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地域医療の現状と医師招聘の取り組み(後編)

地域医療改善への取り組み ─ 実例を通じて伊関友伸(城西大学経営学部マネジメント総合学科教授)

地域に医療を残すために何が必要か。今回は具体的な事例を挙げて考えてみたい。紹介する事例を通じて言えることは、医療人材の大切さである。条件の悪い地方の病院こそ、医師・看護師が勤務したいと思うような地域にしていくことが重要である。

医師研修力の向上(市立福知山市民病院)

市立福知山市民病院

京都府福知山市にある市立福知山市民病院は、「教育力がなければ病院に未来はない」と考え、2008年度に医長2名で総合内科を立ち上げ、医師教育を積極的におこなった。

熱心な指導が評判となり、若い医師が集まり、2016年度はスタッフ・専攻医9名(+大江分院に4名)の体制まで拡充している。初期研修医も2008年度は管理型1名、たすきがけ(京都府立医科大学との交換研修)2名が、2016年度には管理型9名、たすきがけ4名となっている。

研修医が集まるとともに常勤医も増え、市立福知山市民病院の総医師数は2005年に常勤医41名であったが、2016年4月現在、常勤医79名(専攻医・大江分院含む)+初期研修医13名となっている。
2012年3月には、京都府北部で初の地域救命救急センターの指定を受け、病院としての勢いを増している。

地域が一体となった医療者教育機能の充実(ちちぶ医療協議会)

ちちぶ医療協議会

埼玉県の秩父地域では、総務省の定住自立圏構想に基づく「ちちぶ定住自立圏共生ビジョン」の医療分野における組織として「ちちぶ医療協議会」を立ち上げている。

協議会は秩父地域1市4町で協定を締結させた。
そのうえで行政からの財政支援等により、秩父市立病院・国保町立小鹿野中央病院・医療法人花仁会秩父病院・医療生協さいたま秩父生協病院(民医連)・皆野病院(徳州会)の5病院と秩父郡市医師会が共同して地域の医師を含めた医療者の研修体制の充実に取り組んでいる。
初期臨床研修の地域医療実習の受け入れ(2015年度で54名)なども積極的におこなわれている。

病院の統合再編による研修機能の向上(中東遠総合医療センター)

中東遠総合医療センター

病院を統合再編し、医療機能や医療者の研修機能を向上させることは時代の流れである。

静岡県の「中東遠総合医療センター(500床)」は、旧掛川市立総合病院(450床)と旧袋井市民病院(400床)の統合病院である。
医師を派遣する名古屋大学医学部・浜松医科大学が、両市が別々に中規模病院を建築しても、それぞれに医師の派遣をすることは難しいという見解を示したことが統合のきっかけであった。

2013年4月に「掛川市・袋井市病院企業団」が設立され、同年5月に中東遠総合医療センターが開院する。開院の時点で80名の常勤医師が勤務していたが、2016年4月には99名に増加、研修医も8名から19名に増えている。診療の提供力を示すDPCの調整係数Ⅱも2016年度は0.0854で静岡県内のⅢ群病院で1位、全国では20位に位置している。

看護師雇用に努力(長崎県病院企業団上五島病院)

長崎県病院企業団上五島病院

交通条件の悪い地方においては医師だけでなく、看護師不足が深刻である。
長崎県病院企業団上五島病院では7対1看護の導入による病院間の看護師争奪戦の影響で、2007年の看護師数が前年度比10%減という事態に追い込まれる。

病院では、①新規看護師の島内への呼び込み(町役場のホームページでの求人、病院ホームページのリニューアル)、②看護師奨学金制度の復活、③島内潜在看護師の発掘、④島外での就職説明会、⑤福利厚生の充実(託児所の充実・院内外研修充実)の5つの戦略に取り組む。

2008年には、国際医療ボランティア団体である特定非営利活動法人ジャパンハートとの連携が実現。海外で総合的な能力を身に付ける研修として看護師の派遣を開始し、7年間で31名の看護師が派遣されている。

2010年度には、都市部の大規模病院から離島の病院へ離島勤務研修として1年間勤務をおこなう「アイランドナースネットワーク事業」が開始される。研修をおこなう看護師にとっては、離島の医療を経験でき、能力の向上を図るとともに、元の職場に籍があることで退職金が通算されるメリットがある。

2013年度には、長崎県立大学シーボルト校の協力を得て、離島医療機関等での看護研修を目的とした「五島列島SHIMAナース研修」のプログラムを作成し、研修者を受け入れている。

病院をあげた看護師雇用対策と病院の再編による看護師の異動により、2008年に78名であった看護師数が、2013年には103名に増加する。その結果、人員不足で検討されていた病棟閉鎖の危機を免れ、10対1看護を継続できている。

住民が病院・医療者を支える(兵庫県立柏原病院)

兵庫県立柏原病院

医療者が集まる病院・地域にするためには、住民の協力が必要である。
最近、住民(患者)自らが、「当事者」として、地域の医療を守ろうという動きが、全国に広まりつつある。

その運動で最も有名なものとして、兵庫県丹波市の「県立柏原病院の小児科を守る会」がある。過酷な勤務に疲れ、地域から立ち去ることを決意した小児科医を引き留めるため、母親たちが市民に向けて適切な医療の受診を訴えた。

「コンビニ受診を控えよう」「かかりつけ医を持とう」「お医者さんに感謝の気持ちを伝えよう」という3つのスローガンは、地域の住民に広まり、軽症での休日夜間の受診は激減した。退職を決意した小児科医も病院に残ることになった。

現在、県立柏原病院の医師数は、内科医の研修体制を再建したことと、地元大学の支援もあって、最も減少した2008年の常勤医18名、初期研修医0名から2016年4月の常勤医34名、初期研修医11名に増加している。
「県立柏原病院の小児科を守る会」の運動に学び、地域の病院・医療者を支えようとする運動はさらに全国に広がっている。

伊関 友伸(いせき ともとし)
伊関 友伸(いせき ともとし)東京都立大学法学部法律学科卒業。東京大学大学院法学政治学専攻科修士課程修了。埼玉県職員を経て2004年より城西大学経営学部マネジメント総合学科教授。総務省公立病院に関する財政措置のあり方等検討会委員や夕張市病院経営アドバイザーなど、数多くの国・地方自治体の委員等をつとめる。近著に『自治体病院の歴史』(三輪書店)など

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