をするうえでは、登記をしたりレポートを出したりする仕事もあったが、まず統一されたルールさえなかった。誰に聞けば正しいことを教えてくれるのかさえ分からない状態だった。そしてシステムがどうなっているのかを聞き出すことから始めた。
カンボジアの状況や医療者のニーズなどをしっかりと把握し、「本当にカンボジアにとって必要な活動は何か」を見つめ直すことで活動のあり方を一新し、リーダーナース養成プロジェクトなどの実績を残して3年間の活動を終えた。

人材育成はやりがいを感じる活動



今回インタビューに応えてくれた亀田さんと笠原さんに、国際援助におけるやりがいを感じる瞬間を伺ってみた。2人の答えは同じ、教育・人材育成の場面だった。

「主にやってきたのが教育でした。JMDOのカンボジア人スタッフの理学療法士Veasnaさんが、現在は国立コサマック病院で現地スタッフに対する教育も行えるようになりました。カンボジアでの医療教育はすごく困難で、学校で教えていることは乏しく、整備された教育システムもないので病院に入ってからも誰も教えてくれないのです。
Veasnaさんはきちんと英語も話せない状況から始めたので時間もかかりましたが、教えれば分かってくれるのです。飲み込みは悪くてもすごく情熱があって、着実に成長していく姿を見ると、非常にやりがいを感じました。
日本でも教育を担当することがありますが、こんなに一人の人間につきっきりということはまずありません。やればできる、やってよかったと思っています」(亀田さん)


笠原さんは、国立コサマック病院のスタッフ教育の場面を語ってくれた。

「私たちが導入したリーダーナース養成プロジェクトでは、プログラムに参加した看護師たちが自分たちで病院の研修をしながら病院のありかたを変えていくというプロジェクトでした。
最初は給料が低いのに業務が増えることに対して否定的なスタッフが多かったのですが…。
プロジェクトが進むと、私がいくら直接言っても変わらなかったことが、研修を受けたリーダーたちがわずか3カ月で状況を変えたのです。
私が日本人だからできるのだと思われていたのでしょうか…。
今ではすごく協力的で、看護学生に対してもスタッフが指導するということは以前では考えられなかったのですが、自分たちで次世代を育成するという流れができたことがすごく良かったです」

リーダーナース養成プロジェクトでは前編で紹介した活動の三本柱の一つ「環境」の改善にも力を入れており、最初はゴミだらけだった廊下も、今ではゴミひとつない状態になった。
これは笠原さんが掃除をしたわけではなく、プログラムに参加したナースと研修生たちで変えたのだと言う。
以前はベッドシーツもなく、前の人の血が付いたむき出しのマットレスを使用していたのが、今ではベッドシーツを洗って干して、次の人のために敷くというシステムができた。
「スタッフの手で成功体験をつかむことができたし、私もすごくやりがいを感じました」

日本を救うため、医療の変革を目指す

最後に、亀田さんに今後の目標について伺った時の、とても印象的な一言を記しておく。

「日本の医療はいずれ立ち行かなくなってくるのが目に見えています。2030年問題ともよく言われますが、高齢者が増えて国民皆保険も持たなくなる。そうなった時に、社会の最低限のインフラである医療をどうやって提供するのかが問題なのです。当院の理事長は、本気で日本を救おうとしています。日本の医療を変えようとしています。その言葉に、僕も自分のできることで協力できればいいと思っています」

現在はカンボジアでの事例しかないが、この成功例がさらに広がり、JMDOが掲げるVISION「世界中の医療を提供する人、医療を受ける人が共に幸せになれる、私たちは、そんな世界をつくります」が実現されることを期待したい。

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