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社会貢献ジャーナル

人間としての尊厳の回復と維持を目指してネパールで展開する
口唇口蓋裂医療チーム派遣事業ADRA Japan ~前編~

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100年近い歴史を持つ、キリスト教精神がベースの国際NGO

アドラ・ジャパンの活動を支える橋本氏と世良田医師アドラ・ジャパンの活動を支える橋本氏と世良田医師

ADRA とはAdventist Development and Relief Agencyの略で、Adventistとはキリスト教の一派を指す。キリスト教精神を基盤とした団体だが、宗教、人種、政治の区別は一切せず、「人間としての尊厳の回復と維持」の実現を使命としている。
その歴史は古い。1918年に牧師たちが信徒とともに、第一次世界大戦で被害を受けた欧州の人々に支援物資を配布したことが原点だ。実は日本も、第二次世界大戦後に現在の価値にして10億円相当の援助を受けている。

1985年には日本支部としてADRA国際援助機構が誕生し、2000年にADRA Japanと名称を変更。当初、スタッフは2人のみで募金活動がメインだったが、現在はミャンマー、ネパール、エチオピア、ケニア、ジンバブエ、パラグアイ、レバノンに日本人スタッフが駐在し、現地と協力しながら必要な支援を提供している。

あらゆる問題の解決に向けて、多方面からアプローチ

ADRA では次の5つの活動を柱としている。あらゆる要因やニーズが絡み合う問題に対処するため、1つの事業に対して複数の支援を同時に行う場合もある。

【食糧確保】
毎年4,000万USドル相当の食糧を世界各地で配給。さらに荒れ地の修復方法や食糧生産法の研修など、食糧自給に向けた支援も行う。
活動の一例:干ばつ対応力強化事業(ケニア)

【経済開発】
起業のサポートや、地方経済を活性化させる経済開発プログラムを行う。
活動の一例:農業開発支援事業(ラオス)

【災害救援・緊急援助】
世界約120ヶ国に支部を持つADRAは、災害地近くに迅速に対策本部を設置できるのが強み。物資の配給に加えて長期的な復興支援も行い、生活再建の手助けをする。
活動の一例:東日本大震災被災者支援事業(日本)、地震被災者支援(ネパール)

【教育】
子供たちへの初等教育、成人向けの読み書き・算術の訓練、教師の派遣などを実施。一人ひとりの教育レベルを上げ、社会全体の底上げを目指す。
活動の一例:教育環境改善支援事業(アフガニスタン)

【保健衛生・医療】
医療チームの派遣や衛生管理の定着など、その地域に必要な支援を独自に調査し、提供している。
活動の一例:口唇口蓋裂医療チーム派遣事業(ネパール )

ここからはネパールにおける口唇口蓋裂医療チーム派遣事業にスポットを当て、ADRA Japanの理事・事業部長である橋本笙子さんにお話を伺う。

「その子に乳をやるな」と言われていた母親

口唇口蓋裂の子どもが生まれる割合は日本もネパールも変わらない口唇口蓋裂の子どもが生まれる割合は日本もネパールも変わらない

「この事業が発足したきっかけは、1989年から始まったネパールへの学生ボランティア派遣です。保健所の建設や手洗い習慣の啓発活動を行う傍らでニーズ調査を行ったところ、口唇口蓋裂の治療のニーズが高いことが判明しました」(橋本さん)

口唇口蓋裂とは、先天的に上唇や上あごが裂けている症状のこと。日本でもネパールと同様、500人~700人に1人の割合で口唇口蓋裂の子どもが生まれている。
しかし日本とネパールとでは、その後の人生が異なる。日本ではほぼ全員が乳児期に手術を受けられるが、ネパールで医療の恩恵にあずかれるのはごく一部の富裕層のみ。農村部の貧しい人々などは、治療ができることすら知らずに一生を終えてしまう。

生活を送る中での苦悩も並大抵ではない。充分に食事が摂れず低栄養状態に陥る、発語ができない、などの身体的な苦痛に加え、精神的にも多大なダメージを受ける。学校でいじめられたり、近所から好奇の目で見られたり、さらには家族や親族からも「母親の前世の行いが悪かった」と言われたりと、いわれのない差別を受けることは珍しくない。
成人しても、結婚や就職ができない、働き口を見つけても給料が半分しかもらえないなど、ネパールの口唇口蓋裂患者の苦しみは一生続く。実際に、手術を受けに来る患者とその家族は、思いつめた暗い表情の人がとても多い。


お母さんは手術が終わるまでほとんど口を開かなかったお母さんは手術が終わるまでほとんど口を開かなかった
手術を受けたナムナちゃんとお母さん手術を受けたナムナちゃんとお母さん
患者さんの笑顔が最高のプレゼント患者さんの笑顔が最高のプレゼント

橋本さんは、口唇口蓋裂で生まれた女の子、ナムナちゃん(7カ月)とその母親について話してくれた。
「ナムナちゃんの住む村は、陸の孤島のようなところ。バス停まで丸1日かけて歩き、さらに数日間バスに揺られて私たちのもとへ来てくれました。実はナムナちゃんのお母さん、生まれてこの方、一度も村を出たことがなかったのです。村の中のことしか知らず文字も読めない30歳前後の女性が、外の世界に出るのにどれだけの覚悟が必要だったか。私もひとりの母親として、娘を思う彼女の気持ちが痛いほどわかりました」

母親の表情は暗く、手術を終えるまで口を閉ざしたままだった。しかし手術が成功すると笑顔を見せ、スタッフにこう話したという。

「これからは、堂々とお乳をあげることができます」

7カ月もの間、家族から「この子は死なせたほうがいい」と言われ続けていたのだ。しかしそんなことができるわけもなく、家族に隠れて授乳をしてきたという。
これからは、家族の一員として娘を受け入れてもらえる。愛する娘が理不尽な差別を受けることはない。そんな希望と喜びにあふれる表情をみるたび、橋本さんはこの事業を続ける意義を実感する。

患者とその家族の笑顔が、スタッフのモチベーションの源となっているのだ。

後編では口唇口蓋裂医療チーム派遣事業の詳細を紹介し、約20回に渡り当事業に参加している世良田和幸医師にお話を伺う。

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