1. 医師の法的安全を確保する必要があるのでは?飛行機内での「ドクターコール」への対応

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2016.11.09

医師の法的安全を確保する必要があるのでは?
飛行機内での「ドクターコール」への対応

「ただいま、当機内で急病人が発生いたしました。お客さまの中に、お医者さまはおられませんでしょうか?」 学会出張や旅行で飛行機を利用する医師は、機内でそんな「ドクターコール」を聞くことがあるかもしれません。ただし、ドクターコールに遭遇した場合、応答をちゅうちょするケースもあるようです。

訴訟を懸念するあまりドクターコールへの応答をちゅうちょ

飛行機の中で急病人が発生しても、医師がドクターコールに応じなくてはいけないという規則はありません。応答するかどうかは、あくまで医師のボランティア精神に委ねられています。

応じれば長時間にわたり「医療行為」をすることになる場合もあるため、ドクターコールに名乗り出る際には少なからず覚悟が必要です。なかには、「患者さんとのコミュニケーションの問題があるため、日本語でドクターコールがあった場合のみ応じる」「内科の医師が名乗り出るかどうか少し待ち、だれもいなければ応じる」など、独自の条件に則って行動している医師もいるといいます。

そして何より、急病人の発生した飛行機に乗り合わせた医師の頭によぎるのが、訴訟問題です。機内で可能な限り手を尽くしたにもかかわらず、法廷に呼び出される可能性もゼロではありません。航空会社がボランティア医師の責任を一切問わないと明言してくれない限り、ドクターコールへの応答をちゅうちょする医師がいるのは仕方のないことです。

日系エアラインの機内設備と名乗り出た医師の限界

もしも、ドクターコールに名乗り出た場合、航空機内で一体どの程度の処置が可能なのでしょうか?日系エアライン全日本空輸(ANA)と日本航空(JAL)のウエブサイトで発表されている機内搭載品は、以下のとおりです。最近はすっかりAEDも標準的な搭載品となっています。

ANAの搭載医療品
  • 医療用具:AED、心電図モニター、聴診器、電子血圧計、パルスオキシメーター*、縫合セット*、注射器、点滴セット、ポケットマスク・アンビュバッグ、気管内挿管セット*、液体吸引セット*、ネラトンカテーテル* など
  • 医薬品:電解質溶液*、5%・20%ブドウ糖溶液、ボスミン、硫酸アトロピン、ブスコパン、水溶性ハイドロコートン、ネオフィリン、ニトロペン、ネオマレルミン、ブスコパン など
*マークのあるものは、国際線のみ搭載
JALの搭載医療品
  • 医療用具:AED、心電図モニター、聴診器、血圧計、電子血圧計、パルスオキシメーター、血糖測定器*、点滴セット、リザーバー付アンビュバッグ、気管内挿管セット*、液体吸引セット*、ネラトンカテーテル* など
  • 医薬品:生理食塩液、アドレナリン、リドカイン*、ブドウ糖液、クリトパン*、アトロピン、アミノフィリン、クレイトン、ブスコパン、メチルエルゴメトリン*、ニトロペン、ニフェジピンカプセル、クレマスチン錠*、オフロキサシン錠* など
*マークのあるものは、国際線のみ搭載

以上のとおり、飛行機の中では病院に運ばれてきた患者さんと同じように対応することは困難です。いくら優秀な医師にでも、できることには限界があります。

あくまでボランティアが期待されるドクターコールの実情

「ボランティア」というだけあり、機内でおこなった医療行為に対する報酬は定められていません。たとえ5時間、6時間にわたって患者さんに付きっきりになったとしても、原則として航空会社が示す感謝の形は、「お礼状」や「数千マイル付与」となります。「その程度ならば、いっそ何もくれないほうがスッキリする」と、なかにはこれを快く思っていない医師もいるようです。

また、JALやANAを含め、医師の登録制度を設けている航空会社も増えています。これは、事前に医師本人が航空会社に身分を登録しておくことで、乗客の中に医師がいるかどうか把握できるというシステムです。こちらもやはり規則ではなく、あくまでも任意。これに対し、現役医師たちからは「医師だけでなく、看護師も登録すべきでは」「登録するのが嫌なわけではないが、登録方法が煩雑すぎると見送ってしまう」などの声が上がっています。

医師であるという責任感と正義感によって、人の命を救うことに対する尽力をいとわない医師はたくさんいることでしょう。ボランティア医師の心意気を無下にしないために、少なくとも彼らの法的安全が確保されてほしいものです。

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