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地域医療の現状と医師招聘の取り組み(前編)

地域に医療を残すために何が必要か伊関友伸(城西大学経営学部マネジメント総合学科教授)

深刻な危機が続く地域医療

マスコミの報道は減少しているが、地域医療は相変わらず深刻な状況にある。全国の病院を訪問して感じるのが病院の二極化である。図1は公立病院の経営主体別医業収支比率の推移である。他の経営主体が改善傾向にあるのに対して、町村立病院が2004年度の89.7%から2013年度の82.5%に急激に収益状況を悪化させている。さらに、図2は病床規模別の医業収支比率の推移である。300床以上の病床規模が大きい病院は改善の傾向にあるが、199床以下の中小病院の経営は悪化の傾向にある。特に50床未満の病院は2004年度の81.2% から2013年度の71.3%に大幅に悪化している。地方の中小病院の経営が厳しいのは公立病院だけではなくすべての経営主体の病院に当てはまると考える。

この最も大きな要因は医師不足である。2004年度から始まった新しい医師の臨床研修制度は、医師の勤務先の流動化を招き、大学医局の医師派遣能力の低下を生んだ。今まで、医師を送っていた大学医局は、所属する医師の減少により病院から医師を引き揚げる動きが起きた。
その後、交通の便のよい都市部の大病院は医師研修体制を充実させ、初期・後期研修医など若手医師が勤務することで医師数を増加させる病院が少なくない。しかし、地方の病院や中小規模の病院の多くは医師研修体制を確立する余力がなく、大学医局からの医師派遣も細ったままで、なかなか医師数が増えない状況にある。

また、医師不足に加えて看護師や医療技術職などの医療人材不足も大きく影響している。医師と同様に、都市部の病院や大きな病院に勤務する傾向が強く、研修力の弱い地方の病院や中小病院は若い医療職員の雇用ができず、高齢の職員だけで運営しているところが少なくない。高齢の職員が定年退職した後は、入院などの機能を維持できなくなることが確実となっている病院も存在する。

加えて診療報酬制度も中小病院に対して厳しい傾向にある。図3は、医療費1件当たりの寄与度を時系列で比較したグラフである。昭和後期までは、薬や注射などに診療報酬が重点的に配分され、その薬価差益が主要な収益源であった。この時代の病院は小売業的性格が強く、少ない職員数でも収益を上げることができた。しかし、現在は、手術やDPCなどにみられるように診療報酬は技術に対して適切に配分されることをめざしている。病院は医療サービスを高度化、充実させて収益を上げる業態になったといえる。つまり人を雇わなければ利益が得られないようになった。医療人材雇用や研修の面で力の劣る地方や中小病院は、収益の点でも厳しい現実に直面している。

  • 図1.公立病院の経営主体別の医業収支比率の推移
  • 図2.公立病院の病床規模別の医業収支比率の推移

地域における病院の存在意義 ~人材投資の重要性~

条件の悪い地方の病院や中小病院が医療を継続するために何が必要か。医療人材の集まる病院、地域をつくるには「特長のある医療」「地方や中小病院でも研修体制が充実している」「働きがいのある病院」が必要である。医療は高度な対人サービスを提供する知的労働者の側面があるので、研修・研究の機会が与えられる場所に優秀な人材が集まる。地方や中小病院こそ研修等を充実させ、魅力を高める必要がある。

筆者は人材育成については、地元行政が支援をおこなうことが必要と考える。2014年、政府は「まち・ひと・しごと創生総合戦略」を策定した。これは地方から東京圏への人口流出に歯止めをかけ、「しごとの創生」と「ひとの創生」の好循環を実現すること。人口減少を克服するために、若い世代が安心して就労し、結婚し、妊娠・出産・子育てができるような社会経済環境を実現することをめざしている。

図4は、過去10年間での産業別・地域別就業者数の増減の状況である。東京圏・三大都市圏以外の地域では、医療・福祉以外の大部分の産業で就業者を減らしている。逆にいえば、医療・福祉分野は地域存続のための最重要産業なのである。
全国をみると、たとえば、島根県の邑南町は川本町・美郷町とともに公立邑智病院(一般病床98床)を運営するが、小児科・産婦人科・救急医療を充実させることで子育て中の親をはじめとする地域の住民の安心を生み、邑南町の他の子育て支援政策と相まって、2005年にマイナス85人の社会減が2013年には20人の社会増に、2012年の合計特殊出生率が2.65となるなどの成果を生んでいる。
しかし、残念ながらまだ多くの地域において、病院の医療人材についての意義に十分な理解が少ないように思われる。医療人材は地域の存続のための宝である。住民(患者)も「お客様」ではなく、地域医療の「当事者」である。医師・医学生や看護師・看護学生などの医療人材の育成のために、病院と地域が一緒になって協力できることが重要な時代になってきている。

後編では具体的な自治体の取り組み事例をみていきたい。

  • 図3.医療費1件当たりの寄与度
  • 図4.過去10年間での産業別・地域別就業者数の増減
伊関 友伸(いせき ともとし)
伊関 友伸(いせき ともとし)東京都立大学法学部法律学科卒業。東京大学大学院法学政治学専攻科修士課程修了。埼玉県職員を経て2004年より城西大学経営学部マネジメント総合学科教授。総務省公立病院に関する財政措置のあり方等検討会委員や夕張市病院経営アドバイザーなど、数多くの国・地方自治体の委員等をつとめる。近著に『自治体病院の歴史』(三輪書店)など

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