1. 「JICA」の国際緊急援助 ネパール地震における医療チームの活動 ~前編~

社会貢献ジャーナル

「JICA」の国際緊急援助 ネパール地震における医療チームの活動 ~前編~

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ODA実施機関としてのJICA

JICA(=Japan International Cooperation Agency、独立行政法人 国際協力機構)は、独立行政法人国際協力機構法に基づき2003年10月1日に設立された外務省所管の独立行政法人だ。
前身は1974年8月に海外協力技術事業団(OTCA)と海外移住事業団(JEMIS)が統合した国際協力事業団(JICA)で、2008年10月に国際協力銀行(JBIC)の海外経済協力業務と外務省が実施してきた無償資金協力が更に統合され、現在の体制となった。
日本は1954年に南アジア、東南アジア、太平洋地域諸国の開発援助のために設立された国際機関・コロンボプランに加盟して以来、「国際社会の平和と発展に貢献し、これを通じて我が国の安全と繁栄の確保に資すること」を目的に、政府開発援助(ODA=Official Development Assistance)として、開発途上国に資金的・技術的な協力を行っている。

ろう学校の男児が手話通訳者と共に受診ろう学校の男児が手話通訳者と共に受診

JICAはこのODAのうち国際機関への資金の拠出を除く、二国間援助における「技術協力」「有償資金協力」「無償資金協力」を一元的に担っている。
「私たちJICAは国のODAを実施する機関です。支援のメニューは多様で、分野も教育や、医療、農業・農村開発、産業振興、社会基盤整備等、多岐にわたります。緊急援助も実施していますが、これは医療機関や医療従事者の皆さまなどの大きな協力と連携によって成り立っています。」(JICA広報部広報室・五味誠一郎さん)
JICAは約90ヵ所の海外拠点を窓口として、世界152の国・地域で事業を展開する、二国間援助機関としては、世界最大規模である。

日本と開発途上国を結ぶJICA

JICAの事業は大きく分ければ「技術協力」「有償資金協力」「無償資金協力」の3つ。加えて「国際緊急援助」「調査・研究」「市民参加協力」という形でも国際協力を行っている。

技術協力
開発途上国の人材育成や制度構築のために、技術協力専門家の派遣や研修員受け入れを行う。例えば小学校の先生たちの技能を向上させるための研修や、公的医療保険システムの強化など、幅広い課題にオーダーメイドの支援が提供される。

有償資金協力
開発途上国に対して、低利で長期の比較的緩やかな融資条件で資金を供与することにより、開発途上国の成長と発展を下支えする。大きな橋や空港を作るなど、円借款や海外投融資という形で行う資金協力。

無償資金協力
所得水準の低い開発途上国を対象に、返済義務を課さずに開発資金を供与する。学校、病院、井戸、道路などの基礎インフラの整備、医療機材や教育訓練機材などの資機材調達のためだけに限定した資金が相手国政府に提供される。

国際緊急援助
海外で大規模な災害が発生した場合に、被災国政府や国際機関の要請に応じて、日本政府の決定のもと国際緊急援助隊を派遣する。

調査・研究
開発途上国の開発課題の解決と、それを支援するJICA事業戦略への貢献を目指した研究を行う。

市民参加協力
青年海外協力隊派遣などのボランティア事業、JICA基金による寄付金の運営や、開発途上国が抱える課題への理解を深めるための開発教育支援を行う。NGO、自治体、大学などによる国際協力活動への参加を支援し連携する。

診察する富岡医師と鈴木看護師診察する富岡医師と鈴木看護師

これらの活動の支援先は、世界中の開発途上国と呼ばれる国・地域。「インフラ・社会基盤整備事業などから、ボランティア活動など文化的交流であれば文化的交流という側面もあり、多岐にわたります。変化していく途上国のニーズに合わせて、きめ細やかに対応できるように仕事を進めています。」(五味さん)
JICAは“すべての人々が恩恵を受ける、ダイナミックな開発”というビジョンを掲げ、開発途上国が抱えるさまざまな課題解決に向け、国際協力の架け橋となっている。

JICAの組織理念を表すシンボルデザイン

jica ジャイカ 独立行政法人 国際協力機構JICAシンボルマーク

JICAは2008年の再スタートに際し「よりスピード感のあるダイナミックな新しいJICAを象徴するデザイン」にシンボルマークを改訂した。
「i」に架かる赤い円は「日本」をイメージし、円弧のモチーフはJICAに始まりJICAに戻る組織の活発な動きを示すと共に、「循環型社会」「持続可能な開発と発展」、そして「日本の国際協力、国際貢献が日本社会への貢献にもつながること」などを表現している。
円弧のグラデーションは、新しいJICAが「技術協力」「有償資金協力」「無償資金協力」の3つのスキームを融合させながら、総合的・戦略的に展開・発展する「ALL JAPAN」の援助機関であることを示している。

注目を集める国際緊急援助隊

JICAが行う「国際緊急援助」に焦点を当ててみよう。
日本は、地震や台風などの自然災害が多いため、これまでに豊富な経験と技術的なノウハウが蓄積されてきた。この経験を開発途上国の災害救援に活かしたいという思いから、1979年に医療チームの派遣を中心とする国際緊急援助活動が始められた。

JICA国際緊急援助隊事務局・勝間田幸太さんJICA国際緊急援助隊事務局・勝間田幸太さん

1987年には「国際緊急援助隊の派遣に関する法律」(通称JDR法)が施行され、現在は救助チーム(捜索・救助)、医療チーム(救急医療・公衆衛生)、専門家チーム(災害応急対策・災害復旧)、自衛隊部隊(輸送・防疫・医療)の派遣が可能で、これらの4チームを災害の種類や規模、被災国の要請に応じて、いずれかのチームを単独ないしは複数のチームに組み合わせて派遣している。
「JICAは日本の国際緊急援助の事務局機能を担っています。国際緊急援助は人的、物的、資金の3つの援助に分類されますが、そのうち人的、物的な部分の実務をJICAが担当します」(JICA国際緊急援助隊事務局・勝間田幸太さん)

災害発生時の医療活動

医療チームは、被災者の診療にあたるとともに、必要に応じて疾病の感染予防や蔓延防止のための活動を行う。
メンバーは登録している医師、看護師、薬剤師、医療調整員の中から応募制で選ばれ、さらに外務省やJICAの職員が業務調整員として派遣される。隊の構成は、災害や被災国のニーズにより、柔軟に対応できるような体制だ。
現在はドクターが約270人、看護師が360人など、全体で約900人が登録されており、災害派遣が決定されると人員募集のFAXが一斉送信される。締め切りは2時間後だ。

2015年4月のネパール地震においてJICAは国際緊急援助活動を行ったが、医療チームの副団長を務めた国際緊急援助隊事務局の大友仁さんは、今回の応募に際してこう語る。
「みなさん自分の仕事を持っていますから、締め切りまでの2時間で所属先の長に活動期間の2週間いなくなるという許可を得ることになりますが、集まった応募者は定員の3倍でした。それだけの方々が常に備えられているのは素晴らしいことです。」
翌日の午前中には成田空港に集合する、非常にスピード感を求められる支援活動だが、頼もしい人材が即座に集まる体制が構築されている。
医療チームは国際緊急援助隊の中で派遣回数が最多で、JDR法施行以降2015年6月1日現在で57回を数える。
JICAが行うもう一つの国際緊急援助である物的援助は、シンガポール、ドバイ、マイアミと海外の拠点になる空港に倉庫を保有しており、テントや毛布など被災者の生活支援のための物資が保管されている。被災国の要請に応じて、どこからどこに輸送すれば一番効率よく運べるのか検討し手続きを行い、必要な物資が迅速に届けられるようにするのがJICAの役割だ。

後編では、4月25日に起こったネパールでの地震被害に対する国際緊急援助活動について、現地での体験を伺う。

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