1. 「ジャパンハート」がアジアの無医村地帯で進める医療ボランティア活動 ~前編~

社会貢献ジャーナル

「ジャパンハート」がアジアの無医村地帯で進める医療ボランティア活動 ~前編~

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実践することで「医療の届かないところ」をなくしていく

ワッチェ慈善病院での診療。日本の若い医療スタッフが活躍している。ワッチェ慈善病院での診療。日本の若い医療スタッフが活躍している。

「医療の届かないところに医療を届ける」。
そんな高い志のもと、国際医療ボランティア団体「ジャパンハート」は2004年に設立された。
2011年には「認定NPO法人」となり、今年で設立からちょうど10年を迎える。

ジャパンハートが目指すのは、医療を満足に受けられない地域へ医師らが実際に足を運び、愚直に医療を実践していくことを通じて、その地域の発展に寄与することだ。ジャパンハート自身、その仕事の「目的」をこう謳っている。
「ジャパンハートは、医療が届かない場所で失われてゆく『いのち』を一つでも多くつなぎとめるため、医療活動を行っています。

この活動は、貧しさから医療を受けられない人々や、奇形を持ち、苦しみの中で生き続けなければならない人々を、悲しみの淵から救い出していく作業だと考えています」。このことはホームページでも述べられている。

「現在、活動を展開している地域は、ミャンマー、カンボジア、ラオス、フィリピン、タイ、インドネシアなど、アジアが中心です」と語るのは、広報担当の関口有未さん。主な活動は、次に掲げるものだ。

「ジャパンハート」広報担当の関口有未さん(右)と、看護師の栗木幸代さん。栗木さんは海外への派遣経験もある。「ジャパンハート」広報担当の関口有未さん(右)と、看護師の栗木幸代さん。栗木さんは海外への派遣経験もある。


1. 途上国への医療専門家(医師・看護師)の派遣
2. 途上国からの医療専門家の研修受け入れ
3. 海外での無給の医療ボランティア活動
4. 途上国での教育支援活動
5. 医療者不足が深刻な国内の僻地・離島での医療サポート
6. 国内外での医療啓蒙活動
7. 人々のこころを支える活動

「医療の届かないところ」は、何も海外の途上国ばかりにあるわけではない。たとえ先進国であっても、大震災などの自然災害をきっかけに突如、出現することもある。

2011年3月に発生した東日本大震災の際には、甚大な被害を受けた宮城県気仙沼市や南三陸町、石巻市などに医師や看護師を派遣した。派遣したボランティアの総数は実に450名にのぼる。また、被災した子どもたちが自分の思いや感情を表すことで、心の傷が自然治癒に向かうよう臨床心理士がカウンセリングを行う「こころのケア」活動を、震災発生から3年が過ぎた今も宮城県内で定期的に実施している。
こうした活動は、医師や看護師たちのボランティア精神と、個人(中でも医師が多い)や企業からの寄付によって支えられている。

休暇を利用して海外に飛ぶ短期の「医療ボランティア」も

ワッチェ慈善病院の病棟。入院している子どもたちには、家族全員が寝泊りをともにして付き添い、身の回りの世話をするのが、ミャンマーでは一般的。ワッチェ慈善病院の病棟。入院している子どもたちには、家族全員が寝泊りをともにして付き添い、身の回りの世話をするのが、ミャンマーでは一般的。
ミャンマーの中部・ザガイン地区にある「ワッチェ慈善病院」の外観。ミャンマーの中部・ザガイン地区にある「ワッチェ慈善病院」の外観。

とはいえ、ジャパンハートの「主戦場」は、やはり海外である。
その舞台のひとつ、ミャンマーでは、年間約1万2000件の診療と約2000件の手術を行っている。ミャンマーはジャパンハートにとって縁の深い国。ジャパンハートの医療活動は2004年、同国の中部・ザガイン地区にあるワッチェ村の病院を振り出しに始まった。

ミャンマーでの活動拠点である「ワッチェ慈善病院」には現在、2名の日本人医師と10名の日本人看護師が常勤している。同病院ではミャンマー人医師の育成にも力を注いでおり、医薬品や医療器材が限られている中でも継続して医療サービスを続けていけるよう、ミャンマー人医師と協力しながら活動している。また、医師や看護師を目指すミャンマーの若者たちを支援するため、奨学金制度も導入。すでに5名がこの制度を利用して学業を終え、ミャンマー国内の各地で看護師として活躍中である。

ボランティアスタッフには、学生など医療専門家以外の一般の日本人もいる。彼らの仕事は、治療で使うガーゼを作ることや、医療器具の滅菌、スタッフの食事の用意など、医療専門家のサポートだ。

医療専門家のボランティア活動には、数日間から1週間ほどの休暇を利用して実際にミャンマーを訪れ、現地の病院で診療や手術に携わるという、短期の「医療ボランティア」コースもある。十分な医療器具が揃わない環境での「医療活動」とはどの様なものなのかを、短期間で具体的に体験できるというわけだ。

「休暇を使ってできる国際医療支援」についてはこちら

地道な活動と実績が評価され成長し続けるプロジェクト

拠点病院であるワッチェ慈善病院の廊下は、患者や付き添いの家族であふれかえる。中には、遠方から車で5日もかけて治療を受けにくる人も。拠点病院であるワッチェ慈善病院の廊下は、患者や付き添いの家族であふれかえる。中には、遠方から車で5日もかけて治療を受けにくる人も。
ワッチェ慈善病院に入院している小児。そばではお母さんが優しく微笑みかける。ワッチェ慈善病院に入院している小児。そばではお母さんが優しく微笑みかける。

今でこそ、ミャンマーに溶け込み、現地の人々と二人三脚で活動しているジャパンハートだが、ここまでの道のりは決して平坦だったわけではない。活動を開始した2004年当時のミャンマーは、軍事政権下でもあり、安全を確保するため、僧侶たちに守られながらの活動だった。

また、日本の「国民皆保険」のような医療保険制度がない。医療レベルも低く、金持ちは国外で病院にかかり、庶民は祈祷師や民間療法などにすがっていた。そこでジャパンハートは、18歳未満の子どもたちの治療費を無償にした。

そして、地域に根ざした地道な活動と実績が評価され、2012年に同国の社会福祉省と保健省から認定(了解覚書「MOU」の締結)を得る。翌2013年からは、同国北部のカチン州政府より依頼を受け、同州にあるミッチーナ総合病院での医療支援もスタートさせている。
こうして地に足の着いた活動を続けているジャパンハートの軌跡を、次回、さらに追っていく。

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