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日本のヘルスケアを展望する ~2018年同時改定を超えて、見据えるべき医療・介護・医師の未来~

講演1(2ページ目)

急性期病院のこれからの展望


2018年診療報酬改定において、急性期一般入院基本料は
入院患者の医療の必要性に応じた評価体系になり、加えて「退院支援加算」が
「入退院支援加算」に変更され、医療・介護のシームレスな連携の評価体系に刷新された。
急性期病院の院長・名誉院長として長年経営をリードしてきた秘訣について、
改定後の影響を踏まえて解説する。


岡留 健一郎
(社会福祉法人恩賜財団済生会支部
済生会福岡医療福祉センター 総長、
済生会福岡総合病院 名誉院長、
一般社団法人日本病院会 副会長)

1971年
九州大学医学部 卒業
同大学医学部第二外科 入局
1985年
九州大学医学部第二外科講師 就任
1991年
九州大学医学部第二外科助教授 就任
1993年
米国シカゴ大学 留学
済生会福岡総合病院副院長 就任
1998年
同院長 就任 
2009年
全国済生会病院長会会長 就任
2017年
済生会福岡医療福祉センター総長 就任 済生会福岡総合病院名誉院長 就任、現在に至る
一般社団法人日本病院会副会長、一般社団法人全国公私病院連盟顧問なども務める。

福岡総合病院の取り組み

急性期病院は全体的に過剰で、病棟機能・看護配置を維持するか、転換を検討するかの選択を迫られている。在院日数の短縮で空床が増えれば、Downsizingも視野に入れる必要がある。一部の病棟機能を地域包括ケア病棟へ転換するには、地域の承諾が難しい。

急性期病床機能を明確化すると、病床の機能分化と入退院支援の充実、重症度、医療・看護必要度への対応などがスムーズにできる。前方連携、後方連携、高度専門利用の推進により、地域・患者のニーズに対応できる病院づくりが可能になるだろう。

当院では前方連携に力を入れ、地域医療連携室には、副院長を室長に10名ほどを配置。院長、副院長、主任部長、地域連携室で、地域の連携クリニックなどを月に約70施設訪問している。病院は待ちの姿勢ではなく、積極的にアプローチしていくことが必要だ。また、受け入れ可能な疾患は、紹介されれば断らない。紹介後は、経過をかかりつけ医に電話で報告し、症状が安定したら戻す。そういった取り組みを徹底し、外来は紹介患者への特化を進めてきた。

後方連携では、40の連携病院と年1回「地域連携フォーラム」を開催。当院のカンファレンス・回診にも連携病院から週1回参加してもらっている。また、毎週、近隣の51施設から空床情報を収集し、転院調整を遅らせないことで、常に空床を確保している。

介護との連携では、入院前や入院後可能な限り早期に介入。必要に応じてケアマネジャーと共同で退院支援をおこなう。2018年には、市内57か所の地域包括支援センターを入退院支援センターのスタッフが訪問した。地域のケアマネジャーとの勉強会や院内研修会もおこなっている。また、看護師合計28人が、市内の訪問看護ステーションで実習を受けた。医療と介護が寸断されない仕組みを構築するには、地道な取り組みを続けていく必要がある。

ベッドコントロールセンターを設置し、看護師に加えて事務職員を追加した。経営的視点を加えることで、効率的なベッド活用と医療安全の推進の両方が強化された。

また、疾患別センター化をおこなって、診療科の垣根を越えた診療ができるようになり、質の向上につながっている。

これからの病院は、チーム医療だ。患者さん中心の、質が高く効率的な医療を提供できるほか、多職種で連帯感が生まれる、タスクシフティングで働き方改革につながるなどのメリットもある。

当院には、16分野27名の認定看護師がいるが、もっと増やす必要がある。また、将来、看護師の特定行為研修制度からフィジシャン・アシスタント(PA)へと発展していけば、医師の負担軽減につながるかもしれない。

マンパワーの充実、運用・システムの改善、設備面の整備により、働きやすい環境づくりを進めてきた。当院は、100床あたりの医師数、看護師数が非常に多い。医師事務作業補助者を2018年度は40名配置。手術前日の医師の負担軽減が評価される手術・処置の時間外加算1は、7つの科で届出をおこなっている。

各病棟に専属の薬剤師、栄養士、セラピスト(リハビリ)、MSWのメディカルスタッフと、主に事務的業務をおこなう看護補助者を配置。短時間正規雇用制度、時差出勤・時短勤務・夜勤免除、夜勤専従勤務者など、多様な勤務形態を導入している。

当院のDPC係数は、2016年度の改定で低下したが2018年度の改定で上がり、2018年末時点で1.54になっている。兼任を中心に10名のデータ分析専門部署を設置し、データ分析に力を入れている。

急性期病院のこれからの展望

これからの急性期病院に求められる役割は、救急体制の維持、医療の質を落とさない効率的な医療の提供、入院時(前)より在宅・社会復帰を見据えた医療の提供、医療・介護・地域連携のさらなる強化、健全な病院経営などが挙げられる。

職員が、医療を取り巻く環境の変化や地域を理解し、同じベクトルで行動できるように、5年前からバランスト・スコアカード(BSC)の手法を取り入れた。多職種の約70名によるコアメンバー会議を開催し、グループトークで病院の次年度BSC(戦略)策定を検討してもらう。

地域のニーズにこたえるには、医療の質と同時に経営の質を上げる必要がある。そして、さまざまな政策、病院の改革(方向性の決断・戦略・意識改革・職場環境づくり)をおこなうには、どのような変化にも対応できる強い組織力が必要である。

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