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日本のヘルスケアを展望する ~2018年同時改定を超えて、見据えるべき医療・介護・医師の未来~

講演 2(2ページ目)

介護医療院の将来展望
~住まいと生活を医療が支えるニューモデルの創設~


2018年介護報酬改定から新設された介護医療院。全国で注目される一方、介護医療院における
提供サービスやプライバシーの配慮、人員配置等に戸惑うことも予測される。
急性期・回復期・慢性期・在宅医療を担う医療法人の経営者として、さらに日本介護医療院協会の初代会長として、二つの立場から介護医療院の理念やあるべき姿等について解説する。


江澤 和彦
(医療法人博愛会・医療法人和香会・
社会福祉法人優和会 理事長、
公益社団法人日本医師会 常任理事、
日本介護医療院協会 副会長)

1988年
日本医科大学医学部 卒業
1996年
医療法人博愛会・和香会理事長 就任
1997年
岡山大学大学院医学研究科 卒業(医学博士取得)
2002年
社会福祉法人優和会理事長 就任
2018年
日本介護医療院協会会長 就任(現在は、副会長) 同6月 日本医師会常任理事 就任、現在に至る
日本慢性期医療協会常任理事、慢性期リハビリテーション協会副会長、一般社団法人日本医療法人協会理事なども務める。

転換の現状

条例施行が遅れて、まだ転換を受け付けられない地方自治体が複数ある。

介護療養、医療療養、療養型老健の3つからの転換は、市町村事業計画が0でも拒否できず、総量規制の対象外となっている。制度上は一般病床、精神病床からの転換もありうるが、実質的には第8期介護事業計画以降で検討していくべきものだろう。

介護医療院への転換は2018年12月末現在、113施設。介護療養病床からが66施設、療養型老健からが27施設、医療療養からが21施設。病床数は12月末現在、7414床。介護療養からが4551床、介護療養型老健から1722床、20対1の医療療養が638床、25対1の医療療養が401床だ。診療所からもの転換も多少ある。

厚生労働省の委託を受け、みずほ総研が「介護医療院開設に向けたハンドブック」を作成し、ホームページで公開している。また、「介護医療院開設に係るコールセンター」が開設されている。

介護医療院開設に向けたハンドブック

現場職員向けの研修会が少ないが、日本慢性期医療協会の中に設置された日本介護医療院協会が、今年6月に研修会を開く予定だ。

介護医療院では、尊厳を保障することが重要だ。介護医療院が提供するサービスは、利用者の意思・嗜好・習慣の尊重(個別ケア)、人生の最終段階における医療・ケア(ACP)、生活期リハビリテーション(心身機能・活動・産科)、廃用症候群の脱却(過剰介護廃止)、自立支援介護(食事・入浴・排泄)、摂食嚥下・栄養・口腔機能・口腔ケア・褥瘡防止、通所リハ・訪問リハ・短期入所、地域貢献(介護教室・出前講座・カフェ・ボランティア・地域づくり)などがある。

アドバンス・ケア・プランニング(ACP)は介入時期が重要だが、介護医療院の利用者は、介入にふさわしい時期の方が多い。

2018年3月に、「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセルに関するガイドライン」が改訂された。ACPでは、本人の意志を最大限尊重するために医療・ケアチームが合意を形成していく。結果よりもプロセスが重視される。

生活施設としての役割

介護医療院における生活施設の役割として、プライバシーの尊重(ハード+ソフト)、居場所づくり(愛着のある物の持ち込み・音楽)、生活環境(トイレ・浴槽・ベッド高・椅子、テーブルサイズ・手すり位置・補助具)、年中行事・レクリエーション開催、地域交流(住民交流イベント・カフェ・社会資源利用)などがある。

病院では治療と管理がメインだが、介護医療院は生活施設だ。現場の職員の意識改革が、非常に重要である。

私は、山口県宇部市と岡山県倉敷市で、病院、老健、グループホーム、訪問看護ステーションなどを運営しており、宇部では、2018年6月1日に介護療養病床を介護医療院に転換した。

個別ケアをめざして、個室やユニットケアにしている。改修の設計は自分でおこない、畳敷きや障子を取り入れた。利用者にとって愛着のある空間や生活をできるだけ提供し、過去の生活にないことをどこまで排除できるか挑戦している。過剰介護はおこなわず、できることは必ず自分でやっていただく。

入浴は、個室で職員とマンツーマンで入ってもらう。要介護5でも可能な技術を確立している。トイレは手すりを工夫し、車いすの人でも慣れれば自分で排泄できるようにした。

地域との交流も活発におこなっている。住民向けに糖尿病やリウマチ教室、介護予防の講座を開いたりする。認知症カフェで、認知症について学んでもらい、地域のリーダーとなる人を養成している。

これらすべての前提となる尊厳の保障を、ライフワークとして、日々取り組んでいる。

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