1. ワールド・ビジョン・ジャパン ―「この子を救う。未来を救う。」チャイルド・スポンサーシップを核とした支援活動 ― ~前編~

社会貢献ジャーナル

ワールド・ビジョン・ジャパン ―「この子を救う。未来を救う。」
チャイルド・スポンサーシップを核とした支援活動 ― ~前編~

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「すべての人々に“何もかも”はできなくとも、誰かに“何か”はきっとできる」

©World Vision バングラデシュの支援地域の子どもたちとWVJ片山信彦事務局長(2003年)©World Vision
バングラデシュの支援地域の子どもたちとWVJ片山信彦事務局長(2003年)

©World Vision 啓発活動に参加するお母さんと子どもたち(ベトナム)©World Vision
啓発活動に参加するお母さんと子どもたち(ベトナム)

ワールド・ビジョン(World Vision)は、アメリカ生まれのキリスト教宣教師、ボブ・ピアスが1950年に設立した国際NGOだ。第二次世界大戦後の混乱時に中国に渡り、「すべての人々に何もかもはできなくとも、誰かに何かはきっとできる」と考え、1人の少女の支援を始めたのがきっかけだという。

当初、ワールド・ビジョンの支援先には戦後の日本も含まれていたが、高度成長期を経て日本も支援を受ける側から支援をする側に移り、1987年にワールド・ビジョン・ジャパン(World Vision Japan、以下WVJ)が設立されることになる。

88年、WVJの「チャイルド・スポンサーシップ」による支援活動が、バングラデシュで始まった。71年の独立後、民主化への過程における政治的混乱時に始まったこの支援は、地域や形を変えながら、現在でもカルマカンダ、フルバリアなど5地域で、地域開発プログラムとして水衛生、保健、栄養、教育、生計向上など、子どもの生活環境改善を目指すプロジェクトが行われている。

そして94年のルワンダ内戦後の緊急人道支援、98年のボスニア紛争による帰還民支援、2004年のスマトラ沖地震・津波緊急援助活動、2011年の東日本大震災緊急復興支援などの緊急人道支援も実施。WVJの支援活動は世界中の支援を必要としている地域へと広がっている。

子どもたちのため、さまざまな形で支援活動を実施

©World Vision 小児検診を受ける子どもたち(アフガニスタン)©World Vision
小児検診を受ける子どもたち(アフガニスタン)

©World Vision 模型を使い分娩の方法について学んでいる様子(アフガニスタン)©World Vision
模型を使い分娩の方法について学んでいる様子(アフガニスタン)

WVJの支援活動は、開発援助、緊急人道支援、アドボカシー(Advocacy)の3つに分けられる。

開発援助とは、支援先の子どもたちが健やかに成長できるように地域の自立を目指すもので、チャイルド・スポンサーシップを核として行われる。支援事業は水衛生、保健、栄養、教育、生計向上など幅広い分野で、長期的な活動となる。

緊急人道支援は、災害発生時の緊急支援や、紛争などによって生じる人道支援のニーズに応えるもので、食糧、衣料、テントなどの支援物資の配布、人々の精神的ケアなどが行われる。緊急時が過ぎた後も、人々の生活基盤への復興支援が継続されるケースが多い。

アドボカシーとは、貧困や紛争の原因について声をあげ、問題解決のために政府や市民社会に働きかける活動だ。世界が子どもたちにとって安全で平和な場所になることを目指し、「子どもの権利」遵守を促進するための活動や、子どもたちを守ることが国際政治の中で優先事項となるよう、国際会議に向けた署名キャンペーンやロビイングなどを行う。

「開発だけではなくアドボカシーも行うことで、貧困などの根本原因を絶ち、支援の成果が持続することを目指しています。政策提言書を出したり栄養関連の議員連盟を立ち上げたりする政治的な活動や、みなさんに貧困の問題を知っていただくためのキャンペーンなどを積極的に実施しています。」(WVJマーケティング第2部 コミュニケーション課 広報担当 市山志保さん)

世界中の子どもたちの、健やかな成長を目指して

WVJの活動が目指すものは、子どもたちの健やかな成長(Child Well-being)だ。
支援を通して子どもたちが健康を享受し、教育を受け、守られ、愛されていることを感じ、さまざまな機会に参加して成長できるように目標を立て、その達成度を確認しながら活動は続けられる。

「私がWVJに入る時に、団体が掲げるメッセージの中で一番心に響いたのは『この子を救う。未来を救う。』という言葉でした。子どもと未来がストレートに心に入ってきたこともありますが、大人になって私一人くらいが行動起こしても何にもならないと思っていたところ、この子を救うということならば自分にも何かできるのでは、と感じました。」(市山さん)

このメッセージのもと、2014年度にWVJは総計33カ国で137の事業を行い、開発援助は24カ国で98事業(うちチャイルド・スポンサーシップは23カ国で57事業)、緊急人道支援は17カ国で39事業を展開する、日本でも有数規模のNGOへと成長した。職員数は82人で、2015年11月末日現在、海外に駐在している職員は7名だ。
「職員のうち、医療のバックグラウンドがあるものは一人もいません。一方で開発援助を海外の大学院で勉強したものが多いのが特徴です。人権や公衆衛生を専攻したものもいます。」(市山さん)

この子、を救うためのチャイルド・スポンサーシップ

WVJの活動の核となるのは、チャイルド・スポンサーシップだ。月々4,500円は開発支援事業のために使われるが、特定の子どもやその親にお金が支払われるわけではない。その子どもが住む地域全体の教育、保健衛生などの支援活動に資金が使われるのだ。地域全体が改善されることで、子どもの未来もよくなるという考え方である。支援内容はスタッフが現地に赴きニーズを探り、地域との関係性を十分に確立させてから行われる。

一方で、支援者は特定の子ども“チャイルド”と一対一の関係を築くことができる。年に1度チャイルドの成長報告が届き、手紙のやりとりをすることもできる。また希望すれば支援地を訪問してチャイルドに会うことも可能だ。
「実際に資金がどう使われているのか不安に思われていた支援者の方も、現地を訪れて子どもと対面して、地域の人々から感謝の言葉をもらうと、自分の支援はほんの小さなものだと思っていたけれど、チャイルドや地域の方々にとってはとても大きな意味を持っているのだ、と感じられるようです。」(市山さん)
このような機会を支援者全員に作ることは難しいと市山さんは続ける。しかし継続性のある支援こそ意味があり、地域が自立する状態にしないと意味がないということを理解してもらうために、チャイルド・スポンサーシップの広報活動にはさまざまな工夫が凝らされているのだ。

専門知識がなくても、国際協力活動はできる

©World Vision/Kosuke Mae 定期的な健康診断が子どもの健康を守る(ルワンダ)©World Vision/Kosuke Mae
定期的な健康診断が子どもの健康を守る(ルワンダ)

©World Vision 市山さんが個人的に支援していた子どもとルワンダで会う©World Vision
市山さんが個人的に支援していた子どもとルワンダで会う

今回取材に協力していただいた広報担当の市山さんが、国際協力に携わりたいと考えるようになったきっかけは、子どもの頃に見たテレビだった。ルワンダのジェノサイドによる難民キャンプの映像を見た時、同い年の子どもが写り、両親を殺されたというナレーションが流れたという。
「自分は両親の愛情に包まれてぬくぬくと暮らしてしているのに、この子は一人ぼっちになったんだ、ってすごく気になって……」
その頃から、国際協力といえば国連だと考え、将来は国連で働きたいと思っていた市山さんだが、やはり大人になると普通に働いた方がいいのかなと考えるようになり、一般企業に就職する。

しかし、2011年の震災後に考えが変わる。自分は何のために東京に出てきて働いているのか、自問自答した。タイミングを逸し、ボランティアにも行けなかったという。
「国際協力がやりたいと言っていたくせに、何もできない自分の弱さを感じました。それでも自分ができる何かをしなきゃ、という気持ちが強まり転職を決意して、たまたま広報の募集をしていたWVJに縁あって入団することになりました。
WVJで働き始めて驚いたことは、スタッフがみんなすごく仕事熱心だということ。仕事の義務感ではなく、使命感で働いている人が多くて、こういう環境で働けることを有難いと思っています。」

市山さんは一般企業での経験を活かして広報として活躍し、海外への出張も行うようになった。そして奇しくも、国際協力に興味を持ち始めたきっかけとなったルワンダへ行くことに。
「本当にたまたまなのですが、縁を感じました。」
現地で聞いて見てきたことを糧にし、市山さんは広報担当としてWVJの活動を広めていく。

後編では、ワールド・ビジョン・ジャパンが行う開発援助の事例として、ベトナムとアフガニスタンで行われている事業を紹介する。

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