1. 耐性菌「スーパーバグ」の時代に備えて!抗菌薬の処方を判断する医師の手腕

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2017.10.30

耐性菌「スーパーバグ」の時代に備えて!
抗菌薬の処方を判断する医師の手腕

「風邪をひいたら病院へ行って抗生物質をもらう」という人が多かった時代もありますが、抗菌薬が進歩すると同時に、それに対抗する細菌もまた進化を遂げています。抗菌薬が効かない細菌が増えてきている現状を問題視する取り組みがSNSで話題となり、高い関心が集まっていることがうかがえます。

耐性菌「スーパーバグ」で年間1,000万人が死亡すると推計

抗菌薬の開発の裏側で進化してきた耐性菌「スーパーバグ」は、近年徐々に注目されはじめ、今では「近い将来に大きな脅威となりうる問題」として世界的に危惧されています。

日本では、2017年6月に厚生労働省が「抗微生物薬適正使用の手引き」を発表し、その策定の経緯について、「不適正な抗微生物薬使用に対してこのまま何も対策が講じられなければ、2050 年には全世界で年間1,000 万人が薬剤耐性菌により死亡することが推定されている」としています。改めて目の当たりにしたこの数字に、危機感を新たにした医療関係者も多いことでしょう。

また、他方で、1980年代以降、抗微生物薬の開発は縮小傾向にあります。耐性菌が既存の薬剤に対して抵抗力をつけていくなか、薬剤側の進歩にはあまり期待できない状況となっているのです。そのため、不適切な抗微生物薬の使用で耐性菌が育ち、すべての抗菌薬が効かなくなってしまわないようにする方策が極めて重要です。

抗菌薬の処方を吟味する取り組みに世間が注目

国の積極的な取り組みによって、薬剤耐性菌と感染症への対策がますます身近な課題となった今、抗菌薬の処方に関する知識も医療機関やメディアを通して少しずつ一般に広まりはじめました。

ウイルスにも抗菌薬が効くと勘違いしている患者さんから抗菌薬の処方を希望されたり、処方しないとまるで「治療意欲の低い医師」とみなされたり。抗菌薬に関しては、さまざまな経験をしてきた先生も多いかと思います。そうした「風邪には抗菌薬が効く」「抗菌薬をもらわないと治らない」という先入観を持って来院される患者さんもいるなか、一人でも多くの人に耐性菌に対する危機感を持ってもらうことは、医師にとっても大きな意味があります。

耐性菌の現状と知識が広がるにつれてメディアへの反応も大きくなり、むやみに抗菌薬を求めるよりも、不適切な使用回避に取り組む医師の姿がむしろ「真摯で好ましい」と映るようになってきた風潮も読み取れます。

風邪を治療する医師の手腕が問われる抗菌薬回避

冬場、ひっきりなしに来院される風邪の患者さんに対し、それぞれウイルス性か細菌性かをきちんと診断し、必要な薬について理解を得るのは骨の折れる仕事です。外来業務をスムーズにするため「一応、抗菌薬を処方する」という医師も、たしかに存在します。しかしながら、耐性菌の脅威という長期的観点からはに対抗できる医師とそうでない医師の分かれ目です。

たとえば、グラム染色は感染症診療に役立つ微生物検査のひとつとして知られていますが、多少とはいえ手間と時間がかかります。それでも、なかには臨床現場で同検査をおこなう医師もいるとして、メディアに取り上げられた際は大きな脚光を浴びました。まず原因が細菌かどうかを確認し、細菌の種類を特定できた場合にのみ抗菌薬を処方するようにして、抗菌薬の使用を最小限に抑えるというのです。

グラム染色の所見を解釈するには高い技術を要しますが、10年前と比べると診療報酬点数は3倍となっており、国もその有用性を認めていることがうかがえます。いよいよ耐性菌問題の対策が本格化してきたことで、現場への導入に興味を持つ医師が増えそうです。


日常の診療の中で、医師が抗菌薬の正しい知識を一人ひとりの患者さんに伝え、未来を見据えた耐性菌対策に乗り出すことで、抗菌薬耐性菌によって多くの人々の命が失われずに済むかもしれません。

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