1. 「患者さん」呼称に戻った病院が圧倒的に多数!「患者さま」に変更した当時を振り返る

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2016.12.19

「患者さん」呼称に戻った病院が圧倒的に多数!
「患者さま」に変更した当時を振り返る

およそ2000年代から始まり一時は半数以上の病院が実施を試みた、患者さんへの「さま」付け。メディアに取り上げられるたび、いまだに人々の関心を集め続けている話題です。患者さんを「○○さま」と呼称することで実際の現場にどのような変化が起きたのか、また、「さま」付け導入にはどのような経緯があったのか、当時を振り返ってみましょう。

作業療法士が当時「患者さま」と呼ぶことで起こった変化を証言

2016年9月、大手新聞に掲載されたあるコラムがたくさんの人々にシェアされ話題となりました。その内容は、病院での患者さんに対する「さま付け」について。京都府に住む作業療法士が、10年ほど前に勤めていた病院で患者さんのお名前を呼ぶ際に「さん」ではなく「さま」をつけるように変更した当時の様子を証言したものです。

そのコラムによると、患者さんを「○○さま」と呼称することで、一部の患者さんに変化が現れたといいます。態度が横柄になり、なかには病院のスタッフに危害を加える人までいたそうです。しかし、コラムの読者がさらに震撼(しんかん)したのは、その後の内容でした。なんと、「○○さん」という呼び方に戻しただけで、そうした方々の態度も元に戻ったというのです。

まるで心理学実験のような現象ですが、呼称が人間にもたらす影響は侮れません。日本には「お客さまは神さまです」という考え方が根付いているため、患者さんは「○○さま」と呼ばれることでご自身を「お客さま(患者さま)」と認識し、病院スタッフとの然るべき関係が崩れたものと考えられます。

厚労省の本来の意図が伝わらなかった原因のひとつはマスメディア

日本医療学会よると、そもそも病院の間で患者さんの呼称を「さま付け」に変更しようという動きが広まったのは、厚労省が2011年に発表した「国立病院等における医療サービスの質の向上に関する指針」がきっかけであるとのことです。

本来「さま付け」は、国民の信頼確保と質の高い医療の提供を目的として、国立病院などの体制を整える具体的な方策のひとつとして示されたものでした。指針には、あくまで「さま付け」は丁寧な対応をするための原則であり、診療や検査などの状況に応じて従来どおり「さん付け」する、という記述もあります。

しかし、現場のスタッフには、これが患者さん対応の質向上に取り組む一環であると認識されるよりも、まるで「新しい呼称ルールができた」かのように強調されて伝わったとも考えられます。また、マスメディアがその現象を取り上げ、「厚労省による『勧告』があり、病院スタッフは患者さんを『患者さま(○○さま)』と呼ばなくてはいけなくなった」というゆがんだ解釈を国民に向けて発信した影響も大きかったことでしょう。そうした経緯があり、「さま付け」呼称の本来の意図が、ますます理解されにくくなってしまったようです。

サービス業のひとつとは言い切れない医療業界では「さま」に違和感

2016年現在、「患者さま」は定着せず、ほとんどの病院が元どおり「患者さん」呼称に戻っています。そうした方向に落ち着いたのは、患者さん側に「さま付け」呼称が不評であったことも大きな原因だったようです。
実際に、病院で「○○さま」と呼ばれることで、多くの患者さんは違和感を覚えたといいます。これもまた、「さま付け」によって「お客さま扱いを受けている」気分になった結果ではないでしょうか。

国の管理下で国民皆保険を財源として賄われている医療施設は、本来公共財です。その病院にやってくる患者さんを「お客さま」とする考えは適切ではありません。「病院」と「お店屋さん」が明らかに異なるということは多くの患者さんが理解しています。
そこで、「○○さま」と呼ばれた患者さんのなかには、丁寧な対応を受けたというよりもむしろ、病院との信頼関係にヒビが入ったように感じた人もいたようです。

病院のスタッフによる患者さんの対応をめぐる問題は、メディアでもしばしば取り上げられます。しかし、医療機関と患者さんがよりよい関係を築くためには、やはり機械的な呼称の変更よりも、スタッフの対応スキルを上げるための適切な教育と訓練が必要だと言えそうです。

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