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プライマリ・ケアの本質とこれからの地域医療(中編)

新たな専門医制度案には、第19の専門領域として「総合診療医」が盛り込まれました。
総合診療の根底にある「プライマリ・ケア」、そして総合診療医の役割と求められるスキル、医療制度、地域医療との関わり――今後の医療を語るうえで欠かせないこれらの視点について、日本プライマリ・ケア連合学会理事で、地域医療振興協会 地域医療研究所所長の山田隆司先生にお聞きしました。

山田 隆司氏
山田 隆司(やまだ たかし)地域医療振興協会 地域医療研究所所長
岐阜大学地域医療医学センター特任教授
日本プライマリ・ケア連合学会理事

1980年自治医科大学卒業。県立岐阜病院での研修後、揖斐郡久瀬村診療所(現揖斐郡北西部地域医療センター)でおよそ20年間第一線のへき地医療に従事する。その後公益社団法人地域医療振興協会の枠組みで多数の自治体医療機関の再建に関わる。現在地域医療振興協会副理事長、台東区立台東病院管理者、日本専門医機構総合診療専門医に関する委員会委員などの役職も兼ねている。

新たな専門医制度と総合診療医

イギリスやアメリカにみる、総合診療のあり方

山田 隆司氏

日本で総合診療やプライマリ・ケアを志す若い医師は、残念ながらそんなに増えているとは言い難いですね。そもそも、そうした医療というのは、医療制度や社会での位置付けが確立していないと力を発揮しにくいのです。

たとえばイギリスでは、最初にかかる医師は、自分で選んで契約したGP(General Practitioner)と決められています。ひざが痛くてレントゲンを撮ってほしくても、まずはGPの診察を受けます。そこで必要であれば整形外科への紹介状を書いてもらい、それを持って病院を受診します。そうすればその返事はGPのところに戻って来るので、紹介先でのヘルスレコードもGPのもとで一括管理できます。

そういう制度があるからこそ、GPはNHS(国民保健サービス)の要となっており、イギリスの医師の約3割を占めているのです。一方で直接病院や専門医へかかれない、頭が痛いと言ってすぐにCTやMRIを撮ってもらえない、入院待ちをしなくてはならないといったアクセスに関するデメリットも取りざたされますが、総じてGPが身近にいて地域住民から信頼を得ているという面では、イギリスのNHSは一定の成果をあげています。

一方で、アメリカでは1970年代に家庭医(Family Physician)が専門医の仲間入りをしましたが医療制度の中で患者さんが内科のクリニックへ行くか、家庭医のクリニックへ行くかは選択可能です。皆が最初に家庭医のところに行くわけではなく、言ってみれば非常に競合的な環境のなかで仕事をしています。しかし家庭医療(Family Medicine)は1つの専門性としてすでに確立されており、アメリカではおおむね医学部卒業生の10数パーセントが家庭医の道を選んでいます。

日本でどのように家庭医、総合診療医を育てていくかは、今後の医療制度の設計にも大きく関係する問題です。諸外国の例を見ても家庭医・総合診療医は今後の超高齢社会を迎える医療システムのキーマンとして期待されているだけに、専門医制度の確立および今後の制度設計は極めて重要な課題なのです。

「家庭医」と「病院総合医」


※画像はイメージです

新たな専門医制度上で、第19番目の基本領域として組み込む予定で議論を進めている「総合診療医」ですが、実は他の18領域とはやや性質が違います。これまでの18領域では、専門の疾患・手技が存在し、他と交わることがない、いわばわかりやすい専門性です。小児科、産婦人科、脳神経外科、皮膚科―といった区分は、年代や性別、臓器によって分かれているので専門性が明確です。

ところが総合診療というのは、他のすべての専門領域と重なり合う部分があります。内科であれ、小児科であれ、他の専門領域の対象患者を重なり合って診療するという仕組みが生まれます。ここがなかなか難しいところで、総合診療医としての守備範囲や、想定される医師像を定義しにくい分野だといえるのです。

また総合診療医の領域内には2つの役割が想定されています。それは、いわゆる診療所の“家庭医”としての役割と、地域の病院における“病院総合医”としての役割です。前者は、ここまでお話ししてきたような、その地域に長くかかわって健康問題の窓口的機能を担うかかりつけ医、プライマリ・ケア医のイメージです。

そして後者は、地域の病院などで、さまざまな問題を抱えた患者さんの病棟管理や全科当直を担当するジェネラルな医師というイメージです。専門分化が進むことで各診療科に特化した専門医は確かに増えましたが、総合的に患者さんを診ることができる医師は必ずしも必要なだけ増えてはいません。

地域の患者さんを支えている中小の病院では、医師数が10人前後ということも多く、循環器が専門の医師が肺炎の患者さんを診る必要があったり、内科であっても時には腰痛の患者さんを診なければならなかったり、専門領域を超えたニーズに応えていかねばなりません。なかなか専門性を伸ばすような経験は積みにくい一方で、専門ではない領域の病気を診ることはストレスになります。結果として地域の病院は敬遠されがちで、医師の地域偏在に拍車をかけているのです。日本全体を見れば、地域の病院で専門領域に限らず幅広く診療する医師のニーズが多く、「病院総合医」こそが今最も求められているのかもしれません。

新たな専門医制度は「継続的な評価・調整が必要」

専門医を標榜する医師は、しっかりしたトレーニングのもとで経験、知識、技能を培ってきたことが担保されなければなりません。各学会、各フィールドによってその基準がまちまちであるというのはおかしな話で、専門領域に関わらず統一ルールを定めるという方向性は当然と思われます。

専門性を身に付けるには、どうしても症例が多いところで学ぶほうが効率的です。18領域の専門を目指す専攻医が症例の多い都市部の病院に集まるのは当然のことです。しかし日本のどこにも人口に比例して疾病はあるわけですから、患者の地理的分布に従って、各専門診療科のプログラムが配置されるよう調整することが望まれます。

診療科について今は、極端に言えば若い研修医の志向だけで選ばれており、競合によって適切な医師数に淘汰されていくといったことは望めそうにありません。産婦人科や救急などリスクがあって、体力的にもきつい領域は敬遠されがちで、診療科選択の自由が診療科の偏在を助長しているとも言えます。ですから将来的にはDPCデータなどを駆使し、うまく研修プログラムを調整して専門医の適正配置につながるような配慮が必要と思われます。新専門医制度では、このあたりへの配慮が足りていなかったこともあって実施が1年延期されましたが、実際に動き出してからも定期的に振り返りを行い、うまくいかないところを評価・調整しながら進めていくべきでしょう。単に医療関係者だけで議論、調整するのではなく、もっと議論をオープンにして、国民の意見も聞いていく必要があると思っています。

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