1. 糖質制限の必要性を示唆する論文にメディアが注目!しかし、研究データに日本や米国は含まれず

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2018.02.02

糖質制限の必要性を示唆する論文にメディアが注目!
しかし、研究データに日本や米国は含まれず

炭水化物や脂質の制限は、健康に良い食生活を考える上でしばしば議論を繰り返しています。2017年には「炭水化物の摂り過ぎは死亡リスクを高める」と解釈できる論文が発表されたことで、日本でもまたメディアを騒がせているようです。

糖質制限は必要?世界的な論文が日本でも話題に

炭水化物の摂取量が死亡リスク上昇と関係しているとする話題の研究論文は、医学雑誌「THE LANCET」で発表されました。タイトルは「5大陸18カ国における、脂肪および炭水化物の摂取量と循環器病および死亡率の関係(PURE):前向きコホート研究」で、この研究には、カナダのマックマスター大学をはじめ、中国、インド、南アフリカ、チリなど、世界十数カ国の研究機関が参加しています。(PUREについては後述)

この発表について、一部の日本のメディアは「米を主食とする日本人にとって衝撃的な事実」と捉え、糖質制限の必要性を裏付けるものとして紹介。脂質の摂取については肯定的な結果が出ている件についても、「低脂肪食が健康にいい」という考えが一般的である日本の常識を覆したとしています。これにより、ソーシャルメディアでも拡散され、大きな話題となりました。

日本人の食生活を疑問視させる研究結果とは

話題の中心となっている研究の概要と結果は、以下のとおりです。

まず、分析対象となったのは18カ国の参加者135,335人(いずれも2003年1月1日~2013年3月31日に登録した35~70歳)で、食事に関するアンケート内容と、循環器病をはじめとした疾病や死亡率との関係性が調査されました。なお、研究者は、参加者の栄養バランス傾向について、各人が摂取している各栄養素から得られるエネルギー量の比率に基づいてカテゴライズしています。

その結果、炭水化物の摂取量が多いほど死亡リスクが高くなっている一方で、脂質の摂取量が多いほど死亡リスクが低くなっているというデータが得られたようです。また、炭水化物の摂取量と循環器系疾患による死亡率、脂質全般の摂取量と心筋梗塞および心血管疾患による死亡率とは、いずれも明確な関連性が見られなかったといいます。ただし、飽和脂肪酸だけに注目した場合は、摂取量が多いほど脳卒中のリスクが下がっているという結果が出ました。

分析対象となった参加国の状況が日本に当てはまるかどうかはさておき、たしかに今回の研究結果は、これまでの研究で明らかにされてきた内容とは異なるものです。米を主食とする日本人においては食生活が糖質過多となる可能性もあるため、より衝撃的に映ったのかもしれません。

コホート研究のデータに日本や米国は含まれず

今回話題となっている論文のタイトルに含まれる「PURE」とは、カナダの人口健康研究所(Population Health Research Institute)がおこなっている長期的な研究「The Prospective Urban Rural Epidemiology study」の頭文字を取ったものです。身体活動や栄養の変化、肥満、高血圧、高血糖、脂質異常、喫煙といった危険因子、および循環器病の発症など、都市化が人々に及ぼす影響の調査を目的としています。

2017年現在、この研究の公式ウェブサイトによると、参加しているのは25の国または地域で、研究データとなる参加者は合計225,000人にのぼるということです。なお、参加国には、日本や韓国をはじめとした生活水準の高いアジア諸国や、脂質消費の高い米国やフランスは含まれていません。

研究者が指摘しているとおり、これまでの研究で利用されてきたデータはヨーロッパや北アメリカのものが中心でした。そのため、栄養過剰の可能性が高い国以外で暮らす人々に、これまでの研究結果が適用されるかどうかは不明です。したがって、今回のように新たな地域のデータが明らかとなった点は、非常に有益だったと言えるでしょう。

これまでにも、人間はさまざまな分野において「常識が覆される」という事態を経験しています。しかしながら、糖質制限はもちろん、新しい発表があるたびに極端な食生活に変えようとする患者さんも少なくありません。センセーショナルな情報が飛びかうときこそ、医師は落ち着いて状況を見極める必要がありそうです。

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