1. すべての人に健康を! いのちを守る人を育てるシェア ~前編~

社会貢献ジャーナル

すべての人に健康を! いのちを守る人を育てるシェア ~前編~

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住民の手で継続的に健康が維持されること

シェア副代表理事 医師・沢田貴志さんシェア副代表理事 医師・沢田貴志さん

シェア(特定非営利活動法人 シェア=国際保健協力市民の会)は“すべての人に健康を!”を基本理念とし、特に社会的弱者への医療保健サービスへのアクセス向上を念頭に、開発途上国や日本で国際協力活動を行っている国際保健NGO(民間団体)だ。
「現地の人たちが自分たちで継続してやっていけるような、健康状態を良くする医療の手助けをするのが、私たちのコンセプトです。私たちが去った後、自分たちで継続的に健康維持できることが目標です。」(シェア副代表理事 医師・沢田貴志さん)

すべての人々が基本的な保健医療サービスを受けられるようになること、そして健康づくりが地域の人々自身の活動になることを願い、保健医療サービスが受け難い境遇にある住民が、自らの手で健康を改善することを側面から支援する活動を進めている。
「私たちの活動の特徴として、当事者のモチベーションが最も重要、という考え方で行っています。住民の、自分たちの健康を良くしたいという意欲が活動を推進する何よりの力になります。」(沢田さん)

予防教育に関しても、住民自身がやりたい、このやり方は自分たちが参加してつくったものだから自分たちにとって使いやすい、と現地の人たちが誇りを持てるものを構築する。当事者がオーナーシップを持っている時に一番効果が出る、という考え方を大切にしている。
例えば、タイのエイズ患者のケアについても、HIVに感染した人自身が、自分たちの健康を維持するためのケアについて勉強して、同じ立場の仲間の互助グループを立ち上げるための支援に力を入れた。

「タイではもともと、村人たちの健康に関する互助グループの活動が活発でした。HIVに感染した人々自身の互助グループを育てていくことができれば、私たちがいなくなっても自分たちで続けていけます。」(沢田さん)
現地の「助けたい」と考える人たちを支援し、継続可能な仕組みをつくっていくのがシェアの取り組みだ。

難民救援活動から国内外の支援活動へ

シェアの成り立ちをたどってみよう。
1970年代末、インドシナ戦争の影響でカンボジア、ラオス、ベトナムなどの周辺国からタイへ多くの人々が難民として逃れた。その難民救援活動をきっかけとして80年に日本国際ボランティアセンター(JVC)が設立され、草の根の立場から行動を起こした多くの医師、看護師などの医療関係者が参加し、国境での移動レントゲン活動、難民キャンプでの補助給食活動などを行った。これらの医療関係ボランティアが中心となり、国際保健医療を目指す人々のグループとして、83年にJVC内に「海外援助活動医療部会」が設立された。その後、1990年に医療という専門性をより生かした活動をするためJVCから独立したのがシェアだ。以来、国内外で次のような活動を行ってきた。


  • ・1985年    エチオピア:飢餓被災民への緊急医療救援実施(JVCと共同)
  • ・1988年    カンボジア:地域保健プロジェクト開始
  • ・1990年    タイ:地域保健プロジェクト開始
  • ・1994年    ルワンダ:難民キャンプで緊急医療協力
  • ・2000年    東ティモール:緊急支援、地域保健プロジェクトを開始
  • ・2004年    日本:新潟中越地震災害支援
  • ・2005年    インドネシア:スマトラ沖津波被災者支援
  • ・2005~11年 南アフリカ:エイズプロジェクト
  • ・2011年    日本:東日本大震災緊急支援(宮城県名取市)
  • ・2011~14年 日本:東日本大震災復興支援(宮城県気仙沼市)

シェアの事業は大きく分けて次の4つに分類される。


独立したタイ事務所スタッフに対し、プロジェクト計画のアドバイスをする沢田さん独立したタイ事務所スタッフに対し、プロジェクト計画のアドバイスをする沢田さん

途上国における地域保健活動/現場実施型NGO
途上国に医療や開発分野の日本人専門家を長期的に派遣し、現地の人々と共にプロジェクトを実施する。活動の中心的な担い手はその地域に住んでいる人々自身となり、シェアは活動の主体である住民の自主的な取り組みを側面から応援する役割を担う。
また活動が終了した後も、住民が継続して自分達の健康問題に取り組んでいくために、地元の人の主体性を尊重し、支援に頼らない自立を促進させ、自分たちの問題として自発的に健康問題に取り組んでもらえる活動を進めている。

緊急救援活動/長期的開発と緊急支援
長期間にわたって関わっていく支援を基本とする一方で、紛争や自然災害によって被害を被った人々への緊急救援も実施している。
長期的な地域保健活動の場合にはシェアのスタッフ自身が保健医療サービスを直接提供することをなるべく控えているが、緊急状況にあっては短期間で集中的な医療サービスを提供することが求められ、支援を行う。
ただし、緊急救援であっても一定の期間の後に活動を終了する必要があるため、地域社会が引き継ぎ出来るような活動を行っている。


タイにおける世界エイズデーの活動。陽性者0、死亡者0、差別0タイにおける世界エイズデーの活動。陽性者0、死亡者0、差別0
タイ人ボランティアグループ「タワン」の啓発活動タイ人ボランティアグループ「タワン」の啓発活動

エイズの予防啓発、HIV陽性者支援活動/エイズへの取り組み
アジア・アフリカを中心に、発展途上国におけるエイズの予防啓発、感染者支援活動、緊急救援活動を行う。
新たな感染を予防する教育活動だけでなく、HIV陽性者グループ支援などのケア活動、差別や偏見を解消するための啓発活動などに取り組む。
また日本国内においても、活動国で培ったエイズ教育やワークショップを日本人向けにアレンジした教育や、タイ語によるエイズ電話相談などを行う。

日本国内の在日外国人の健康支援活動/国内活動を重視
医療アクセスが困難な人たちがいるのは海外だけではなく、言葉や生活習慣の違い、滞在資格などが原因で充分な医療サービスを受けられない在日外国人がいる。これらの人たちに対してシェアは1990年頃より無料の健康相談会を行なってきた。
エイズ電話相談、外国人結核患者の治療・療養のため14言語の支援員(通訳)派遣事業などの医療支援活動も実施している。
また発展途上国の状況を日本の人々に伝え、日本との関係などを理解してもらう啓発活動により、ともに考え、行動を起こしていくよう働きかけている。

「海外だけではなく、日本国内で医療アクセスが難しい人たちに対する支援を行っているというところが大きな特徴です」(沢田さん)と語るように、シェアの活動は地域にこだわるのではなく支援を必要としている人たちがいる場所だ。

後編では、現在国内外で行われているシェアの具体的な活動に焦点を当てて伺う。

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