医療動向コラム
医師数問題について
政府発表の医学部定員削減構想を受け地域医療と勤務医を考える

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去る9月13日、「政府が医学部定員の削減検討に入った」と日本経済新聞がスクープしました。目的は、膨張し続ける医療費を抑制するためだそうです。前回までのコラムで解説してきた、20万床削減10年計画がその背景にあることは、疑う余地がありません。
「医師の職場を減らす」という解釈で読み取ることもできないわけではないので、これから医師を目指す人たちだけでなく、現役の医師たちにとっても重要な問題となるでしょう。
医学部定員問題に関するこれまでの紆余曲折を含め、このテーマについて掘り下げてみたいと思います。

青天の霹靂

平成26年秋、政府文部科学省は「平成27年度医学部入学定員の増員について」を公表しました。そこにはまず、これまでの経緯が説明してあります。


  • 1. 昭和57年及び平成9年の閣議決定により、入学定員を7,625人まで抑制。
  • 2. 医師不足に対処するため、平成20年度より増員。平成26年度までに9,069人を増員(平成19年度比1,444人増加)。

次いで地域の医師確保を目的に、平成31年度までの間、地域枠として17大学に対し64人の定員増を認めるとして、大学ごとに具体的な増員数を示しています。繰り返しになりますが、この発表は今からわずか1年前のことです。

1973年1県1医大構想
1984年定員のピーク8,280人。以後2003年まで減員する
2008年再び増員へと舵を切り直す
2015年医学部定員9,134人。過去最高

地域間格差の解消

医師の総数は、2012年時点で303,268人(男女比80.3%:19.7%)と、10年前に比べ4.1万人増えています。2年前の調査に比べると、8,219人(2.8%)の増加です。これを人口10万人対医師数に直すと237.8人で、前回比7.4人の増加になっています。
とはいえ地域間格差は拡大しており、政府は都道府県が実施する医師確保対策を支援するためのファンド設立に予算を拠出してきています。
※都道府県が独自に取り組む医師確保対策については、DtoDコンシェルジュ 地域医療活性化プロジェクト【でくらす】 47都道府県別医師確保支援策検証のページで徹底検証していますので、そちらをご参照ください。

実際に地域枠を導入した一部大学の状況を文部科学省が調べたところ、卒業生の89%が地元医療機関に就職しており、こういった取り組みは一定の成果をもたらしていると評価できそうです。そんな最中での医学部定員削減構想ということになります。
計画では、2020年度から削減を始めるようです。計画の主体は厚生労働省で、10月から検討に入るとのこと。全体の定員を削減する一方、地方の医療機関に就職する学生の枠を広げ、医師の地域間偏在に対応する考えのようです。全体数を削減しつつ地域間格差をどう解消していくのか、容易に両立できるテーマではないだけに、新設される検討会の今後に注目したいですね。

病床削減計画との連動

この構想は入院病床20万床削減計画の具体策と切り離せない関係にあるものと推測できます。医学部定員を減らし医師の全体数を抑制しながら都市部より地方の病床を多く削減したのでは、偏在に拍車がかかることになりかねないからです。

一方で前回も解説したように、急性期病床における入院医療を、今後は高度急性期に特化していく傾向を強めるものと推測されます。ということは、従来の7:1基本料を算定するDPC対象外の病院群における急性期病床を、回復期へ転換させる施策を推し進め、同時に慢性期の病床削減に注力するものと思われます。しかもそれを都市部に重きを置くかたちで進めることが、今回の医学部定員削減計画との両立に効果的な施策となってきそうです。

これからの時代を築く若い医師たちには、地方における高度急性期医療を担っていって欲しいと願っているのだと思われます。

DtoDの視点
忘れてならない政府の政策に、地方創成があります。医療の分野において、本来地域間格差は御法度なはずです。「フリーアクセス」こそ、国民皆保険制度の根幹なのですから。そう考えると、この医学部定員削減構想も、地方創成の一環といえるのかも知れません。

地方における「地域医療」といえば、総合診療医の存在意義が重視されてきています。現在の臨床研修制度における研修プログラムに「地域医療」は必ず組み込まなければならない要素となっていますが、今後はこれに「総合診療」が加えられることとなるかも知れません。より高度な専門性を持つ医師を養成していくことも重要ですが、診断や初期治療において「なんでも診られる総合診療医」の育成は、地域医療を支える最重要視点だからです。

診療科別医師数やその構成比で見れば、まだまだマイナーと思える総合診療医ですが、求められる市場の大きさや伸び率では群を抜いているといってよいでしょう。総合診療医の需要増加にともなった給与の見直しも予想されます。
近年は、総合メディカル株式会社の医師転職紹介事業「DtoDコンシェルジュ」に寄せられる総合診療医に関する相談依頼も多く、転職支援のお手伝いする機会も増えています。地域医療の新しい担い手である総合診療医は、求める側と志す側、双方にとって高い関心事であるといえるでしょう。