1. 「医師偏在対策」一歩前進か、厚労省が取りまとめ公表

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「医師偏在対策」一歩前進か、厚労省が取りまとめ公表

「医師の不足感」の本質は「医師偏在」

地域医療において、課題が認識されながらもなかなか解消策が見いだせない「医師不足」。地域で医療を必要とする患者さんはもちろん、その患者さんを支える病院、勤務する医師や医療従事者にとっても大きな課題といえます。

医師不足問題はもともと、2004年度から導入された新しい臨床研修制度に端を発したといわれます。それまでは出身大学の医局を中心に行われてきた研修ですが、この制度によって任意の研修先を選ぶことができるようになり、症例数が多く勤務条件のよい都市部の民間病院に多くの研修医が流れました。

その結果、地方の大学病院が働き手となる研修医を確保できず、周辺病院に派遣していた医師を引き揚げたことで、地域で働く医師数が不足したのです。つまり、医師の絶対数が足りないのではなく、医師が都市部などに偏在することによって地方の医師不足問題が加速したといえます。

さらに、病院勤務医の過酷な労働環境や診療科間の負担の違いにより、開業する医師の増加や、比較的拘束時間が短く診療負担が軽い傾向にある診療科への偏在も見受けられます。こうした医師偏在によって、本来必要とされる地域や診療科で医師が不足する事態が生じています。

地域の医師不足の誘因

  1. 研修医の都市部への集中
  2. 都市部での開業医の増加
  3. 診療科間の偏在

医師の偏在を解決するために

こうした医師の偏在を是正して医師の不足感を解消するため、厚労省は「医療従事者の需給に関する検討会 医師需給分科会」を設け、さまざまな議論を重ねてきました。

2015年12月に公表された取りまとめでは、全国的な医師数を増やしても、実効的な医師偏在対策が講じられなければ地域における医師不足の解消にはつながらないと指摘しています。

一部の委員は検討の中で、「今後も医師偏在が続く場合、その地域で医師が充足している診療科の新規開業を制限することも検討したい」と提案していました。しかし、こうした“強硬策”に対しては「開業の自由の原則をどのように考えるか」「駆け込み開業のリスクを懸念」「制限ではなくインセンティブで誘導すべきでは」といった慎重派の意見もあり、今後の検討課題として見送ることとなりました。

また、2017年4月からの開始に向けて準備が進められていたものの、都市部への研修医の集中によって地域偏在がさらに助長するのではないかとの懸念から1年延期された「新専門医制度」、2017年3月に決定された「働き方改革実行計画」を踏まえて議論が進められている医師の働き方改革についても、医師偏在への対策を含めて協議されています。

分科会で示されていた14の論点

【直接的な対策】

  • 医学部(地域枠の在り方)
  • 臨床研修(募集定員の配分等)
  • 専門医(都道府県の権限強化、定員枠の設定)
  • 医療計画による医師確保対策の強化
  • 医師・診療行為情報のデータベース化
  • 地域医療支援センターの機能強化
  • 都道府県から国等への対策の求め
  • 管理者の要件(へき地での診療経験者を地域医療支援病院などの管理者の要件に)
  • フリーランス医師への対応
  • 医療事業の承継税制

【間接的な対策】

  • 女性医師の支援
  • 技術革新に対応した医療提供
  • チーム医療
  • サービス受益者に係る対策(かかりつけ医について住民等への情報提供など)

厚労省が出した「医師偏在対策案」とは

2017年12月21日、厚生労働省が設置する「医療従事者の需給に関する検討会 医師需給分科会」は、以下のとおり「医師偏在対策」をまとめ公表しました。医師偏在の解消に向けた関係法律の改正案について、2018年通常国会へ提出する見通しです。

1.「医師確保計画」策定と医師偏在の「見える化」

地域における医師確保対策を強化するため、各都道府県が「医師確保計画」を策定し、都道府県内における医師の確保方針や目標、具体的な施策を固めます。
それに際し、医師の偏在状況を全国ベースで比較し、客観的なデータで可視化(見える化)する方針を盛り込みました。都道府県内の「医師少数区域(仮称)」「医師多数区域(仮称)」を設定し、各地域が効果的な医師確保対策を実施することができるようにするとともに、PDCAサイクルを通じて、都道府県が実施した医師偏在対策の効果を検証し、対策の改善が行われるような環境整備を図ります。

2.医師養成過程を通じた地域における医師確保

医師が少ない都道府県の知事が、管内の大学を含めた地域医療対策協議会の意見を聞いた上で、定着率の高い地元出身者の入学枠について設定・増員を要請できる制度の必要性を盛り込んでいます。

3.地域における無床診療所の偏在等への対応

新たに開業しようとしている医師が、地域ごとの外来医療機能の偏りを理解し、都市部への開業集中を自主的に解消することを目的に、情報を可視化するべきと提言しています。

4.医師が少ない地域での勤務を促すインセンティブ制度

医師が少ない地域で働く医師が勤務内容やキャリアアップ等に不安を抱かないよう支援したり、医師が少ない地域でサテライトのような医療機関の管理が認められるよう、医療機関等の兼任管理を可能とするなど、医師が少ない地域での勤務への環境整備を明記しています。

また、そうした地域で一定期間勤務した医師に対して認定制度でインセンティブをつけ、認定医師であることを広告できるようにする、認定医師であることを地域医療を支える一定の医療機関の管理者に求められる基準の一つとすべき、などの文言を盛り込みました。

「医師偏在対策に有効な客観的データ」を整備して「見える化」を図ること、医師偏在対策について都道府県の責任と権限を示したことが今回の取りまとめの柱となった。

これまでより前進したと評価される一方、インセンティブ制度の管理者要件への疑問視も根強く、へき地での勤務経験が管理者としての経営能力につながるのかといった指摘など、今後検討すべき内容も残ります。

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