1. いのちをまもる活動を続けるJOCS ~前編~

社会貢献ジャーナル

みんなで生きる、いのちをまもる活動を続けるJOCS ~前編~

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すべての人々の健康といのちがまもられる世界

1939年中支診療活動1939年中支診療活動

これは日本で最も古いNGOの一つである公益社団法人 日本キリスト教海外医療協力会(JOCS = Japan Overseas Christian Medical Cooperative Service)のビジョンだ。JOCSのルーツは、1938年に行われた中国大陸での医療活動にさかのぼる。日中戦争の最中、日本軍の侵攻によって多数の難民が出るなど中国の人々は苦難を強いられた。その窮状を見かねた日本人牧師の呼びかけに応じて、医師や医学生、看護師等による医療チームが大陸に渡り、協力活動を行った。戦後、その医療チームを含めたクリスチャンの医療従事者が日本各地から集まり「日本キリスト者医科連盟(JCMA)」を1949年に設立、医療奉仕活動を始めることとなる。

「当時、軍医として東南アジアの発展途上国へ行かれた多くの方がおられました。戦争で迷惑をかけたことへの贖罪の思いがあって、それらの国々のために役立つことが出来ないかということがJOCS運動の原点です」(JOCS会長・畑野研太郎さん)
1958年、JCMAの代表が香港で行われた東アジアキリスト者医療従事者会議に出席し、アジアの医療従事者を研修のため日本に受け入れると表明したことに端を発して、海外から保健医療従事者の派遣や研修支援の要請が続いた。それらの要請に応えるために、1960(昭和35)年3月にJOCSが設立された。
JCMAを母体とするキリスト教団体の精神を活動や運営に生かすと同時に、宗教の垣根を越えた医療支援を行い、また活動を伝えることにより広い層からの賛同と協力を求める医療支援団体だ。

アジア・アフリカを中心にした医療協力活動

  • 人と人とのつながりを中心とする保健医療協力。
  • より貧しく弱い立場に置かれた人々への保健医療活動。
  • 上記を達成するための人材育成。

これらの方針を踏まえたJOCSの活動は、海外における保健医療分野の支援協力が主となっている。保健医療従事者の派遣などの支援は、基本的に現地からの要請で行われ、アジア・アフリカを中心に保健医療が十分でない地域への協力活動を行っている。海外保健医療協力の柱は次の3つに分けられる。


ワーカー派遣ワーカー派遣

【ワーカーの派遣】
JOCSから海外に派遣される保健医療従事者は、「ワーカー」と呼ばれる。発展途上国の諸団体から送られてくる派遣要請に応え、これまで70名ほどのワーカーを送り出してきた。
ワーカーの職種は医師、保健師、助産師、看護師、栄養士、障がい児教育専門家、看護教師など多岐にわたる。近年では、理学療法士や作業療法士など障がい医療分野のニーズも高くなっている。
1期3年という長いスパンでのワーカーの活動は、任期終了後も派遣先団体や地域の人々によって活動が引き継がれていくことを視野に入れたものだ。


【奨学金支給による人材育成支援】
保健医療を学ぶ人たちに奨学金を支給することで、その地域の保健医療レベルの向上に協力する活動だ。
アジアやアフリカの国々では都市部と地方の経済格差が大きく、地方の病院から都市部への人材流出が問題となっている。JOCSは、自分の生まれ故郷の人々のために働きたいと願う人を奨学生として選び、地域にとどまって働く人材を育成している。
また、毎年1度のレポート提出やJOCSの会報「みんなで生きる」で紹介されるメッセージの執筆などを通して奨学生とのつながりを大切にし、顔の見える関係づくりを心がけている。


協働プロジェクトの様子協働プロジェクトの様子

【現地NGOとの協働プロジェクト】
現地のNGOとJOCSが協働してプロジェクトを行うことで、現地の人々の力を活かし、より大きな効果を期待するものだ。
学校で保健教育を行うことが、生徒の健康への意識の向上、家庭の衛生環境の改善につながり、ひいてはそれが地域全体へも波及するという考え方に基づき、2010年にバングラデシュで学校保健教育プロジェクトがスタート。現地14校3,000人の小学生を対象とし健康診断や保健教育の授業を現地NGOと協力して行った。

現地に寄り添う、ニーズに応じた支援活動を展開

JOCSのビジョンは、ワーカー派遣の歴史を辿るとよく見えてくる。最初のワーカーは、1961(昭和36)年にインドネシアに派遣された小児科医師・梅山猛さん。
「当時は日本人が海外に行くことが珍しい時代で、送金も自由に出来なかった。現地ではそんなに報酬をもらうわけにもいかず、家財道具を売ってしばらく生活されていたそうです」(畑野さん)。

翌年には岩村昇さんがネパールに結核の専門家として派遣される。後にマグサイサイ賞を受賞する著名な人物だ。その後、ワーカー派遣はJOCSの中心的な活動として、多い時には同時に12人を派遣することもあった。
当時から貫かれているワーカー派遣への姿勢は、現地のニーズに応えることだ。長期方針を立てて日本から医師を派遣しても、日々変化する現地のニーズに合わなくなってくるのだという。

例えば、最初は病院に医師を派遣する。しかし現地で病院に来る患者は、手遅れの場合が多いということが分かり、病院に来る前の段階であるコミュニティヘルス(地域の保健活動)に派遣対象が変わる。
そして国際機関など大きな組織がコミュニティヘルスに注目し始めたら、次は結核やハンセン病などの対策へと派遣対象が変化していく。

ここには、JOCSのワーカーの派遣方法の特徴も反映されている。通常は医師団をチームで送りプロジェクトとして運営されることが多い日本の支援活動だが、JOCSのワーカーは現地の病院にスタッフとして入る。たいていの場合は他に日本人はいないので、働きながら現地スタッフの教育を行うという重責がかかる方法だ。
しかし異文化に入ることで見えてくるものがある。貧しい人たちに本当に必要なものは何なのかを伝えるのもワーカーの任務の一つである。

経験を積み、より綿密な支援を行うために

そして畑野さんは「NGOとして、JOCSほど子どもを産んだ組織はないと思っています」と振り返る。
JOCSと関わり、ワーカーとして派遣され、帰国後に別のNGOを立ち上げたケースが多いのだ。ネパールに派遣された岩村昇さんは帰国後PHD(公益財団法人 PHD協会)を作り、川原啓美さんが創立したAHI(アジア保健研修所)はJOCS運動の中から独立して生まれたものだという。ペシャワール会の中村哲医師は元JOCSのワーカーで、他にもACEF(アジアキリスト教教育基金)などの大きな組織が、JOCSの仲間たちが自分の課題を見つけて創り上げていく。他のNGOにはあまりない傾向だ。
優秀な人材が抜けて厳しくないのですか?との問いに、「みんながやらないこと。しかも現地で一番ネグレクトされているところに少しでも近づきたいという思いが、こういう動きを作ってきたのではないかと感じます」と畑野さんは答える。JOCSとこれらのNGOは、今でも友好的な関係にある。

50周年を迎えた使用済み切手運動

JOCSの国内活動についても触れておきたい。
国内では、海外派遣ワーカーを目指す人々を育成するためのセミナーやスタディツアーなどの啓発活動が中心となっている。
また1964年に日本で初めて使用済み切手運動を始めたのもJOCSだ。現在も、全国から寄せられる使用済み切手や書き損じハガキ、外国コインなどをアジアやアフリカの保健医療事情の向上のために役立てている。みなさんも子どもの時、使用済み切手を送った経験があるのではないだろうか。このような地道な活動で、アジア・アフリカの人々の健康のために貢献を続けている。

後編では、畑野会長のワーカーとしての経験、現在活躍しているワーカーに焦点を当てたい。

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