1. エイズ孤児を支え、問題に立ち向かう人々を支援するPLAS ~前編~

社会貢献ジャーナル

エイズ孤児を支え、問題に立ち向かう人々を支援するPLAS ~前編~

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深刻な現実に触れ、前向きな姿勢に触発されPLAS設立

2005年6月、当時大学生だったエイズ孤児支援 NPO・PLAS(以下、PLAS)元代表の加藤琢真さんは、ボランティアとしてウガンダを訪れる。そこで3年前にエイズで両親を亡くし、親戚に引き取られた9歳のブライアン君に出会った。
彼は他の子どもたちにあった笑顔や元気がない。話を聞いてみると、親戚の子どもたちの世話をし、食事を食べるのは家族で最後、学校にも行っていなかったという。彼はエイズで両親を亡くし、偏見や差別を受けるエイズ孤児だったのだ。

そして加藤さんは、現地でエイズ孤児を支援している同年代のウガンダ人の青年たちと出会う。明日の生活が保障されているわけでもない青年たちが、地域のエイズ問題に向き合い、支援活動を展開している姿に、心を動かされたという。その前向きでチャレンジ精神旺盛な姿に触発され、帰国後に現在の代表門田など7名の仲間と、同年12月にPLASを設立した。

エイズ孤児とは ~大人だけの問題ではないHIV/エイズ~

エイズ以外の理由によって両親を失った孤児の数は1990年から横ばいなのに対して、エイズ孤児の数は増加している。エイズ孤児とは、片親ないしは両親をエイズで失った18歳未満の子どもを指し、UNAIDS(国連合同エイズ計画)によると、エイズ孤児は2012年時点で全世界に1,780万人にも及ぶ。そのうち約85%はサハラ以南のアフリカ地域に集中し、今もなお増え続けているという。

HIV/エイズは医療の進歩と共に、今やコントロール可能な病気とされているが、医療アクセスができない人々や地域では依然として深刻な問題であり、差別や偏見は根強く残っている。
そして大人の問題とされてきたHIV/エイズの脅威は、子どもたちに迫っている。
エイズで親が亡くなった子どもは祖父母に引き取られて育てられるケースが多く、幼いうちから働いて家族を支えることを強いられることも少なくない。親戚や地域住民に引き取られた子どももまた、差別を受け、労働を強いられ、教育を受けられなくなることもある。

エイズ孤児は親がエイズで亡くなっていることから、社会的に不名誉なレッテルを張られてしまうのが現実だ。教育や医療、衣食住などすべての面で最も低い優先順位に置かれ、教育を受けられないために予防法を知らないまま成長し、その結果自身もまたHIVに感染してしまい、新たなエイズ孤児を生み出すという悪循環が存在する。

PLASはこの悪循環を断ち切るために、ウガンダとケニアでエイズ孤児への教育支援活動と地域での啓発活動を行っている。

啓発活動と支援事業の両輪でエイズ孤児を支える

PLASは、教育によって子どもたちの将来の可能性が広がると考えている。教育を受けて仕事に就き、自分で生計を立てて暮らし、またHIV/エイズの理解を深めることで、HIVの感染から身を守ってもらうことが狙いだ。
そしてエイズ孤児を減少させるためには、地域全体のサポートも必要となる。啓発活動により正しい知識や予防法を知ってもらうことが、新たな感染者を防ぐと同時に、差別や偏見をなくしていくことにもつながるからだ。
「与える支援」ではなく「つくる支援」を実践するPLASの、これまでの主な活動実績は次の通りだ。


ウガンダ・ナブウェル地域のBlessed Nursery & Primary Schoolの教室で勉強をする子どもたちウガンダ・ナブウェル地域のBlessed Nursery & Primary Schoolの教室で勉強をする子どもたち

【ウガンダ・ワキソ県ナブウェル地域での啓発事業】
(2006年1月~2007年11月、ウガンダ共和国ワキソ県ナブウェル地域)
ウガンダ首都のカンパラ郊外にあるスラムのナブウェルでは、多くの住民がHIV/エイズについて正しい知識を持っておらず、エイズ孤児やエイズ患者への差別は深刻だった。
差別を恐れてHIV検査を拒む人も多かったため、PLASは同地域のエイズ孤児が通う学校の建設支援を行う傍ら、住民にエイズ啓発を提供。530名の住民に啓発活動を行い、100名の住民に無料のHIV検査とカウンセリングを行った。


【ウガンダ・ルウェロ県での啓発事業】
(2008年8月~2013年3月、ウガンダ共和国ルウェロ県ガルウェロ地域)
ルウェロ県は、1980年代に国内の混乱の中から多くの住民が同じウガンダ人により虐殺され、財産や家畜を奪われた上に、子どもたちが少年兵や性的搾取の犠牲となったという悲惨な経験を持つ地域である。このような歴史的背景から、多くの住民がHIV/エイズについて正しい知識を持っていなかった。
PLASは同地域のエイズ孤児が通う学校の建設支援を行い、建設事業を行う間に住民にエイズ啓発事業を行った。200名の住民にエイズ啓発、43名の住民に無料のHIV検査とカウンセリングを提供。15名の住民に対しエイズ啓発に関するトレーニングを実施した。


ケニアで実施されたHIVの母子感染予防啓発活動、啓発スタッフ向けのトレーニングの様子ケニアで実施されたHIVの母子感染予防啓発活動、啓発スタッフ向けのトレーニングの様子

【ケニア・ウクワラ母子感染予防事業】
(2008年11月~2014年9月、ケニア共和国ニャンザ州ウゲニャ県ウクワラ郡)
支援対象地域の人口は約6万人で、ケニアの中でもHIV感染率が非常に高かった(ケニア全体での感染率は約8.3%、ウゲニャ県は38.4%)。同地域では2人に1人の妊産婦が、病院に来て初めて母子感染について知るという状態で、母子感染自体を知らない人が多いことが以前から指摘されていた。
PLASは地域のリーダーに対して、HIV/エイズ母子感染予防についての研修を行い、69名の啓発リーダーを育成。啓発リーダーたちは4~5名程度のグループを組み、各担当地域で妊娠適齢期のカップルや夫婦、住民らに対して啓発活動を実施した。

PLASに頼らない自助努力を促す活動を継続

ペーパービーズ事業に参加するシングルマザーたち(ウガンダ)ペーパービーズ事業に参加するシングルマザーたち(ウガンダ)
シングルマザーたちが制作したペーパービーズネックレス(ウガンダ)シングルマザーたちが制作したペーパービーズネックレス(ウガンダ)
養鶏事業の収益で教育支援を受けている子どもたち(ウガンダ)養鶏事業の収益で教育支援を受けている子どもたち(ウガンダ)

「現地の人たちにとってエイズ問題は10年、20年、またその先も続いていくものなのです。私たちが関われるのはその一瞬に過ぎません。PLASが1つの地域や団体に対して、ずっと支援を継続できる訳ではありません。PLASがいなくなったら元通りになってしまうような支援を目指している訳ではありませんし、他にも支援を必要としている人々や地域があります。依存関係を構築するのではなく、PLASに頼らないで自立できる仕組みを作っていくことを目指して、PLASは活動をしています」(PLAS海外事業マネージャー・巣内秀太郎氏)。
この考えから、PLASは現在次のような事業を展開している。

【ウガンダ・ペーパービーズ収入向上支援事業】
(2014年8月~、ウガンダ共和国ルウェロ県およびジンジャ県)
エイズ孤児を抱えるHIV陽性のシングルマザーの収入向上を支援することで、子どもたちの就学継続を目指す事業だ。安定した収入が確保できるようにペーパービーズ(紙を使ったクラフトアクセサリー)作成の職業訓練を提供し、その売り上げを子どもたちの就学費に充てる。

【ウガンダ・養鶏事業】
(2013年1月~、ウガンダ共和国ジンジャ県)
養鶏事業から得た収益を通して、地域のエイズ孤児の就学支援を行っている。これまでに50名の子どもたちが継続して学校に通うことができるようになった。またPLASの支援を離れても自立した活動を続けられるように、会計やマーケティング等の研修なども提供している。

世界エイズデーキャンペーン等で国内の認知度を上げる努力

日本国内でPLASは、世界エイズデー(12月1日)と世界エイズ孤児デー(5月7日)の年2回、より多くの人にエイズ孤児の問題を認識してもらい行動してもらうために、イベントや写真展、映像の制作や特設HPの設置、講演活動などを行っている。
コンテンツは年により変わるが、著名人に物品を提供してもらいネット上でオークションを行うチャリティオークションと、著名人や各界で活躍するゲストを招いて開催するチャリティパーティーは毎年実施。エイズ孤児に継続した支援を約束するためには安定的な財源を確保し、長期的な事業計画を立てていくことが大切だ。

後編では、昨年新たにPLASの一員となり、高い意識と多くの経験で活動に変化を与え始めている巣内さんの目から見たエイズ孤児支援について紹介する。

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