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日本のヘルスケアを展望する ~2018年同時改定を超えて、見据えるべき医療・介護・医師の未来~

講演 3(1ページ目)

これからの医師の働き方~新しいパラダイム~


連日マスメディアを賑わす働き方改革というキーワード。
応召義務を持つ医療機関では性質が異なるものの、方針決定の期限は着実に迫っている。
厚生労働省で保険局医療課長、保険局長、医務技監と長く医療行政に関わる知見に基づき、
今日から取り組むべき医療機関の働き方改革について解説する。


鈴木 康裕
(厚生労働省 医務技監)

1984年
慶応義塾大学医学部 卒業
秋田県立脳血管研究センター・神経内科にて臨床研修
厚生労働省等にて精神保健、環境保健、食品保健、国際保健、老人保健を担当
ハーバード大学公衆衛生大学院にて修士課程修了
1998~2002年
世界保健機関(WHO)本部(ジュネーブ)にて局長
2003年
栃木県保健福祉部長
2006年
厚生労働省研究開発振興課長として医薬品・医療機器のR&Dを担当
2009年
老人保健課長として介護報酬改定を担当
2010年
厚生労働省インフルエンザ対策本部事務次長
2012年
医療課長として診療報酬改定を担当
2013年
防衛省大臣官房衛生監に就任
2014年
厚生労働省大臣官房技術総括審議官に就任
2016年
厚生労働省保険局長に就任
2017年
厚生労働省医務技監に就任、現在に至る。

現行と改正の法制度

医師の働き方改革は、ハンドリングを誤ると医療の地殻変動が起きてしまう。

全体の医師数は増えているが、偏在している。比較的西日本には多く、東日本と北海道は不足している。また、外科医数は横ばいで、麻酔科や精神科が増えているという傾向がある。

医師不足の問題は、医師の需給(つくる)、医師の働き方(まもる)、地域・診療科の偏在(わける)のどれが欠けてもうまくいかない。

政府の方針で働き方改革をおこなうことになり、法律が改定された。

労働基準法上により労働時間は規制されている。現行では、基本的には1日8時間(1週間40時間)までだが、協定(36協定)を結べば残業が認められる。基本は1か月45時間だが、特別条項を結べば、年間6か月までは無制限にできる。一般企業では繁忙期があるためだが、医療機関には季節性はない。

改正法では、いままで無制限だったところを年720時間の制限ができた。職種により例外があり、医師は別ルールとして、施行期日の5年後まで上限規制を適用されない。具体的な上限等はこれから検討し、2019年3月を目途に結論を出す。

現行法では、36協定を結ばずに残業をさせると罰則がある。36協定以上働かせても罰則はないが、残業手当は払うように指導される。改正法では、上限を超えて働かせると罰金または懲役刑の罰則がある。必ず自院の36協定について確認していただきたい。

規制の対象となる労働者とは、事業に使用され、賃金が支払われている者だ。診療所の医師(経営者)や病院長(管理職)は労働者に含まれない。研修医は労働者に該当するという判例があり、最高裁で確定している。

在院時間のすべてが労働時間というわけではない。労働時間にあたるかは、指揮命令下にあるかがポイントだ。診療ガイドラインの勉強、新しい治療法や新薬についての勉強、翌日の手術についての勉強などは、労働時間にあたる。学会や、院内の勉強会(自由参加)、本来の業務でないような症例報告、論文の執筆(院長の指示なら別)、大学院の受験勉強、専門医の取得(病院側の指示なら別)などは労働時間ではないとみなされる。

いま我々が把握しているのは、在院時間だけなので、医師の労働時間はどうなのかをこれから調査する。

医師には応召義務があるが、応召義務が規定された昭和23年には救急システムがなく、現在とは状況がかけ離れている。いまは救急患者を地域の医療システムで受け止めるようにする規定が大事だろう。

医療法第16条には、「病院に医師を宿直させなければならない」とあるが、これも昭和23年の規定である。当時救急システムはなく、この宿直は入院患者の急変への対応のためで、いまでいう「寝当直」だ。

1晩に1、2回対応する程度の宿直なら、労働基準監督署長の許可を得て、対応時間だけを労働時間とできる。一晩に何度も対応する場合は宿直ではなく、在院時間すべてが労働時間となる。

労働基準法に基づくと、年収1200万円程度の医師が土曜の深夜当直をすると、寝当直なら1晩1.7万円プラス起きて働いた時間の賃金だが、寝当直と認められなければすべて労働時間となり、1晩で8万5千円かかる。これでは、病院経営がもたないだろう。

オンコールについては、当直ではないとした高裁の判決例があるが、状況によって判断が変わる可能性はある。

長時間勤務の医療判断への影響を文献的に調べた研究では、7つの論文のうち4つは影響があり、3つは特に影響はなかった。

子どもがいる女性医師の勤務時間は少ないが、子どもがいないと男女でほとんど違いはない。育児の負担を何らかの形で軽減できれば、女性医師は男性医師と同等に働ける。

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