1. フレンズ・ウィズアウト・ア・ボーダーJAPANの願い「子どもたちの笑顔を守りたい」を実現するための長期的な支援 ~後編~

社会貢献ジャーナル

フレンズ・ウィズアウト・ア・ボーダーJAPANの願い
「子どもたちの笑顔を守りたい」を実現するための長期的な支援 ~後編~

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アジアの医療支援において象徴的な存在の赤尾看護師

アジアの恵まれない子どもたちの医療支援を行うフレンズ・ウィズアウト・ア・ボーダーJAPAN(Friends Without A Border Japan)の活動を取り上げるにあたり、創設者の井津建郎さんに加えて、団体の副代表であり現地で看護師としても活躍している赤尾和美さんにも触れておきたい。

赤尾さんは日本の看護学校を卒業し、正看護師免許を取得して臨床経験を経てハワイに渡る。ワイキキ保健センターでHIV専門クリニック、HIV専門団体にてHIV/AIDS予防教育担当者として勤務していた。
カンボジアにフレンズ・ウィズアウト・ア・ボーダーのアンコール小児病院が設立された1999年、ハワイでお世話になっていた方に「病院立ち上げに際し教育的立場として看護の教育をしてもらえないか」と誘われ、最初は2カ月間のボランティアの予定でカンボジアに赴いたという。


ラオ・フレンズ小児病院スタッフ集合ラオ・フレンズ小児病院スタッフ集合

そこで見たカンボジアの子どもたちの現状はあまりにも厳しく、心を打たれた赤尾さんはアンコール小児病院で働くことを決意する。その後2000年から13年までの長期に渡って、HIVと訪問看護の現地スタッフとして従事することになる。アジアの支援を行う日本人の医療従事者としては異例の長さだ。メディアにも度々取り上げられるほどアジアの医療支援において注目の人となっている。

病院スタッフとして働いていた赤尾さんは、09年からフレンズ・ウィズアウト・ア・ボーダーJAPANの副代表を兼任することとなった。その後赤尾さんは病院の自立を見届け、フレンズ・ウィズアウト・ア・ボーダーの次の支援先であるラオスのラオ・フレンズ小児病院の立ち上げに尽力し、現在はスタッフとして同病院で勤務を続けている。

カンボジアの隣国、ラオスにてラオ・フレンズ小児病院開院

ラオ・フレンズ小児病院建物外観ラオ・フレンズ小児病院建物外観

前編で紹介したカンボジアのアンコール小児病院での経験を活かし、フレンズ・ウィズアウト・ア・ボーダーは隣国のラオスで支援を始めようと決め、時間をかけて構想を練った。赤尾さん含め団体関係者らが現地の調査に赴き、調査をして出した結論は「病院をもう一軒」という大きなプロジェクトではなく「既存の県立病院の小児科病棟を充実させよう」ということだった。選んだ場所はラオス北部の古都ルアンパバーン。街全体が文化遺産としてユネスコの世界遺産に登録されている所だ。

既存病院の施設を充実させるとはいえ、この事業は政府と折衝し新たな病棟を建設し、更地の測量から始めるというものであった。病棟の設計図を書き、最初は誰もいない状況からスタッフを集め、資金に関しては日本とニューヨークの両団体で支援者を集めて予算を組む。
医療支援を行う日本の団体が支援先に病棟の建設を行うことはあまりないケースだが、カンボジアでの実績があったことが大きかった。また、「既存の病院をリノベーションする方が一から新しく建設するよりも予算的にも時間的にもスムーズにいくのではないかと当初は検討されていたのですが、政府の病院に手を入れるという事は簡単な事ではなかったようです」(フレンズ・ウィズアウト・ア・ボーダーJAPAN 事務局スタッフ・永野絵美さん)という内情もあったそうだ。

ラオ・フレンズ小児病院は2015年2月に開院し、8月には入院病棟がオープン。同年度中には救急治療室も開設される予定で、順調に事業は進んでいる。カンボジアのアンコール小児病院と同様に、同病院も10年後にはルアンパバーン県立病院の小児科として戻される予定だ。

日本での地道な活動で知名度向上、支援拡大を図る

アジアでの活動を支えるフレンズ・ウィズアウト・ア・ボーダーJAPAN事務局の活動にも触れておきたい。現在事務局の常駐スタッフは永野さん(イベント・対外対応担当)と杉本ちづるさん(データ管理担当)の2名。そして代表の松島彰雄さんとラオスで活躍中の赤尾さん、在宅勤務の1名と合計5名が所属している。

代表の松島さんは創設者の井津さんと同級生で、カメラマン仲間。井津さんの活動を日本で支援してきた。現在は会計を取り仕切り、日本国内のイベント、活動地の視察や式典に参加している。
事務局では現地での病院建設、運営などのサポートを行う他、国内でフレンズ・ウィズアウト・ア・ボーダーJAPANの活動を紹介する様々なイベントなどを開催している。
またラオスでの活動開始にあたり、ラオス大使館に活動を報告に伺い、ラオスフェスティバルにブース出展するなど、新たな活動の場を広げている。

「赤尾がメディアに出ていて知名度は高いのですが、フレンズ・ウィズアウト・ア・ボーダーという名前がまだ知られていないのが課題です。また現地の病院は知っているけれど私たちのことは初めて聞いたという人が多いので、もっと知名度を高めていくことが必要ですね」(永野さん)

子どもたちの命、笑顔を守りたいという想いを胸に

フレンズ・ウィズアウト・ア・ボーダーJAPAN事務局スタッフ 永野さんと杉本さんフレンズ・ウィズアウト・ア・ボーダーJAPAN事務局スタッフ 永野さんと杉本さん

最後に、今回取材に応じて頂いた永野さんに国際支援に携わるようになった理由を伺った。

「きっかけは大学の時にたまたま見たテレビのドキュメンタリー番組で、パレスチナとイスラエルの紛争を止めさせるにはどうすればいいか、というものでした」
国境や国籍に関係なく、両国の子どもたちに友情が芽生えたとき、彼らが大人になったときにその友情が紛争解決の一つになるのではないか、というものだったという。しかしその子どもたちが最後に言った言葉に永野さんは衝撃を受ける。
「僕たちはいま友達だけれど、大人になったら君は僕の敵になるだろう」
国境は友情でも越えられないのか…。

そしてドキュメンタリーを見た直後に、あるNGOの方が大学に講演に来た。バングラデシュで行っていた教育事業の一環で、バングラデシュから子どもを呼ぶので通訳をしてくれないかという話を受けた永野さんは、人生最初のボランティアとして関わる。
「通訳をした後、日本で会った子どもたちが実際に生活しているバングラデシュに行ってみようということになって現地へ会いに行ったら、日本で見た彼らのキラキラした姿と実際の生活環境のギャップがすごかったのが驚きでした」

永野さんは大学を卒業してすぐNGOの教育関係のインターンとしてバングラデシュで10か月間活動し、その後、もっと草の根での活動がしたいと青年海外協力隊に応募する。2007~09年の2年間、医療に関わる案件の村落開発普及員として赴任。そこでは妊産婦や乳児の死亡率を下げるプロジェクトで、初めて命の誕生や、儚く失われていく命を見る。
「私は医療のバックグラウンドはなかったのですが、その後生きていくうえで医療に関わりたいという気持ちが強くなり、職員募集を行っていた当団体のことを知り、自分の想いと同じところを目指していると感じて働くことを決めました」(永野さん)

フレンズ・ウィズアウト・ア・ボーダーJAPANは少人数の小さな団体ながらもカンボジアで大きな実績を残し、ラオスという新天地でアジアの子どもたちの笑顔のために活動を続ける。

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