1. ワールド・ビジョン・ジャパン ―「この子を救う。未来を救う。」チャイルド・スポンサーシップを核とした支援活動 ― ~後編~

社会貢献ジャーナル

ワールド・ビジョン・ジャパン ―「この子を救う。未来を救う。」
チャイルド・スポンサーシップを核とした支援活動 ― ~後編~

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ベトナムでの妊産婦・新生児健康改善事業

©World Vision 一般企業での経験を存分に活かし活躍する市山さん©World Vision
一般企業での経験を存分に活かし活躍する市山さん

©World Vision 助産師による啓発活動の様子(ベトナム)©World Vision
助産師による啓発活動の様子(ベトナム)

前編では多岐に渡るワールド・ビジョン・ジャパン(World Vision Japan、以下WVJ)の活動について紹介したが、後編では個別の活動に触れてみたい。まずはベトナムでの妊産婦・新生児健康改善事業を取り上げる。

1986年のドイモイ(刷新)政策導入後、めざましい経済発展を遂げたベトナムだが、都市部と農村部の経済・生活格差はさらに広がっているという。
特に北部の山岳地帯の少数民族が住む地域では、「2015年までに妊産婦の死亡率を1990年の水準の4分の1に引き下げる」という国連ミレニアム開発目標の達成も危ぶまれているところだ。

ベトナム北西部に位置するディエンビエン省は国内58省のうち3番目に貧困率が高く、保健施設は資金不足のため政府の基準を満たしていないところが多いうえに交通アクセスが悪く、言葉や文化の違いから住民の保健サービスの利用率が非常に低い地域だ。
「ベトナムでは「保健カード」を持っていれば、誰でも無料で保健サービスを利用できるそうです。しかし、遠隔地に住む人たちは保健施設がある場所まで行くことが難しいのが現状です」(WVJマーケティング第2部 コミュニケーション課 広報担当 市山志保さん)

このような状況を受けて、WVJは2012年12月から外務省の日本NGO連携無償資金協力と一般の方々からの募金により、当地で妊産婦・新生児の健康改善事業を行っている。
具体的には、保健施設の改善、保健スタッフの妊産婦・新生児ケアに関する知識・技術の向上、地域住民の妊産婦・新生児ケアの知識の普及・行動変革などだ。

現地の人々から学びながら続ける支援活動

©World Vision ベトナム駐在スタッフ・木戸梨紗さん©World Vision
ベトナム駐在スタッフ・木戸梨紗さん

事業開始から現地に赴いているWVJスタッフ・木戸梨紗プログラム・オフィサーの報告によると「現在でも多くの女性が保健省で推奨されている最低4回の産前検診を受けず、7割以上の妊婦が自宅出産を行っている。こうした出産には出血過多、感染症、新生児仮死などのリスクが伴う」という。

WVJは保健センターの分娩室の建設や産科備品の供与、助産師や医師への研修を行い、村落では地域住民に向けた啓発活動などを行っている。しかし木戸さんはまた、「事業を実施していく中で、最も支援が必要な場所ほど受け入れ体制が不十分なため、支援とその効果が限定的になってしまうと感じることがある。たとえば、『村落出産介護者』の研修候補生を選出する際には、より支援が必要な遠隔地の村ほど、条件を満たす人物を見つけることは難しかった」と続ける。

しかし一方で、現地の啓発活動に携わる人々が研修で学んだスキルをさらに工夫し、前よりも自信を持って、より楽しみながら学ぶことができていることを見て、自身もまた学ぶことが多く励みになるという。
「何がない、何ができない」だけではなく、すでに自分たちが持っているもの、与えられているものの価値を再確認し、限られた資源と機会を最大限に活用する。その上で、自分たちの歩幅に合った発展を目指して教訓を一つ一つ丁寧に積み上げていくことが開発には重要であると木戸さんは指摘し、地域住民と一緒に考え、お互いに学び合う機会にしたいと抱負を語る。

アフガニスタンでの保健・医療従事者の再養成プログラム

WVJの支援活動は、上記のベトナムの事業のように日本からのスタッフが駐在することもあるが、多くの場合は日本から出張ベースで現地に赴いて事業の管理を行うことが多い。アフガニスタンの場合は、政情が不安定なため日本からの駐在員を置くことはせず、日本から事業を管理し、現地スタッフと密に連絡をとりながら進めている。

アフガニスタンでは断続的に続いた紛争の結果、国内の医療施設の約35%が破壊され、医師や看護師の多くが国外に流出した。保健・医療従事者の絶対的な不足により、特に妊産婦死亡率が世界最悪と報告された時期もあり、母子保健分野において適切な研修を受け、技術を身に付けた保健・医療従事者の養成が急務となっていた。

こうした状況を改善するためにWVJは同国西部のヘラート州で、助産師、看護師を中心とした保健・医療従事者への再養成研修およびヘラート州保健科学院(Institute of Health Sciences、以下IHS)の助産師・看護師養成プログラム受講生への臨床実習の実施、およびIHSの保健・医療従事者の情報管理方法の整備とIHSのデータ管理・分析能力向上のための支援を行っている。

小さな命を守るために、現地で頑張る人たちを支援する

©World Vision 実際に分娩で使う器具の使い方を説明している様子(アフガニスタン)©World Vision
実際に分娩で使う器具の使い方を説明している様子(アフガニスタン)

保健・医療従事者の再養成研修プログラムでは、ヘラート市近郊のクリニックから一定基準を満たした女性たちを選出した。プログラムに応募してくる人の多くは、家族や親戚を亡くした人たちだ。

WVJのプログラム・オフィサーとしてアフガニスタン事業を担当する平井さつきさんの報告によると、アフガニスタンの高い妊産婦死亡率の背景にあるもう一つの要因は現地の慣習だという。伝統的に良いとされていることも、現代の医学では必ずしもそうではないため、地方の村に住む人々に理解してもらい、女性が安全に出産できるようサポートすることも、助産師の重要な仕事だ。

「この事業を担当して、女性が妊娠して無事出産し、その子どもが健康に育っていくことがいかに奇跡的かということを、私自身の育児を通して実感している。アフガニスタンでは、妊産婦死亡率だけでなく、乳幼児死亡率や子どもの栄養不良も深刻だ。現地の子どもの写真を見たとき、3歳半の息子と同年齢に見える子が、実際は小学校入学くらいの年齢だとわかったときには、栄養不良が蔓延していることにショックを受けた」(平井さん)

文化や社会背景が違うアフガニスタンでの事業を、現地に行くことなく管理することはチャレンジも多いというが、平井さんは頑張る彼女たちを応援する活動ができることにとてもやりがいを感じている。
「小さな命を守る仕事を、彼女たちが誇りを持って続けていけるようこれからも応援したい」(平井さん)

小さな支援を大切にするWVJ

©World Vision お母さんたちを集め、栄養のある食べ合わせを絵で教えている(ルワンダ)©World Vision
お母さんたちを集め、栄養のある食べ合わせを絵で教えている(ルワンダ)

広報担当の市山さんはルワンダへの視察の際、支援者インタビューを行った時の体験をこう語る。
「地域のお母さんに話を伺った時、ワールド・ビジョンの教えで改善できた生活環境の一つは、栄養のある食事を食べるようになったことです、と言われたことがあります。ルワンダではもともとお昼の一食だけで、それも栄養源が芋だけ、ほうれん草だけのような食生活だったらしいのです。
でもそれだと栄養が足りない、芋とほうれん草を一緒に煮込むなど、栄養価が高くなるような食事の作り方を教わったそうです。すると自分の栄養も良くなったし、生まれてくる子どもの栄養も良くなったと。そういうことは教わらないと分からないのですね…」

私たち日本人が当たり前と思っていることが、当たり前ではない世界がある。こんな少しの支援では何の役にも立たないなどという考えは間違っていたのだ、ということをWVJの取材を経て学ばせてもらった。

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