1. WHOが日中韓の伝統医療をICDに追加する方針 漢方薬や鍼灸など地位向上へ

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2018.04.18

WHOが日中韓の伝統医療をICDに追加する方針
漢方薬や鍼灸など地位向上へ

一般にも馴染み深く、日本では医師なら誰でも処方できる漢方薬。鍼灸も含め東洋医学として知られるそうした「伝統医療」が、ついにWHO(世界保健機関)に認定される見通しとなり、広く話題となっています。

ICD(国際疾病分類)に伝統医療の新章追加へ

今回、関係者を通じて明らかになったとされているのは、日本や中国の伝統医療を今春にも開催予定の総会で認定するという、世界保健機関(WHO)の新たな方針です。これが実現すれば、国際的に統一した疾病・傷害・死因の統計分類の体系である「国際疾病分類(ICD)」に、伝統医療の章が加わることになります。

これまでWHOが基準としてきた医療の統計には、アジアをはじめ伝統医療を持つ地域の情報が含まれておらず、西洋に偏っていました。今回新たに伝統医療に注目した理由は、そうした情報格差を埋めるためだとされています。

西洋医学は臨床試験や科学的な研究が進みエビデンスも豊富であり、日本を含めた世界各国で「医療と言えば西洋医学」という時代が長らく続いてきました。そんななか、今回の動きによって、東洋の伝統医療が世界に再評価され地位の向上に役立つだろうという期待が高まっているようです。WHOが伝統医療を公式に認めれば、漢方の有効性についても科学的な検討が進められることになるでしょう。

漢方に通じる医師の需要がさらに増加する可能性も

エビデンスが少しずつ増え、西洋医学と併用して漢方薬を処方する医師も徐々に増えてきている現代。「できるだけ副作用を避けたい」「妊娠中でも服用したい」など、患者さんからの要望に応える選択肢のひとつとして漢方薬に注目している医師もいるのではないでしょうか。

とは言え、科学的なエビデンスがまだ不十分であると、漢方薬の処方を避けている医師もたくさんいることでしょう。その一方で、漢方や漢方薬に詳しい医師の検索サイトに登録する医療機関も着実に増えているようです。

WHOの方針が影響し東洋の伝統医療が世界的に認められるようになった場合、漢方や漢方薬の需要がますます増えるとも考えられます。日本国内はもちろん、西洋医学以外の選択肢として、海外からもいっそう注目されるかもしれません。海外では目新しく、天然素材を用いた漢方薬に良いイメージを持つ人も多いようです。

「生薬の高騰」「漢方薬の保険外し」の行方は

今回話題となったWHOの方針が明らかとなる前から、日本ではたびたび漢方薬についてのニュースがメディアを騒がせています。

漢方薬の材料である生薬は中国からの輸入に頼るところが大きいため、生薬の価格高騰が取り上げられたこともありました。価格が大幅に上がったのは、化粧品向けや食品向けなど中国内での需要が増えたり、ヨーロッパや米国への輸出が増えたりした影響です。これに対し、日本国内では一部の生薬を国産化する計画が進んでおり、農林水産省の支援も得て、徐々に成功を収めています。今後のさらなる需要拡大に、国産化計画はどこまで対応できるのでしょうか。

一方で、財務省では漢方薬の自己負担額引き上げが長らく議題に上がってます。日本東洋医学会の分析によると、財務省はセルフメディケーションの推進に逆行するとして、市販品と同一成分の漢方薬について自己負担額の引き上げを検討しているようです。また、薬によって負担割合が異なる海外の事例があることも引き合いに出されていると言います。今回のWHOの方針は、はたしてこれらに影響を及ぼすのか、今後の動向に注目です。

西洋医学に伝統医療を組み込みやすいのは、日本の医師の強みとも言えます。世界的な認知は良いことばかりに繋がるわけではありませんが、発生する問題や解決法を含め、医師の間でも伝統医療が今後さらに脚光を浴びることになるかもしれません。

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