1. いのちをまもる活動を続けるJOCS ~後編~

社会貢献ジャーナル

みんなで生きる、いのちをまもる活動を続けるJOCS ~後編~

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岩村昇さんの活動報告に魅了されJOCSに参加

JOCS会長・畑野研太郎さんJOCS会長・畑野研太郎さん

2015年6月に会長に就任されたばかりの畑野さんに、自身のバングラデシュ派遣ワーカーとしての体験を振り返ってもらった。
日本キリスト教海外医療協力会(JOCS)との出会いは医学生の頃、学生運動の終焉期だったという。JOCSで2人目の海外派遣ワーカーとしてネパールで活動した岩村昇さんの活動報告に魅了された。「学生運動にも疲れ、何をやっているんだろう…、と感じていた時期」に、JOCSに参加する。
そして大学院には残らず、早く医師としての実力を身に付けたいと、当時では珍しく英語でカルテを書き回診をしていた淀川キリスト教病院にインターンで入る。JOCSにはボランティアで参加し、会報「みんなで生きる」の編集委員会メンバーとなった。

医師として働きながらJOCSに参加していたが、JOCSの10年に一度の大会である第二回バンコク会議の準備委員会を任され、大きな任務を遂行出来たことが転機となった。
医師としての実力も英語力にも自信がなかったが、「高度なことが出来なくても、注射ひとつ打てれば何かが出来る。その技術を持って発展途上国に行ってみよう」とワーカー志願書を提出する。

ハンセン病と出会い、支援が必要な場所を見つける

ワーカー時代の畑野さんワーカー時代の畑野さん

1984年、バングラデシュの地方病院でイギリス人外科医が一人長期休暇に入るため、誰か穴埋めを出来ないかという手紙がJOCSに届いた。「ちょうど研修中だし向こうの助けにもなるし、JOCSとしても私の研修にちょうどいいと考えたようです」と、4カ月間の研修が決まった。訪れたのはチャンドラゴーナ。バングラデシュ南東部のチッタゴン丘陵地帯にある小さな町だ。一般外科医として赴いた畑野さんだが、そこでハンセン病と出会う。後の畑野さんの人生を決める出会いだった。もともとチャンドラゴーナにはハンセン病プロジェクトがあったが、4カ月間現地の西洋人ミッショナリーを通じて知ったところでは、本気で対策を行っている医師は政府のハンセン病コントロール責任者1人だけだったのだ。

「一般外科よりも、ハンセン病の外科の方が役に立つと思い、ハンセン病の専門医になる決意をしました」
その後インドで3カ月間勉強させてもらったり、日本のハンセン病国立療養所・邑久光明園(岡山県)で研修を受けるなどの経験を積み、85年1月に正式赴任となった。その後3期、足かけ10年、バングラデシュのハンセンコントロールに携わることになる。

ハンセンコントロールは差別偏見との戦い

ハンセン病医療には、啓発活動が欠かせない。
「日本ほどではなかったけれど、バングラデシュでもやはり差別があり、差別偏見のあるところでは本当のコントロールは出来ない」と語気を強める畑野さん。
ハンセン病に罹ることで社会的生命が絶たれてしまったり、家族分裂が起こったりするとなると、そういう恐れがあるうちは病院には行けない。すると病気の発見が遅れ、感染者が広がることになるからだ。「だから、社会の差別・偏見と戦うことが、医療でもあるんです。」
ハンセンコントロールは非常に特別な世界で、自分の仕事の中にそれまでと違う視点を持つ必要があったという。病院で回診したり手術もしたが、村に行って啓発ビデオを見せたり、お祭りをやってハンセン病の迷信を取り除こうとしたりとか…。そして現地の患者さん、あるいは回復者の方々は、貧しい人たちが半分以上だ。
「そういう人の家に行くと、高いのにお茶を買って来てくれる。現地の草の根の方々とも可能な範囲でお付き合いをしました。現地の友人を介して今もつながっています。」

自分の友人・知人のこととして問題を捉える

ワーカー活動で学んだ大切なことは何ですか?という問いに、畑野さんは自分のことのようにバングラデシュの現状を憂い、こう答えてくれた。
「世界ではだいたい5人に1人が飢えていると言われています。バングラデシュは国としてGDPは伸びているけれど、田舎の貧しい人たちの生活はまったく昔と変わらないどころか、格差がより目に付くようになっている。そういう現実を、具体的に顔を思い出しながら、友人や知人の問題として考えられるのは、これまでの経験からもらった大きな恵みではないでしょうか。苛立ちも覚えますし、抽象的に考えられるものとは違います。本当は格差などという問題はなくしたいのですが…」
バングラデシュではリーダーシップの取り方や差別・偏見をいかに取り除けるかということを学び畑野さんは帰国し、ハンセン病の国立療養所 邑久光明園(岡山県)に勤めることになる。

現在活躍中のワーカーたち

活動中の山内さん活動中の山内さん

活動中の岩本さん活動中の岩本さん

活動中の弓野さん活動中の弓野さん

ここで、現在派遣されている3人のワーカーにも触れておきたい。

バングラデシュには、山内章子ワーカー(理学療法士)と岩本直美ワーカー(看護師)の2人が派遣されている。

山内さん派遣の背景には、バングラデシュの貧しい人たちにリハビリテーションが浸透しておらず、障がいがあってもリハビリテーションをすれば身体機能が改善することを知らない人たちが多いことがある。理学療法士を派遣することで、都市から離れた地域で理学療法技術者を育成することが目的だ。
2014年度にはバングラデシュの地方の4つの県を定期的に訪問し、理学療法技術者の技術や知識の向上に努め、基礎的なリハビリテーションを提供することが可能となった。

岩本さん派遣の目的は、現地のラルシュ活動支援だ。
ラルシュとは知的障がいがある人と障がいのない人が共に暮らすコミュニティで、バングラデシュで法的に認可され、地域の人たちに受け容れられ、知的障がいがある人たちの個性や豊かさが広く認識されるよう、コミュニティの基礎作りを支援している。
「岩本さんのラルシュ活動支援は、世界のラルシュ運動の中でも注目されています。メインはクリスチャンの運動に現地の信仰を持つイスラムの方が参加して、日本人が支援をしている。他宗教と一緒に生きる日本人だからこそ出来ることかもしれません」(畑野さん)

タンザニアには、弓野綾ワーカー(医師)が派遣されたばかり。
ダルエスサラームで3カ月の語学研修を受け、ダボラ大司教区の医療施設で2015年7月から働く予定だ。
ダボラ州は東アフリカの中でも最も医療過疎な地域のひとつで、人材、病院、医薬品などすべてが不足している。地域の健康を改善する活動が期待されている。

JOCSの精神を引き継ぎ、社会に還元する

活動の様子活動の様子

畑野さんは、JOCSによる支援の勘所は「みんなで生きる」ことだと確信する。会報のタイトルにも採用されているこの言葉は、ネパールにワーカーとして派遣された岩村昇さんがネパールの青年の言葉を持ち帰り、日本に紹介したものだ。また「みんなで生きる」は「共生」という言葉につながり、「共生」は今でこそ広く使われる言葉だが、日本でこの言葉が普及したのはJOCSの活動があったからだという。

そしてJOCSは今年から新しい標語「医療を通じて、愛を世界へ。」を掲げ、更に積極的な周知活動を通じて、多くの人に「みんなで生きる」ことを伝えて行く。

「私たちは日本人に支えられて活動をしています。政府ではなくて会員に支えられているのですから、日本の社会に対する責任を自覚しなければいけない」と身を引き締め、「活動によって得られた貧しい人たちとの関わりの物語を、日本の社会に還元していく必要がある」と話を締めくくった。

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