1. 高齢の末期患者については抗がん剤の効果に疑問 厚生労働省が新ガイドラインの作成へ

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2017.06.12

高齢の末期患者については抗がん剤の効果に疑問
厚生労働省が新ガイドラインの作成へ

化学療法はがんの標準治療として、患者さんにとっても医師にとってもなじみの深い治療法です。しかし今回、経済産業省、厚生労働省および国立がん研究センターによる調査結果が、大きな話題となっています。肺がん・大腸がん・乳がんの末期患者において、高齢になると抗がん剤治療の効果がみられない可能性があるというのです。

高齢者に抗がん剤「延命効果が少ない可能性」

2017年4月26日に政府と国立がん研究センターが抗がん剤治療についての調査結果をまとめたとして、翌日に産経ニュースが報じたその内容がSNSで話題となりました。「高齢のがん患者に対する抗がん剤治療は延命効果が少ない可能性がある」とするその調査結果は、今後の標準治療にも影響を及ぼすことになりそうです。

がん治療の選択肢である化学療法は、貧血や吐き気などの副作用を伴うため、いうまでもなく患者さんの体に大きな負担をかけます。とりわけ高齢者においてはがんの進行が遅い場合もあるため、むしろ抗がん剤による深刻な副作用に苦しむ患者さんの生活の質(QOL)の低下を問題視する医師もいることでしょう。そうした状況をふまえた適切な診療基準が、近い将来に明確になるかもしれません。

70歳以上のがん患者1500人の生存期間を調査

今回おこなわれた調査の対象となったのは、2007年から2008年に国立がん研究センター中央病院を受診したがん患者約7,000人のうち、70歳以上の高齢者約1,500人です。そのなかで、抗がん剤治療を中心におこなった場合と、緩和ケアを中心におこなった場合とで、患者さんの生存期間(受診から死亡までの期間)をがんの種類別に比較しています。

その結果、おもに「肺がん」「大腸がん」「乳がん」の末期である高齢患者の場合、抗がん剤治療を受けたかどうかにかかわらず、生存率が同程度にとどまったそうです。つまり、抗がん剤治療が明確な効果を示していない可能性があると考えられます。

肺がん・大腸がん・乳がんの生存率に影響認められず

肺がんを例とした場合、生存期間が40カ月以上であったのは、なんと抗がん剤治療を受けなかった患者さんのみでした。さらに、75歳以上の患者さんだけに注目すると、10カ月以上生存した人の割合は抗がん剤治療を受けなかった患者さんのほうが高く、生存期間も長かったといいます。こうしたデータから、「抗がん剤治療が5年生存率に効果を示さないのでは」という指摘につながったようです。

その一方で、「胃がん」と「肝がん」については、高齢の患者数が少ないため、抗がん剤治療による効果の評価は見送られました。また、厚生労働省は今回の分析結果をふまえ、今後データベースなどを活用してさらなる検証をおこない、年齢や症状に応じたがん治療の新しいガイドラインを作成する方針とのことです。

高齢社会となった現代日本において、がん治療のあり方を再検討するこの機会はとても重要かもしれません。新たに生まれるガイドラインは、患者さんの人生にとって重要な「生活の質」を維持するだけでなく、国にも患者さんにも負担の少ない適切な診療の意思決定につながりそうです。

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