1. エイズ孤児を支え、問題に立ち向かう人々を支援するPLAS ~後編~

社会貢献ジャーナル

エイズ孤児を支え、問題に立ち向かう人々を支援するPLAS ~後編~

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さまざまな活動を通し「なぜ健康の格差があるのか」を探求した巣内さん

PLAS海外事業マネージャー・巣内秀太郎さんPLAS海外事業マネージャー・巣内秀太郎さん

エイズ孤児支援 NPO・PLAS(以下、PLAS)の海外事業マネージャー・巣内秀太郎さんは、「なぜ人によって『健康』の格差があるのだろう?」という命題を胸に、国際的な活動を始める。

大学院時代のフィールドワークで訪れたカンボジアの農村部で、現地の母親たちが子どもの健康のためにどのような行動を取っているのか、調査を行った。そこで、発熱や下痢といった軽い病気で、子どもたちが命を失っているという現実に直面する。

その後、国際保健の問題に関われる仕事がしたいと、巣内さんは海外の病院の建設や改修、医療器材の提供に携わるコンサルティング会社に就職する。そしてODAプロジェクトを通じて海外支援を行うこの会社に身を置き、イラク戦争などを経て荒廃したイラク支援に関わる。当時のイラクにはセキュリティの問題で入ることができず、隣国ヨルダンから遠隔的にプロジェクト管理を行うという業務だった。

巣内さんはその後、「発展途上国の人々のために働くうえで、もっと草の根で何が起こっているのか、人々は何を考え日々を生きているのかを知りたい、現地の人と同じ目線で深く関わりたい」という思いが強まっていった。

「現地で地道な支援活動を行いたい」との想いが強まる

巣内さんが青年海外協力隊で参加した国家エイズ対策委員会・地域事務所(ケニア)巣内さんが青年海外協力隊で参加した国家エイズ対策委員会・地域事務所(ケニア)

そんな折に目にしたのが、海外青年協力隊のケニア事業参加者の募集。退職して国際支援活動に身を投じた。ケニアのエイズ対策機関の地域事務所に配属された巣内さんは、国のエイズ政策を現地で活動するNGO団体に広め、地域のエイズ対策活動を盛り上げていく役割を担った。

ケニアにおいてエイズ問題はとても大きな課題かつ、現地の人にとっては日常的な問題だったという。そして、その日常に触れる現地のNGOの方々に巣内さんは触発される。
「青年海外協力隊の活動は2年で終わりますが、現地の人たちは10年も20年もエイズの問題に取り組んでいかなければなりません。現地でエイズの状況を良くしようと奮闘するNGOの方々と自分との差に気づき、もう少し何かできるのでは、という想いが強まりました」
青年海外協力隊の任期が満了する帰国前、ケニアでも名前を聞いたことがあったPLASの求人を見つける。

「タイミングがよかったですね(笑)。ケニアでの活動を経て、ケニアのために何かをしたい、エイズの問題に関わっていきたい、という希望にうってつけの仕事でした」
巣内さんは、海外事業マネージャーというポジションの募集に応募し、採用。これ以上ないタイミングの出会いだった。

エイズ孤児支援プロジェクトに参加

母子感染予防啓発活動の様子(ケニア)母子感染予防啓発活動の様子(ケニア)

2014年11月にPLASの一員となった巣内さんはそれまでの経験を活かし、すぐに活動をスタート。進行中だったカウンセリング事業に参加する。
エイズ孤児は自身の特有の状況や経験から、悩みを相談する相手も問題を解消してくれるサービスも見つけることが困難だ。また、孤児を引き取った保護者が誤った認識によって学校に通わせていなかったり、行政のサービスもうまく活用できていなかったりといった状況があった。

この事業は、エイズ孤児と保護者を対象にカウンセリングを行い、子どもたちの生育環境を改善させることを目的としていた。2015年2月、巣内さんは現地出張でこの事業のまとめや評価をパートナー団体と一緒に行う業務に携わる。巣内さんがエイズ孤児たちに直接はたらきかける業務ではない。その理由は、PLASがパートナー型の事業を行っているからだ。

PLASの目指す “つくる支援”

PLASは“あげる支援”ではなく“つくる支援”を目指している。
「現在PLASはパートナー型の事業展開をしています。現地NGOなどのパートナー団体と一緒に事業を行うもので、PLASは駐在員を置かずにコストを削減します。現地のために資金を使えるようにするだけでなく、現地の人の主体性を大事にするものでもあります」
2014年から開始したPLASの支援の形を、巣内さんはこう説明する。
日本人の職員が主体となって事業を行うのではなく、現地の人たちのオーナーシップを大事にし、彼ら自身で問題を解決できるような方向に導くことが狙いだ。PLASは資金管理の面や、プロジェクトデザインなどに集中する。

「私が出張で現地に赴き、パートナー団体の方々から報告を受け、次の事業に向けた調整作業を行いますが、調査や現地での事業管理は現地の人たちが行います」
パートナー型の事業でPLASはファシリテーターの役割を担うことになる。巣内さんが学生時代に体験した現地の厳しい状況に対する支援の必要性、就職して学んだコンサルティング業務、青年海外協力隊として感じた地道な支援の大切さなどが、現在の活動に集約されて活かされている。

HIV/エイズ問題に対する支援のあり方

巣内さんが青年海外協力隊で所属していた組織が主催する地域を挙げて取り組む世界エイズデー記念パレード(ケニア)巣内さんが青年海外協力隊で所属していた組織が主催する地域を挙げて取り組む世界エイズデー記念パレード(ケニア)

世界的にはHIV/エイズ問題は、克服されつつある問題と捉えられることもあるが、その問いに巣内さんはこう答える。
「感染者の人数では改善されていると思いますが、薬へのアクセスや差別、偏見の問題などはまだ残っています。更に、今後薬がうまく行き渡れば感染者の寿命は延びますが、ウイルスが消えるわけではないですから、この先も50年、100年のスパンでエイズ問題は存在し続けると考えられます」
この現状に立ち向かうべくPLASが計画する今後の活動は、現地の人たちが、いかに問題解決の中心となれるかという視点からの仕組み作りを支援するものとなる。

国際貢献活動に今後必要なこと

加えて、NGOには事業のロジックや成果について責任を持つことが求められるという。
「様々なNGOが社会をよくするために活動していますが、支援者の方々や社会に対して現地の人々の状況がどう変わったのかを説明していく必要があるのではないかと考えます。支援をしたという実績だけでなく、それがどのような具体的な成果をもたらしたのかを提示することになりますが、これはすごく難しくて、PLASでも試行錯誤を繰り返しながら事業にあたっています」

巣内さんは自らの経験を元に、プロジェクトにかかるプロセスのマニュアル化、各事業のデータベース化、ICTを使った事業管理の方法などを進めている。
「PLASが持っているリソースはまだ少ないですが、成果の最大化を目的に効率的な運営を目指して、いろんな新しいことにチャレンジして前向きに取り組めるというのがPLASの強みですね」
PLASのような小さな団体が今後活動を続けていくためには、巣内さんのように考え活動していく力が必要ではないかと感じられた。


巣内さんがケニアで買ってきた人形。少人数で活動するPLASのお留守番役?巣内さんがケニアで買ってきた人形。少人数で活動するPLASのお留守番役?

このようなPLASの活動、そして個人として巣内さんが尽力するその原動力は何なのか、ふと疑問に感じ、どうしてこれだけケニアのために行動できるのか、との意味合いでこの質問をぶつけてみた。
「ケニアの何がいいですか? どこが好きですか?」
「ケニアの人々の笑顔、明るさや素直さが好きです。貧しい環境にもかかわらず、みなさん明るく前向きに生きていこうとしています。人とのつながりや家族が一緒にいること、そういう日常的なことに感謝して生きている姿勢、他人の幸、不幸に一喜一憂できる素直さや思いやりの姿勢に、私たちも学ぶことは多いと思います」
PLASは一人でも多くのエイズ孤児の笑顔を取り戻すため、活動を続けていく。

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