1. 【第11回】この映画を通じて、麻酔科医の仕事をより理解してほしい ~映画『救いたい』×川村隆枝(国立病院機構仙台医療センター麻酔科医長・手術管理部長)~

著者とモデルを直撃! 医療ドラマ・マンガの裏話を教えます!

【第11回】この映画を通じて、麻酔科医の仕事をより理解してほしい
~映画『救いたい』×川村隆枝
(国立病院機構仙台医療センター麻酔科医長・手術管理部長)~

>>一覧はこちら

『救いたい』(監督・神山征二郎、主演・鈴木京香、三浦友和)あらすじ

映画『救いたい』『救いたい』
DVD ¥4,800+税
発売元・販売元:バップ
©2014「救いたい」製作委員会

仙台医療センターで麻酔科医長を務める川島隆子。仙台市内で開業医をしている夫の貞一と、立場は異なるもののお互いの仕事を尊重しながら暮らしてきた。そんな平穏な日々を2011年3月11日、未曾有の大災害が襲う。被災地での地域医療に従事するため診療所を立ち上げる貞一。隆子は仙台医療センターで多くの患者の手術を担当するかたわら、被災地での地域医療に孤軍奮闘する夫を支える。そして、隆子の部下である麻酔科医・鷹峰純子、純子に恋心を抱く自衛隊員の三崎、川島診療所看護師の吉田美菜ら、隆子を取り巻く人たち。悲しみや厳しい現実を受け入れて乗り越えていくそれぞれの姿を描いていく。

原作は麻酔科医・川村隆枝のエッセー『心配ご無用 手術室には守護神がいる』。川村をモデルとした川島隆子を鈴木京香が熱演、夫・貞一役には三浦友和、さらに貫地谷しほり、渡辺大、中越典子、津川雅彦、藤村志保らベテランキャストも集結。2014年11月に劇場公開されると、各地で反響を呼んだ。

外科医が脚光を浴びるスターなら、麻酔科医は脚本家

川村隆枝氏川村隆枝氏

最近は医療ドラマや漫画が人気ですが、その多くは外科医が主人公で、スポットライトを浴びています。手術現場の中心は執刀する外科医ですが、麻酔科医がきちんと管理をしているから手術が執り行われているということはなかなか表に出ません。重要な任務を負っている麻酔科医の存在感が薄いのではと、歯がゆく思っていました。

例えば、2012年2月の天皇陛下の心臓手術(冠動脈再建術)では執刀にあたられた先生が「神の手」として注目を集めました。確かに素晴らしい手技であったのでしょうが、手術の成功には多くの医療スタッフが関わっていたのです。なかでも麻酔科医の果たした役割は大きなものがあったはずで、毎日多くの手術に携わっている私としては、ちょっと寂しい気持ちでした。

麻酔科医の仕事をきちんと理解してほしい──。そんな気持ちが『心配ご無用 手術室には守護神がいる』というエッセーを書くきっかけになりました。

麻酔には、ご存じのように局所麻酔と全身麻酔があります。局所麻酔は麻酔をかける部分を限定して鎮痛する方法で、担当するのはほとんどが外科医です。全身麻酔を手がけるのは麻酔科医。全身麻酔をかけると、患者さんはいわば眠った状態で手術を受けることになります。麻酔科医の役割は、手術中の患者さんの痛みを取るだけではありません。

医学生たちに麻酔科医の役割を説明する際、私はよく次のような例え話をします。授業を受けているときに、起きて私の話を聞いていれば、仮に私が何かを投げたとしても、避けたりキャッチすることができるでしょう。私たち人間には生まれながらに生体防御システムが備わっていて、しっかりと働いているからです。

しかし寝ていたら、どうでしょう。私が投げたものを避けることができずに、おそらく痛い思いをすることになります。全身麻酔をすることは、この生体防御システムを働かなくさせることと同じです。

麻酔をかけられた患者さんに代わって、生体防御システムの役割を務めるのが麻酔科医なのです。手術は、体にメスを入れていきます。さまざまな生体反応が起こるのは当然です。心拍数や血圧の変化、酸素流量計などをチェックして適切な処置を施すのが麻酔科医の仕事で、手術が終わったときに、あたかも何もなかったかのように意識が戻る──これが良質な麻酔です。手術中に麻酔が切れて痛くなるのでは……という心配は、麻酔科医が手術に付き添っている限りあり得ないのです。

痛みは人類の大敵といっていいでしょう。私も痛みは大の苦手で、患者さんにはできるだけ痛みを感じさせないように配慮しています。手術の技術が格段に進歩している背景には、麻酔技術の進歩──手術の部位や方法、患者さんの状態に応じて、麻酔薬、筋弛緩薬、鎮痛薬、麻薬などを吸入麻酔や静脈麻酔で適正に使用すること──が大きく関係しているのです。

このように、麻酔科医は患者さんに寄り添いながら、外科医がその能力を最大限に発揮できるように環境を作り上げていきます。外科医がドラマ(手術)の主役であるとするなら、麻酔科医は脚本家でもあるといえるでしょう。主役がどんなに素晴らしくても、脚本がつまらなくてはドラマの成功はありません。
こういった思いを込めてエッセーを書きあげました。

未曾有の災害を乗り越えて

こちらの記事を閲覧するには会員ログインが必要です
会員登録する(無料)
会員登録する(無料)

撮影現場は手術室でのチーム医療と似たものがある

こちらの記事を閲覧するには会員ログインが必要です
会員登録する(無料)
会員登録する(無料)