1. 「日本赤十字社」が進める世界中の災害、戦争・紛争から人々を守る国際活動 ~前編~

社会貢献ジャーナル

「日本赤十字社」が進める世界中の災害、戦争・紛争から人々を守る国際活動
~前編~

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150年超の歴史を持つ国際赤十字・赤新月運動

東日本大震災発災直後に現地へ東日本大震災発災直後に現地へ

赤十字はジュネーブ条約が調印された1864年に誕生した。以降150年を超える歴史を持ち、今や世界189の国・地域にある赤十字・赤新月社のネットワークだ(イスラム教国では「赤新月」と称する)。

誰でも知っている白地に赤い十字のマークは、赤十字創設者アンリー・デュナンの祖国スイスに敬意を表し、スイス国旗の配色を反転させたもの。このマークの知名度は、赤十字の活動において大きな力となっており、紛争地域では、赤十字マークを掲げている病院や救護員などには攻撃を加えてはならないと国際法などで定められている。

日本赤十字社は1877年創立の博愛社を前身とし、国が1886年にジュネーブ条約に加入したことで翌年改称した。初の災害救護は1888年7月の磐梯山噴火だった。

現在国内では、全国47都道府県にある支部、病院、血液センター、社会福祉施設などのネットワークを通じ、「苦しんでいる人を救いたい」という世界共通の思いのもと、国内災害救護、赤十字病院(医療事業)、看護師などの教育(大学・専門学校など)、血液事業(献血など)、救急法などの講習、社会福祉に携わっている。
これらの活動は、毎年一定の資金を提供する社員(個人952万人、法人12.6万法人・2013年7月1日現在)やボランティアによって支えられている。

命と健康・尊厳を守る7つの基本原則

日本赤十字社の活動理念は、世界中の赤十字が共有する7つの基本原則に則っている。

わたしたちの基本原則
  • 人道 : 人間のいのちと健康、尊厳を守るため、苦痛の予防と軽減に努めます。
  • 公平 : いかなる差別もせず、最も助けが必要な人を優先します。
  • 中立 : すべての人の信頼を得て活動するため、いっさいの争いに加わりません。
  • 独立 : 国や他の援助機関の人道活動に協力しますが、赤十字としての自主性を保ちます。
  • 奉仕 : 利益を求めず、人を救うため、自発的に行動します。
  • 単一 : 国内で唯一の赤十字社として、すべての人に開かれた活動を進めます。
  • 世界性 : 世界に広がる赤十字のネットワークを生かし、互いの力を合わせて行動します。

以下に紹介する国際活動においてもこの原則は守られ、基本的には後述する人道援助が活動の中心となっている。

ネットワークの強みが発揮される赤十字

診療を行う医師診療を行う医師

国際赤十字活動を支える機関として、赤十字国際委員会(ICRC/International Committee of the Red Cross)と国際赤十字・赤新月社連盟(IFRC/International Federation of Red Cross and Red Crescent Societies)がある。

ICRCは1863年の創設以来、国際人道法(武力紛争・戦争において負傷したり病気になったりした兵士、捕虜、武器を持たない一般市民の人道的な取り扱いを定めた国際法)に基づき、戦争または紛争の犠牲者に対する人道援助を行う。一方IFRCは、各国の赤十字・赤新月社の国際的な連合体で、主な任務は、災害の被災者に対する救援活動や、将来の災害に備えたリスクを抑えるための活動などがある。

海外における自然災害救援の際には赤十字が強いと言われるが、その理由としては世界中にネットワークを持っているからだ。ほとんどの国・地域には赤十字・赤新月社があり、現地スタッフや車両、オフィスが備わっているために迅速な救援活動が可能となっている。

また、赤十字ブランドの認知度の高さも挙げられる。赤十字マークと共に150年以上の活動の中で培ってきた信頼と実績によって、赤十字は世界のあらゆる地域で知られている。結果的に、各国で救援活動を行う際に受け入れてもらいやすいと言える。

世界における人道援助とは

被災地の子どもたちのこころに寄り添う被災地の子どもたちのこころに寄り添う

人道援助とは、さまざまな災害によって被った人々の苦痛を軽減させ、命と健康を守ることだ。
戦争や紛争下においては住民や犠牲者の支援、自然災害においては被災者の緊急支援から復興までを指す。そして通常時であっても、貧困などで苦しむ人々の支援、開発協力の活動を行う。この三つの状況における人道支援が、赤十字の国際活動の主目的である。

日本赤十字社の国際活動における支援は、どのような形であっても該当国・地域の赤十字・赤新月社と協力して行われるのが基本である。協力の形態には、二国間のものと、ICRC、IFRCの国際機関を通じて行われるものがある。

戦争や紛争、災害時の犠牲者・被害者への人道支援に加えて、人道的外交といわれる、犠牲者や被災者が置かれた状況の改善を世論に働きかけ、関係国政府や国際社会に対して影響力を行使する役割も担っている。人道支援だけでは難しい問題に、外交を通じて平和をつくらなければならないと発信しているのだ。

日本赤十字社の国際活動

日本赤十字社における具体的な国際支援方法は、以下の三つをとる。

・ 日本赤十字社から派遣された要員が、その国・地域の赤十字社と供に事業を実施する
・ 日本赤十字社の人材を国際機関に出向させ、その国際機関の指示のもとで働く
・ 国際機関が出す緊急アピール、支援要請に応じる形で資金、モノを拠出していく

そしてこの三つは、災害の種類でいえば自然災害、紛争や戦争、長期の開発協力の仕事に分かれる。この支援は災害であれば緊急局面、緊急事態が過ぎてからの復旧復興といった場面でも続けられる。
災害の発生時には、被災国赤十字社の対応能力を超える支援が必要な場合に、「緊急対応ユニット(ERU)」を現地に派遣して医療活動を行い、救援物資の配布や資金援助、衛生状態の改善など幅広い支援に携わる。

また長期の開発協力の一例を挙げれば、保健衛生支援として、開発途上国において、感染症の予防や救急法の普及、衛生的な環境づくりや、医師、看護師、事業を管理する職員の海外派遣活動も行う。

日本赤十字社が直面する困難

以上のように世界中に広がるネットワークと豊富な経験で国際活動を行う日本赤十字社だが、時代と世界情勢の変化にともなって新たな困難に直面している。

「いわゆる国と国の戦争は少なくなって、国内紛争が増えてきました。そこではジュネーブ条約で守られるべき赤十字・赤新月の標章が尊重されなくなってきているのです」と、豊富な海外活動経験を持つ日本赤十字社・事業局国際部国際支援統括監の粉川直樹さんは語る。
さらに、医療要員であっても、外国人であるとか西洋の組織であるということだけで攻撃対象になる危険があると指摘する。

赤十字は、第一回ノーベル平和賞受賞者のアンリー・デュナンが提唱した「人の命を尊重し、苦しみの中にいる者は、敵味方の区別なく救う」ことを目的にしている組織である。創設から150年余りが経ち、争いの形も変化しているが、この設立の精神は変わらず引き継がれている。赤十字の活動が紛争地域の事態好転をもたらすことを願いたい。

次回は引き続き、粉川さんに具体的な国際活動について伺っていく。

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