1. フレンズ・ウィズアウト・ア・ボーダーJAPANの願い「子どもたちの笑顔を守りたい」を実現するための長期的な支援 ~前編~

社会貢献ジャーナル

フレンズ・ウィズアウト・ア・ボーダーJAPANの願い
「子どもたちの笑顔を守りたい」を実現するための長期的な支援 ~前編~

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現地に医療が根付くまで、質の高い医療と育成

フレンズ・ウィズアウト・ア・ボーダーJAPAN(Friends Without A Border Japan)は、ラオスやカンボジアなどアジアの子どもたちに小児医療支援を行っている特定非営利活動法人だ。

ニューヨークを拠点とするフレンズ・ウィズアウト・ア・ボーダー(Friends Without A Border)と共に、「医療・教育・地域支援」を柱として、支援相手国全体の医療の底上げを目指し、適切な医療を受けることが困難な子どもたちが安心して健康を託せる医療の提供、現地医療スタッフなどへの医療教育を通して医療システムの向上を図り、地域に基づいたアウトリーチプログラムなどを実施し、地域における衛生予防教育に寄与することなどを目的としている。

「医療支援に関してハードとソフトの両方を行うところはあまりないと思います。ハード、ソフトのいずれかに終始してしまっている場合も多くあるかと思いますが、フレンズ・ウィズアウト・ア・ボーダーはいろんな国で並行して支援を行うのではなく、一カ所でずっとそこに根付くまで支援を行い、現地の方々にバトンタッチするということを目指しています」と団体の特徴を説明してくれたのは、フレンズ・ウィズアウト・ア・ボーダーJAPANの事務局スタッフでイベント・対外対応担当の永野絵美さん。質の高い医療を提供する支援と共に、将来的にその国を担う人たちを育てていくことを目指しているという。

この団体がどのようにアジアの子どもたちに寄り添ってきたのか、まずは創設者の想いを辿ってみよう。

TakeからGiveへ。病院建設を決意

ニューヨーク在住の写真家で団体の創設者・井津建郎さんニューヨーク在住の写真家で団体の創設者・井津建郎さん
アンコール小児病院で子どもと向き合う創設者の井津さんアンコール小児病院で子どもと向き合う創設者の井津さん

フレンズ・ウィズアウト・ア・ボーダーは、1996年に写真家・井津建郎さんによって創設された。

聖地や遺跡の撮影のため世界中を旅していた井津さんは、1993年から96年にかけて「Light Over Ancient Angkor」(古代アンコールに射す光)と題する作品制作のために度々カンボジアを訪れていた。戦争・紛争の爪痕を深く残したその国で、病気や怪我、栄養失調で苦しむ子どもたちの姿を目の当たりにし、激しく心を動かされることになる。

井津さんの撮影技法はプラチナプリントと呼ばれるもので、機材が100kg以上と重装備になり、撮影時は幕の中に入って撮るもの。アンコール遺跡で撮影を行っていたある時、幕を開けて周りを見ると、たくさんの子どもたちがいたという。地雷の被害に遭い、腕や足を失った子どもたちもいた。
そして現地の病院を訪れると、日本だと助かるはずの命が、十分な治療を受けられずに失われていく現実に直面する。カンボジアで撮った多くの写真作品や古代遺跡から受けたインスピレーションに対し、何かの形でお返しをしたいという思いが膨らんだ。

「それまではTake picture(テイクピクチャー)、写真を撮ってばかりだったけれど、何かGive back(ギブバック)しなければならないと考えたことが、フレンズ・ウィズアウト・ア・ボーダーの始まりです」(永野さん)
井津さんは、その遺跡のそばに小児病院を建設することを決意した。

支援が集まり、アンコール小児病院を建設

カンボジアのシェムリアップ市内にあるアンコール小児病院の外観風景カンボジアのシェムリアップ市内にあるアンコール小児病院の外観風景

アンコールで撮り続けた「Light Over Ancient Angkor」写真展は日本、ロンドン、ニューヨーク、カナダ、そしてワシントンのナショナルギャラリーにて開催された。そしてアンコールに小児病院を建設したいという意思は多くの支援者を惹きつけ、一個人の夢から救命という現実へ形を変えていく。

1995年に井津さんは活動拠点のニューヨークでフレンズ・ウィズアウト・ア・ボーダーを設立。翌年には、その活動に賛同した日本の友人たちが、東京でフレンズ・ウィズアウト・ア・ボーダーJAPANを設立した。97年にはアンコール・フレンズ基金を設け、日本での寄付の呼びかけを開始した。世界中から6,000人を超す医療専門家、篤志家、芸術家らの支援が集まり、99年にアンコール小児病院が開院されるに至る。

アンコール小児病院は、アンコール遺跡のあるシェムリアップ市に建設された。敷地面積は約1万平方メートルで、毎日400人以上、多い日には600人を超える子どもたちが来院し、これまで延べ130万人以上の子どもたちに医療を提供している。

医療の提供から、医療の自立を目指す活動

毎日多くの子どもたちが来院する、アンコール小児病院の外来の様子毎日多くの子どもたちが来院する、アンコール小児病院の外来の様子

フレンズ・ウィズアウト・ア・ボーダーの最初のプロジェクトとなるアンコール小児病院設立の目的には、治療を必要とするすべての子どもたちにいかなる差別もなく、必要かつ効果的な医療を提供することにあったが、加えて「いずれは現地の人々が自分たちの手で病院を運営できるようにしよう」という目標があった。

そのため、アンコール小児病院は診療のみにとどまらず、医療教育センターを併設し、スタッフや医療従事者の育成を行い、地域医療支援・保健教育プログラムを通して、地域の人々への一般衛生教育・予防医学の普及など、カンボジアの医療の向上に努めた。訪問看護プログラム、孤児支援プログラムなど地域のニーズに合わせた活動にも取り組んでいる。また、誰でも訪問できるビジターセンターを病院に隣接して開設し、活動を紹介しているのも特徴的だ。

政府から提供された更地に病院が建設され、十数名のスタッフで開院された病院は、次第に地域に欠かせない役割を担うようになり、この目標は2013年に達成され、カンボジア人による運営が始まった。自立式典では創設者の井津さんから、団体のシンボルである若葉のマークをかたどった鍵が現地スタッフに譲渡され、思いやりのある真心のこもった医療を提供するというミッションが引き継がれた。
フレンズ・ウィズアウト・ア・ボーダーはそれまでよりも規模は縮小されるが、資金面での支援を続け理事会に参加し運営を見守っている。

支援活動は隣国のラオスへ引き継がれる

ラオスの子どもたちラオスの子どもたち

フレンズ・ウィズアウト・ア・ボーダーJAPANはカンボジアでの病院自立を見届け、2013年7月からミャンマーでの移動診療支援を始める。現地のNGO・ゴールドミャンマーと協力して、ミャンマー人医師と看護師を含む活動スタッフが出向き、地域の医療ニーズを把握して小児の健康診断、診察、薬の処方、栄養教育を行うプログラムだ。
一方でカンボジアでの事業が終了したことで、団体を存続させるかどうかも議論となったという。しかし「カンボジアで培った経験や知識を、必要なところに活かそう」という想いは強く、隣国のラオスで活動を新たに開始することを決める。
アンコール小児病院と同じく、長い時間をかけて自立を目指すプロジェクトだ。

後編は、カンボジアでも立ち上げから長期間に渡って現地スタッフの一員として活躍した赤尾看護師と、ラオスで開院されたラオ・フレンズ小児病院について紹介する。

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