1. AAR Japan[難民を助ける会] ― 政治・宗教・思想に偏らない、日本生まれの国際NGO ― 困ったときはお互いさま、の精神 ~前編~

社会貢献ジャーナル

AAR Japan[難民を助ける会] ― 政治・宗教・思想に偏らない、日本生まれの国際NGO ―
困ったときはお互いさま、の精神 ~前編~

「日本人の善意」を示そう

AAR Japan理事・支援事業部長 名取郁子さん(アンゴラ)AAR Japan理事・支援事業部長 名取郁子さん(アンゴラ)
創設者・相馬雪香前会長創設者・相馬雪香前会長

AAR Japan(Association for Aid and Relief, Japan、日本語組織名:特定非営利活動法人 難民を助ける会)は、1979年、もともとインドシナ難民を支援するために立ち上げられた。その後活動の幅を広げ、2015年11月現在は16ヵ国で活動。国連に公認・登録された国際NGOである。

創設者の相馬雪香さんは設立前年にカナダの友人から次のような手紙をもらった。
「ベトナムから遠く離れているヨーロッパでさえも難民は受け入れている。にもかかわらず、至近距離にある日本はほとんど受け入れようとはしない。日本人の心は冷たい」
この文面が、“憲政の父”と言われる尾崎行雄の三女であり、日本初の英語の同時通訳者でもあった相馬さんの心を動かした。
「他国の人がそこまで言うなら、そうではないところを見せよう。日本人の心には古来、脈々と善意が伝わっているんだ」
そう思い立ち、AARの前身である「インドシナ難民を助ける会」の設立を決意した。

当時、新聞社からの取材で運営の費用はどうするのだと聞かれたが、「日本人が一人一円ずつ出せば、1億2000万円になります。その日本人の温かい心が、会の活動を確実にしてくれます」と答えた。

AAR Japanが目指す社会

AAR Japanは活動の基本方針として、一つのビジョンを定めている。
“一人ひとり、個性をもった多様な人間が、自然と共存しつつ、人間の尊厳をもって、共生できる社会”を目指すというものだ。

それぞれの言葉の意味は:
“一人ひとり”とは、いたずらに受益者・寄付者数を増やすことを目指すのではなく、受益者・寄付者・職員・ボランティア一人ひとりの生活に、明確な変化(変革)をもたらすことを目的として活動すること。
“個性をもった多様な人間が”とは、障がいの有無、文化や宗教の違いなど、人間の多様性を重視すること。
“自然と共存しつつ”とは、常に自然に配慮した活動を心がけ、自然を破壊した援助活動を行わないこと。
“人間の尊厳をもって”とは、全ての人の基本的人権が保障される社会を目指すこと。
“共生できる社会”とは、個性をもった多様な人間が、お互いの存在を認め共に生きる社会のこと。
このビジョンを実現するために、AAR Japanは幅広い分野での活動を続けている。

ビジョンを実現するための5つの重点活動分野

AAR Japanは、緊急支援、障がい者支援、地雷・不発弾対策、感染症対策、提言・発信の5つを重点活動分野として定めている。それぞれの分野の詳細は、以下のようなものだ。

【緊急支援】
紛争や災害が起こった際の、難民や被災者への緊急支援。支援後は災害前と比べてより良い社会を目指し、復旧支援を継続する所が特徴的である。2015年11月現在も継続されている緊急支援のうち、シリアとネパールにおけるものを紹介する。

トルコ・スルチュ郡でシリア難民に物資配付(2014年)トルコ・スルチュ郡でシリア難民に物資配付(2014年)

(シリア難民支援)
2011年3月の反政府デモから拡大したシリア内戦を逃れ、隣国トルコに避難するシリア難民を支援するため、翌年10月より現地協力団体のSTL(Support To Life)とともに、トルコ南部でシリア難民支援を実施。食料や生活必需品の配付の他、長期化する避難生活を支えるためのコミュニティセンターを運営。生活情報を提供し、現地語であるトルコ語の語学教室などを開催している。また、生まれつき障がいのある人や戦闘に巻き込まれて手足が不自由になった人のため、障がい者支援を行っている。

(ネパール地震被災者支援)
2015年4月のネパール地震を受け、首都カトマンズの西にある、山間部のダーディン郡で支援活動を行っている。同郡タサルプー村の全1299世帯の住民に、食料、テント用資材などの生活用品を配付。その後も同郡で、子どもたちが安心して勉強できるよう、仮設校舎の建設を進めている。
この他にも、東日本大震災被災者支援、南スーダン難民支援、アフガニスタン難民支援が、現在も継続して行われている。

【障がい者支援】
設立時から、難民の中でも特に困難な状況にある障がいのある人々の支援を行っている。

ミャンマー・ヤンゴンの障がい者のための職業訓練校(2013年)ミャンマー・ヤンゴンの障がい者のための職業訓練校(2013年)

(職業訓練学校の運営)
ミャンマーでは、障がい者のための職業訓練校を運営している。美容・理容、洋裁、コンピューターの技術を身につけるほか、寮生活を通じて訓練生が社会性を身につけ、自分に自信を取り戻して、経済的・社会的に自立した生活を送れるように支援している。

(障がい児教育)
カンボジア、タジキスタン、ハイチでは、障がいの有無に関わらず子どもたちが一緒に学ぶ「インクルーシブ教育」を推進している。学校のバリアフリー化や、障がい児の受け入れに慣れていない学校の先生への研修などを行っている。

【地雷対策】
対人地雷は、一度埋設されると半永久的に効力を保ち続ける「悪魔の兵器」。クラスター爆弾などの不発弾も、地雷と同様に一般市民に甚大な被害を引き起こしている。AAR Japanは、アフガニスタン、スーダン、ウガンダなどで、地雷や不発弾の危険から身を守る教育活動や被害者支援を続けている。

【感染症対策】
AAR Japanの活動現場には、エイズなどの感染症で苦しむ人々が大勢いる。感染症対策も重要な活動の柱と位置づけ、ザンビアとスーダンで支援を行っている。

【提言・発信】
以上のような活動についての理解を促進するため、イベントや講演などを通して啓発活動に積極的に取り組む。より多くの人々が国際的な課題に関心を持ち、自分にできることから活動に参加してくれることを目指している。

積極的な啓発活動で理解を進める

2011年からは毎年秋冬限定でチャリティチョコを販売2011年からは毎年秋冬限定でチャリティチョコを販売

啓発活動においては、AAR Japanの名前を知らなくても、なんとなく活動内容は聞いたことがある、というものが多い。
例えば、地雷問題についてより多くの人に知ってもらうために、過去には絵本「地雷ではなく花をください」を刊行。現在もパネルの貸し出し、講演などの活動を積極的に行っている。
対人地雷の廃絶を国際社会に訴え、1997年にノーベル平和賞を受賞したICBL(地雷禁止国際キャンペーン)の一員でもある。

2001年には東京放送(TBS)、ワーナーミュージック・ジャパン、日音とともに「地雷ゼロキャンペーン委員会」を設立。ミュージシャンの坂本龍一さんの呼びかけで、国内外のアーティストがキャンペーンのテーマソング『ZERO LANDMINE』を共同制作した。
CD販売の収益や寄付などにより、2006年3月までにカンボジア、アンゴラ、グルジアとモザンビークで計3,075,436平方メートルの地雷原が安全な大地に生まれ変わっている。
また、マルセイバターサンドで有名な六花亭の協力を得て毎年、秋冬限定でチャリティチョコレートを販売するなど、アイデアを効果的に実現する力には感服する。

後編は、AAR Japanの理事・支援事業部長の名取郁子さんに、自身の海外支援活動への取り組みと想い、AAR Japanの将来展望について伺う。

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