1. 福島の子ども甲状腺がん検診の方針が話題に被災者へのがん検査をめぐる論争

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2017.04.18

福島の子ども甲状腺がん検診の方針が話題に
被災者へのがん検査をめぐる論争

2017年3月で、福島の原発事故から6年となります。放射線による健康被害調査もそれなりに進み、被災者の子どもたちの一部を対象に実施されている甲状腺がん検診の結果を耳にした人も多いことでしょう。しかし、今後の検診を自主参加制にするという方針には反対の声もあり、大きな話題となっているようです。

福島の子ども甲状腺がん検診を巡る論争

2016年9月26・27日の2日間、甲状腺がん課題についての国際専門家会議が福島県でおこなわれました。この会議は「福島における甲状腺課題の解決に向けて~チェルノブイリ30周年の教訓を福島原発事故5年に活かす~」と題され、チェルノブイリ周辺はもちろんドイツや米国などからも放射線防護の専門家が参加しています。

被災者の健康を守るため、福島県は2011年より甲状腺がんの検査を重点的に実施してきました。対象者は事故当時0~18歳だった子どもたちで、今回の会議の結果として日本財団がまとめた提言書によると、2016年10月31日の時点で約30万人が検査を受けているとのことです。

その中で同財団は、多くの被災者が陽性と診断されている結果について、高性能な超音波診断機器を導入したことによるスクリーニング効果(過剰診断)であるという見方を示しています。これは、「福島から離れた地域でも同等の検査結果が出ている」「チェルノブイリの事例とは発症者の傾向が異なる」など、甲状腺がん患者の増加を放射線の影響と断定するのは難しいという見解によるものです。しかし、今後の検査を自主参加制にするという方向性については賛否両論があり、福島県知事へ反対の意を示す申し入れ書も提出されています。

甲状腺がんに対するイメージと被災者の声

甲状腺がんの約9割を占める乳頭がんは、極めてゆっくりと進行します。リンパ節に転移した場合でも、切除手術をはじめとした治療の予後もよいとされているがんです。しかし、そうした医療業界での認識に関わらず、「がん」という重い言葉に不安を覚える人はたくさんいます。我が子や自分自身がそうかもしれないとなればなおさら、無理もありません。また、がんに理解のない周囲から向けられる視線も、被災者が被る精神的な負担のひとつです。

さらに、2016年に設立された「3・11甲状腺がん子ども基金」の代表理事を務める崎山比早子さんは、被災者の経済的な負担についても指摘しています。彼女は同基金の設立シンポジウムの際、実際に細胞診で陽性と診断された患者さんの言葉を代読し、指定した場所と日時でしか検査を受けられないという問題点を示しました。6年経った今ともなると、地元を離れ遠い地で新生活を始めている被災者もおり、検査を受けるために時間と交通費を捻出(ねんしゅつ)しなくてはいけない現状は、彼らにとって一段と厳しいものなのです。

放射線問題に敏感な海外から寄せられる疑問

たとえばベラルーシでは、チェルノブイリの事故から30年以上経った今でも、政府が汚染地域の子どもたちに年2回の定期健診をおこなっています。検査の目的は甲状腺がんの発見だけでなく、眼科・歯科・血液・尿などの健診も含まれているとのことです。さらに、汚染地域に暮らす子どもたちを対象に、1カ月間にわたる非汚染地での長期保養を国家予算で毎年実施しています。そのため、先述の国際専門家会議にベラルーシから参加した専門家は、提言の内容に疑問を覚えたかもしれません。

今回は、会議に参加した専門家の氏名がいくつか提言に記されていないことや、会議から提言の提出まで3カ月かかっていることなどもメディアに指摘されています。なお、提言下部にある専門家一覧から除外になっているのは、ロシア、ベラルーシ、ウクライナといった、チェルノブイリ関係者がほとんどでした。彼らは、会議の中で、早期診断や今後の長期的なデータ収集などの重要性を主張していたとのことです。

目に見えないものに対する警戒姿勢や、不確かな根拠など、この問題の核心にはどうしても不明瞭な要素が多く含まれます。どのような方向に進もうと、少なくともがん患者さんが必要な治療を確実に受けられる形に収まってほしいものです。

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