医療動向コラム
診療報酬改定について
2014年改定の総括と昨今の医療政策から展望する次回改定

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2015年9月初め、来年度政府予算の概算要求が出され、厚生労働省は約7千億円の増額を求めました。来春の診療報酬改定に向けた動きも活発になっていくものと思われます。まずは診療報酬改定という制度の概要を説明し、2014年改定を総括すると同時に2016年改定に向けた方向性を展望していきます。

診療報酬改定とは

定期改定は2年に一度行われます。その内容は、中医協(中央社会保険医療協議会)で話し合われます。中医協は年に数回召集され、臨時改定の要否や定期改定に向けた詰めを行います。ほとんどの医療施設は保険医療機関なので、経営を左右する中医協の動きは多くの関係者が注目するところです。
改定は医療事情や経済情勢などを考慮して決められますが、最近は財務省や厚労省の意見を聞いた上で、全体の改定率を首相官邸が決め打ちしてくるという手法が定着しています。流れとしては、以下のようになっています。

  •  官邸による改定率の提示
  •  中医協が細部を調整し改定項目を官邸に答申
  •  パブリックコメントや公聴会による意見聴取
  •  厚労相による公告

なかでも中医協では、医科だけでなく歯科や調剤薬局についても合わせて協議します。

2014年診療報酬改定

2014年の改定率
前回改定は、診療報酬本体が+0.73%、薬価が▲0.58%で材料費が▲0.05%、トータル+0.10%で決着しました。そしてこの時、消費税率は8%に上がりました。
保険診療は非課税です。つまり医療の最終消費者である受診者は、消費税を負担しません。従って、医薬品や医療材料などを仕入れた際に医療機関が支払う消費税は、そのまま医療機関の負担となります。税率の引き上げは経営の圧迫を招くだけに、日本医師会等の団体は診療報酬改定の大幅引き上げを望みましたが、結果は+0.10%でした。調査によれば、消費税の引き上げは医療機関の経営を思いのほか圧迫してきているようです。

2014年改定の重点課題
1.入院医療の機能分化(高度急性期・急性期・回復期・療養)と在宅復帰促進
2.外来医療の機能分化「診療所の主治医機能」と「大病院の外来縮小」及び「在宅医療の評価」
3.医療・介護の連携強化→地域包括ケアシステムによる在宅移行促進と包括的見守りの仕組み作り

2016年診療報酬改定

政府は向こう10年を見据えた長期ビジョンを立て、前回改定をその出発点と位置づけました。キーワードは「機能分化」・「効率化」・「地域包括」。目指すのは、2025年医療提供体制の再構築です。

  •  「機能分化」将来、治療段階における入院病床機能を明確に区分
  •  「効率化」医療資源や財源を、高度先進医療や高齢者医療に効率的に配分する
  •  「地域包括」在宅への移行を促進するため、入院から在宅までを地域単位で切れ目なくケアする

以下に、今後押さえておくべき政策関連項目を4点挙げます。

注目すべき政策

  • 1. 「骨太の方針2015」「医療・介護情報の専門調査会答申」の行方
     現状では10年間で20万床の病床削減を提唱
     病院完結型から地域包括ケアシステムによる地域完結型へ ⇒ 医療・介護のネットワーク化
  • 2. TPP交渉妥結の行方 ⇒ 自由診療と混合診療の拡大
     TPP交渉の妥結見通しは年内と思われるが、混合診療の解禁には懐疑的な見方が大勢
     混合診療解禁と私的健康保険の解禁は表裏一体(これは事実上の国民皆保険制度放擲といって過言でないので、強行するとは考えにくい)
  • 3. 病床機能報告制度による病床(病棟)機能再編の動き
  • 4. 消費税率10%への引き上げ
     2017年4月引き上げを控え、増税分をどれだけ加味するか(ただし引き上げは再来年の話なので、次回2018年改定で対応するという一時凌ぎがあるかもしれません)

次回改定に向けて

消費税率の再引き上げが先延ばしされました。8%への引き上げを決めた時点で、消費税の増税分は社会保障目的に使途を限定するとされました。当然財務省は消費税率10%を当て込み、予算の将来推計を立案しましたが、増税は先送りされ、社会保障財源は緊縮状態にあります。ということは、次回改定もまた、官邸主導による総量規制が必須となるでしょう。

一方、消費増税が医療機関の経営を圧迫していることもまた厳然たる事実です。さらに、がん・認知症・高度先進医療・再生医療への効率的資源投下も急務です。
次回改定は、財務省と厚労省の綱引きが激化することでしょう。改定の実務を担う中医協には、医療機関の団体や製薬業界なども委員を出しています。今後の動きから、ますます目が離せません。

DtoDの視点
2016診療報酬改定展望に貼った「注目すべき施策」のリンク先2点(「骨太の方針2015」と「医療・介護情報の専門調査会答申」)をご参照ください。ここには、今後の医療費削減に向けた様々な構想が書かれています。特に注目すべきは、削減に貢献する施設に対するインセンティブです。ジェネリック医薬品の使用割合などはその代表的な例ですが、今後は経済感覚を持ち、常にコスト意識を持って診療に当たる医師を養成していきたい、という思いの表れかもしれません。

一部の民間病院などでは、目標とする患者数や医業収益を達成した医師に対し報酬面で上乗せする、コミッション(歩合型)の給与制度を導入しているところもあります。これからは、「患者を呼べる」・「収益や利益に貢献できる」といった要素も医師に求められてくるでしょう。