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日本のヘルスケアを展望する ~2018年を未来につなげる地域医療づくり~

講演 1

急性期病院における組織改革の方向性


済生会熊本病院、横浜市東部病院で組織改革をおこなってきた実績や、
多くの公立病院、公的病院のアドバイザーとして諸問題を解決してきた経験に基づいて、
これからも厳しく続く外部環境にける急性期病院の
変革の方向性を具体的に解説する。


正木 義博 氏(社会福祉法人恩賜財団済生会支部神奈川県済生会 支部長・常務理事)

正木 義博
(社会福祉法人恩賜財団済生会支部神奈川県済生会
支部長・常務理事)

1975年
早稲田大学商学部 卒業
住友金属工業株式会社 入社
1995年
済生会熊本病院 入職、事務長に就任
2002年
同院副院長に就任
2008年
済生会本部へ出向、
済生会横浜市東部病院 院長補佐に就任
2009年
横浜市東部病院 入職
2014年
神奈川県済生会支部長に就任、現在に至る

組織には、理念とビジョンが必要だ。熊本病院の理念は「医療を通じて地域社会に貢献する」ことである。ビジョンは1996(平成7)年ごろから毎年掲げ、最近は3年ごとに策定している。2017年から2020年は「世界水準の医療を実現する」とした。ビジョンに沿って、全部署がそれぞれ行動計画(事業計画)をまとめている。

ビジョンの推移(1995-2016)熊本病院

外部医療機関との連携医療も重要だ。連携医療では、自分たちが選んだ機能に集中して、地域の医療機関と相互補完することが必要である。
熊本病院は地域の15ほどの病院と戦略的医療連携(アライアンス)を展開し、特に連携を強化している。連携医療機関に対して、技術診療支援として勉強会の開催、技術教育、画像診断支援システムの構築などをおこなっている。また、人的支援、訪問活動による相互理解、連携医療機関への医療支援などをおこなう。連携医療機関からは、早期の患者受け入れ、毎日の空床状況連絡、転帰報告、ケーススタディ、熊本病院の回診参加などの協力を得る。

アライアンス連携の内容

新しい組織による院内連携体制の構築にも力を入れている。
東部病院では、最近、周術期支援センターをオープンした。麻酔科医師を中心とするチームで、必要に応じて手術を受ける患者さんを支援する。
2014年7月から病棟に臨床栄養士を配置している。導入前には57%だった早期退院が導入後には73%になるなど、効果が顕著に表れており、全12病棟に1人ずつ配置する予定である。
包括診療部は、患者さんの重症化、複雑化、高齢化、多様化に対応するために導入した。病院内のかかりつけ医として、医師を含めた多職種が主治医と連携をとりながら診療をおこなう。医師からは、包括診療部の導入により、業務軽減、患者満足度の向上、診療の質の向上などのメリットがあったと評価されている。

包括診療医の役割とアウトカム

熊本病院元院長の須古博信氏の「病床は大切な地域の財産である。自分勝手な使い方は許されない」という言葉を肝に銘じている。
病院経営は満床を基準として成り立つようになっているため、空床が多いと経営を圧迫する。平均在院日数を短くしながら、いかに満床にするかが大切だ。
病床利用率と実際の病床の稼動率は異なる。東部病院は満床だとされていたが、24時時点での病床利用率は80%台だった。熊本病院では、病床利用率は約95%だ。病床管理に関わる組織を創設して、翌日の予約のために空けたままにしない代わり、緊急入院で他科の患者さんを受け入れたら、翌日に最優先で本来の科に移すというルールを徹底している。

病床管理に関わる組織の創設

医療の質を高めるために、2002年にTQM(Total Quality Management)センターを設けた。医療安全管理室、感染管理室、品質管理室からなり、多職種による会議が毎日おこなわれている。

Total Quality Management(TQM)部2015-の活躍 熊本病院

これから先の病院経営では、データが重要になってくる。
東部病院では2018年は前年に比べて機能評価係数が上がり、約9千万円収入が増加する見込みだ。機能評価係数は、救急医療係数、効率性係数、複雑性係数などからなる。東部病院は複雑性が少ないため、今後、複雑性を高くするという戦略が考えられる。
データ分析をして数字で示すと、医師にも理解してもらいやすい。事務職員にはデータ分析能力が求められる。事務職員の仕事は、病院の理念やビジョンに従って、組織をより良い方向へ導く仕組みづくりだ。

医事企画室の主な業務

チーム形成には、リーダーの存在が非常に大事だ。また、みんなががんばれるためには、公平な人事制度が必要だ。
患者さんへの情報提供サービスとして、熊本病院では1996(平成8)年にクリニカルパス(入院診療計画書)を作って入院患者に渡している。5、6年前からは、病気の原因、治療の選択肢、退院後の生活などを疾患別に説明した疾患説明書も作っている。この作成においてもチームが大いに力を発揮した。
これからの病院経営において大事なことは、ビジョンを明確にして地域の信頼を集め、仲間を作ることだ。より質の高い医療の提供も求められる。組織改革に早期着手し、資源を「人」に集中するべきだ。職員が一丸となり困難に立ち向かう文化の醸成が必要だ。