1. 病院の現状と今後について

医療動向コラム
病院の現状と今後について
新設された病床機能報告制度と経営的視点で見る病院の近未来

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昨今の病床機能報告制度と病院経営事情について解説していきます。
前回診療報酬改定で触れましたが、入院医療には明確な機能分化が求められてきています。その背景にあるのは、これから説明する「病床機能報告制度」です。これにより、一般病床を持つ民間病院などは、今後明らかな過渡期を迎えることになると思われます。
合わせて2014診療報酬改定や消費増税が与えた経営への影響を含め、病院に関する現況の分析と、近未来に向けた展望を考えていきましょう。

病床機能報告制度

平成26年通常国会において「医療介護総合確保推進法」が成立しました。目的は将来の医療法抜本改正と地域医療提供体制の見直しで、10年にも及ぶ長期計画となっています。その具体策を詰めていくため、医療機関に「現在の病床機能と将来計画の提出」が義務づけられました。

具体的内容

  •  平成26年7月1日現在で有する、4つの病床機能別病床数を報告。
  •  6年経過時点における、4つの病床機能別予定病床数を報告。
  •  同じく2025年(平成37年度)における予定数を報告。※任意
  •  対象は一般病床と療養病床を持つ病院と有床診療所。精神科単科の施設は除外。

4つの病床機能

高度急性期機能急性期の患者に対し、状態の早期安定化に向けて診療密度が特に高い医療を提供
急性期機能急性期の患者に対し、状態の早期安定化に向けて医療を提供
回復期機能急性期を経過した患者の、在宅復帰に向けた医療やリハビリテーション提供
特に急性期を経過した脳血管疾患や大腿骨頸部骨折等の患者に対し、ADLの向上や在宅復帰を目的としたリハビリテーションを集中的に提供
慢性期機能長期に渡り療養が必要な患者を入院させる機能
長期に渡り療養が必要な重度の障害者(意識障害を含む)、筋ジストロフィー患者または難病患者等を入院させる機能

政府が10年後に目指すもの

  •  現在の一般病床を「超急性期・急性期」に機能分化させる。
  •  在宅移行を促進させ、地域包括ケアの中で医療と介護を密着させる。
  •  二次医療圏ごとに綿密な医療計画を立案する(保健所の機能と権限強化)。
  •  在宅医療や地域包括ケアは市町村に責任を持たせる。

2014年7月1日現状報告

高度急性期急性期急性期小計回復期慢性期合計
一般病床190,849578,723769,57259,60586,354915,531
療養病床3312,4562,78750,012265,599318,398
合計191,180581,179772,359109,617351,9531,233,929
構成比15.60%47.10%62.60%8.90%28.50%100.00%

※ 未選択が13,434床あり、上記には含まれていない。

6年経過時点での予定報告

高度急性期急性期急性期小計回復期慢性期合計
一般病床199,492549,306748,79882,70687,676919,180
療養病床1423,6583,80058,722256,188318,710
合計199,634552,964752,598141,428343,8641,237,890
構成比16.3%44.7%60.8%11.4%27.8%100.00%

病院の今と未来
上記した、6年経過後の予定数を確認してみましょう。回復期が約2.5%上昇し、ほぼ同じ割合で急性期小計が下がっています。
高度急性期が増えていることは、政府の想定外かもしれません。しかし急性期が減り、ほぼ同数の回復期が増えているのは、当初の目論見に近いのではないでしょうか。
昨年実施された日本病院会の調査では、2014診療報酬改定で新設された地域包括ケア病棟(回復期に相当)の算定を届出た病床の半数以上が、急性期からの移行となっています。政府は10年で20万床削減という目標を立てていますが、この表を見る限り20万には遠く及びません。今後の動きから目を離さないよう、注意しておきたい箇所です。

同じく日本病院会の調査結果によれば、2014診療報酬改定と消費増税の影響は思いのほか深刻なようです。63%の病院が増収ですが、ほぼ同じ割合の62%が減益となっています。赤字病院の割合も前回調査の58%から66%に拡大。日本病院会は急性期医療を担う大型の病院が中心であり、調査回答病院の半数以上が300床以上の基幹病院です。今後は経営難が原因となり、大型病院から中小の民間病院へ、医師をはじめとする人材が流出する、といった現象が見られるようになるかもしれません。

DtoDの視点
6年後または10年後の将来像を明確に描いておくようにと、それぞれの病院に対し迫ったかたちです。報告の段階では単に「どうしたいか」を訊ねるに留めていますが、各自の希望をそのまま受け入れるわけではないはずです。高度急性期には、施設や人員の基準において相当のハードルを用意するのではないでしょうか。そうなってくると当然、その基準をクリアするためには相応のコストがかかることとなり、病院には経営面と対比した判断が求められることになります。
さらにその前には、再来年春に予定されている消費税の増税という壁が立ちはだかるでしょう。昨年の増税も、医療機関の経営をかなり圧迫していることが日本病院会の調査で明らかとなっています。実に6割を超える病院が赤字なのです。
従事する医師にとって、今後はもっと多角的な視点から勤務先を選ばなければならないのかもしれません。