1. パーキンソン病患者の筆記を可能にしたい!手の震えを相殺するリストバンドを開発

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2017.08.08

パーキンソン病患者の筆記を可能にしたい!
手の震えを相殺するリストバンドを開発

治療法が確立していない疾患によって身体的能力が損なわれると、患者さんの生活の質は下がり、ストレスやうつの原因にもなりえます。とりわけ働き盛りの患者さんにとっては、大きな問題です。そんななか、パーキンソン病による手の震えを緩和する支援器具のプロトタイプが完成し、その画期的なアイデアやスタイリッシュなデザインが話題となっています。

パーキンソン病患者の補助具をマイクロソフトが開発

米国パーキンソン病協会によると、罹患者は世界に1000万人以上いるとのことです。患者さんの多くは高齢者であるため、一般的には「高齢者がかかりやすい病気」と認識されている傾向があります。しかしながら、高齢者と比べると少ないとはいえ、若年の患者さんもいるのです。

今回、マイクロソフト社がパーキンソン病患者のための支援器具を開発するに至った経緯にも、この若年性パーキンソン病が関係しています。デザイン業に携わる英国人女性が罹患し、振戦がひどくて筆記できなくなった現状とそれを打開しようとする苦悩を著書につづったのです。

それに触発されたマイクロソフト・ケンブリッジ研究所は、パーキンソン病患者に再び筆記を可能にさせる方法を模索。試行錯誤の末、手の震えを緩和する支援器具のプロトタイプを完成させました。

ベルトで利き手側の手首に装着し、筆記に影響を及ぼす振戦を飛躍的に軽減する腕時計のような形のリストバンドです。

手の震えを相殺するリストバンド「Emma Watch」の仕組み

開発されたリストバンドは、そのきっかけとなった患者であるエマさんの名前を取って「Emma Watch(エマ・ウオッチ)」と名づけられました。リストバンドはタブレットのプログラムで制御することができ、稼働させると丸い部分が振動を始めます。この支援具の目的は、その振動によって手の震えを軽減することです。

パーキンソン病では、患者さんの意思にかかわらず振戦を起こす場合があります。開発者の試みは、手首に振動する装置をつけることで、脳が振戦信号を出すのを妨害しようとするものでした。「すでに手が震えている」という情報を脳にフィードバックし、振戦を起こす余計な信号が出ないようにするのです。

開発に協力したエマさんがプロトタイプを試したところ、自分の手で名前を書くことに成功。罹患前のように素早くとはいきませんが、筆記力が飛躍的に上がっています。また、本人にとっては、なにより「再びこの手で書くことができた」という事実がとても重要だったようです。

より効果的なリストバンドの開発と販売に向けて

振戦が起こるメカニズムを研究した結果であるエマ・ウオッチのアイデアは、4人のパーキンソン患者のうち3人に有効であったことから、プロトタイプの作製に至りました。研究者は、今後さらに性能の高い装置の開発をめざし、パーキンソン病が引き起こす障害を感知・監視する人工知能の搭載を検討しているとのことです。また、どのような振動パターンが有効なのかは個々の患者さんにより異なる可能性もあるとしています。

一方、この研究に患者の立場で携わってきたエマさんは、キーボードで文字を入力したりアイラインを引いたりする作業にはリストバンドの効果が発揮されないことを指摘。パーキンソン病との闘いが非常に複雑であることを強調したうえで、エマ・ウオッチを着用して筆記しているときの脳の状態を調べるなど、今後も開発に協力していきたいと述べています。

難病と闘う患者さんや医師にとって、医療分野だけでなく科学技術も強い味方になります。治癒が困難といわれる病気と、できる限りうまく共存するために、患者さんのストレスや不自由を軽減しようとするこの取り組みの今後に期待が高まります。

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